母影(おもかげ)

著者 :
  • 新潮社
3.12
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103521426

作品紹介・あらすじ

行き場のない少女は、カーテン越しに世界に触れる。デビュー作『祐介』以来、4年半ぶり初の文芸誌掲載中篇。小学校でも友だちをつくれず、居場所のない少女は、母親の勤めるマッサージ店の片隅で息を潜めている。お客さんの「こわれたところを直している」お母さんは、日に日に苦しそうになっていく。カーテンの向こうの母親が見えない。少女は願う。「もうこれ以上お母さんの変がどこにも行かないように」。

感想・レビュー・書評

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  • 過剰なまでに詩的だ。
    というか、全編を1つの詩と捉えることもできなくもない。

    軽度の知的障害を持つ母と娘の愛の物語。
    母親はいかがわしい行為もあるマッサージ店に勤務している。

    小学生の娘の視点で描かれた世界は、厳しいがどことなく楽観的だ。世界を絶対的に信頼している。
    学校で友達ができなくても、母の愛がしっかりと世界を繋ぎとめている。

    尾崎世界観さんはクリープハイプというバンドのヴォーカルとギターをしているのだそう。
    クリープハイプ…あまりよく知らない。
    でも、聴いてみようかな、と思った。

    この小説、あまり大きな声で推せない気もするけど、けっこうよいよ。

    第164回芥川賞候補作品。
    ちなみに、第164回の受賞作品は「推し、燃ゆ」。

    • naonaonao16gさん
      残業中だったんですね…
      聴けてたらいいなぁ…
      残業中だったんですね…
      聴けてたらいいなぁ…
      2022/11/28
    • たけさん
      naonaoさん、おはようございます。

      昨夜の帰り道からクリープハイプ、Apple Musicで聴いてますよ。
      おすすめのとおり、「死ぬま...
      naonaoさん、おはようございます。

      昨夜の帰り道からクリープハイプ、Apple Musicで聴いてますよ。
      おすすめのとおり、「死ぬまで一生愛されて〜」を聴いてますが、「オレンジ」いいですね。
      曲調が明るいので、メンヘラ具合はじわじわとくる感じですかね。
      ところどころ気になるワードをぶっ込んでくるな、と。
      もう少し聴いてみますが、取り急ぎ…
      2022/11/29
    • naonaonao16gさん
      たけさん、おはようございます!

      おお!聴いてみましたか!!
      そうでしょうそうでしょう笑
      たぶん、「オレンジ」は他の曲に比べてメンヘラ具合は...
      たけさん、おはようございます!

      おお!聴いてみましたか!!
      そうでしょうそうでしょう笑
      たぶん、「オレンジ」は他の曲に比べてメンヘラ具合は控えめですが、きてますよね笑

      以前、「オレンジ」のエピソードで、この曲が売れなかったらバンドやめようみたいな話をメンバーとしてて、そしたら結構オレンジが売れて、と話していたのを覚えています。
      2022/11/29
  • タイトルのまま、母の影を題材にしていた。
    芥川賞となった『推し、燃ゆ』は生きづらさのある女子高生が主人公だったけど
    『母影』は、生きづらさのある母娘が主人公だった。

    小学生女子の主人公と一緒の気持ちになって、「あれは何だろう?」と追体験できる文体だった。
    「とうめいな飲み物を飲んでるのに顔が赤くなるなんて、理科のじっけんみたいでおもしろかった。」とか、完全に小学生の感性で描かれていた。すごいなあ。

    シングルの家庭の子どもにとっては、唯一頼れるのは母親しかいない。
    もしも「おかしな」仕事をしていても、母親こそがその子の世界なのである。

    読み手が大人であれば、「きっと”あれ”なんだろうな」と推測できるけれど、この作品はあくまで小学生女子の目線で描かれているから、ところどころで出てくる「あれ」の正体がつかめない。明確には描かれない。
    読み手は大人で、わかっているはずの「大人の世界」のことなのに「わからない」気持ちになる。こちらも同じようにカーテンで遮られている感じ。
    それを「書けないのに読める漢字みたいだ」と表現する感性。
    不思議な読書体験だった。


    先日、芥川賞候補になったときの情熱大陸を観た。
    かつて働いていた会社で、自分の書いたのが製本されてるってすっごいだろうな…!

    疎外感や憤りが原動力って表現者に多い気がする。
    確かに何かを表現するときってそれがきっかけかもしれない。

    クリープハイプの尾崎世界観さん。小説を初めて読んだけれど、独特な感性の方だなぁと。
    曲は有名どころしか知らないけれど、改めて歌詞をじっくり読んでみようと思った。

  • マッサージ店のベッドのカーテンに隠れ、そこで働くお母さんはもしかしたらお客さんとなにか変な、おかしなことをしているのではないかと、訝しむ小学生の娘。
    露骨な表現やセリフにはいくつか眉をひそめたが、結局それがどんなことであるかまだ知らない小さな女の子が、必死に世界を読み解こうとする姿はとてもいじらしい。
    あやしみつつもずっとお母さんを心配し、ひたむきにお母さんを愛する。どうかその瞳に汚らわしい世界が映ることのないように、と願ってやまない。
    話題になったのはもう二年前だが、今読んでおこうと手に取った一冊。曲も聴いてみる。

  • ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル&ギターの尾崎世界観さん初の純文学作品。第164回 芥川賞候補作です。

    女の子の語り口でとても静かに、するすると進んでいくのですが、終始胸が痛い。それは私が全部わかっている大人だから?彼女に同情したから?

    いや、それだけでなく...私も幼少期に同じような経験があるからこその胸の痛みかもしれません。

  • 母親と娘の関係。
    今は母親の仕事が理解できない年だから
    曖昧な関係で母親を理解して助けてあげたい
    そんな娘の気持ちが温く心に響いた。

    今後母親の仕事を理解して関係性が
    変化していくことは描かれていなかったが
    想像できて悲しくなった。

  • 芥川賞候補おめでとうございます。

    主人公の「私」目線でお話がすすむので物語への没入感が凄かったです。「私」の思ってることが読み手の自分の視点と全く違ってびっくりしたり、それとは別に視点が全く同じで自分も小さいころにこんなこと思ったなと逆にびっくりしたり。アクションものでもサスペンスものでもないのに、ページをめくるたびにドキドキがすごくて胸がしめつけられる気持ちでした。読み終えたあと、こころに温かいものが流れてきて尾崎さんの書いた小説を読んだこと、読めたことをあらためて感じて嬉しくなりました。

    普段の生活の中で当たり前すぎて気にとめないことを丁寧に表現されてて、気にとめてないはずのに読んだときはっきり情景が浮かぶのは、気にとまる言葉でそれらを表現されてるからだと思いました。うまく言えませんが…。こんな気持ちをくれた母影という作品を自分のなかで大切にしたいです。

  • 「なに様?」って言われそうだけど
    私の感想だから感じたままでいいか
    なんだか文体がわざとらしく感じて胸やけがした
    こんな風に書いちゃってる俺ってスゴイだろ
    って感じてしまう
    少女の気持ちを書くならやっぱり作家も女性がいいなと思った
    終始気持ち悪い
    性描写とか慣れてるけど
    子供目線ってのが気持ち悪さを際立たせるんだろうね

  • 第164回2020下半期芥川賞候補作。受賞作は宇佐見りんの「推し、燃ゆ」
    山田詠美の選評で「今回、取り扱い注意の少女ばっかり登場で辟易したのだが、この作品もそのひとつ。男の書き手がそういう少女を描くと、自らの求めるイメージを投影し過ぎる。自分の好みの傷付きように沿って、彼女らを傷付かせるのだ。むしろ、私は、少女のお母さんを主に書いてもらいたかった。」(一部抜粋)
    とあったが、私も『少女のお母さんを主に』した小説を読んでみたかったと思った。
    設定年齢は小学校低学年だろうか。低学年にしてはあまりに鋭い(大人のような)考え方じゃないか?と気になる部分もあった。
    小説全体に尾崎世界観独特の表現が見られ、「らしい」小説ではあった。

  • 少女目線で簡単な単語で綴られた文体のため早く読み進めることができました。その特徴的な文体は芥川賞の選評でもあったが、大人が書いた少女だというあざとさがたしかに終始透けて見えました。少女の目線に徹するのであれば大人のセリフもすべて少女が知っているであろう漢字だけを漢字で表記すべきだったのではないでしょうか。また、少女の語りが過剰に幼稚な表現である点もあくまで大人の想像の範囲を超えられていなかったように思えて仕方がなかったです。私には少女の影を踏む作者が浮かび上がりました。
    少女の知らない世界が自身の不遇さの原因となりそれを本人が理解しようと純粋な気持ちで触れる切なさが痛く感じられます。
    改札機のくだりは小さいことですが少女の成長が上手に表現されていました。

  • 声を、言葉を、精一杯自分の世界にとりこもうとする少女がいる。ときに母を試すように言葉を使ってみるけれど、少女にとっては試しているわけでもなく、悲痛な疑問でもない。小さな、ぼんやりとした世界で、やっぱり何かが欠けている事を知っていて、でも満ち足りていることも知っている。
    感情の高まりと共に、影に家族の姿を構築して話は終わる。ちょっと広がった少女の感情と感性がぼんやりとしながらも形になるのがちょっとした感動を呼んだ。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル、ギターを担当。作家としても活動し、これまでに小説『祐介』、日記エッセイ『苦汁100%』『苦汁200%』(いずれも文藝春秋)、『犬も食わない』千早茜との共著(新潮社)を上梓。

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