令和元年のテロリズム

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103538714

感想・レビュー・書評

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  • とても重たい本だった。
    ニュースでしか知らなかった事件の詳細を知ると色々と考えさせられる。
    文章はとても読みやすかったが、所々に写真もあり何の写真なのかの説明も欲しかった。

  • 「川崎殺傷事件」、「元農林水産相事務次官長男殺害事件」、「京都アニメーション放火殺傷事件」、改元から立て続けに起こったこれらのセンセーショナルな事件を、その当時の驚きとリアルタイムでの報道をあわせてよく覚えている。
    平成の間で放置されてきた社会問題が噴出する形となった、広義のテロリズムなんだといわれるとその通り納得しそうになる。
    それにしても今ってもう令和4年なんですね。これだけ前途多難で一体どんな時代になるんだか。。。

  • 特に印象に残った事件は元農林水産省事務次官長男殺害事件について。

    この本の帯に書かれている「悪意は伝染していく」という言葉が最も重なった事件だと思った。

    この事件は細かい事はわからなくて、当時ネットニュースでなんとなく見た程度。
    オンラインゲームのドラクエをずっとプレイしていた引きこもりの男が親に殺され、そのゲーム内の止まってしまったキャラにザオラルをかけ続ける遊びが行われてるというは見た記憶がある。

    社会的に人とのコミュニケーションを取る事が困難になった人達がこの本に書かれている事件を起こしている。
    正直、近所にそういう人がいたら絶対に関わらないように自分も過ごすだろう。

    事件を起こした人達の背景にあった事実が見えて来て、社会が彼らにしてあげられた事は何だったのだろうかとモヤモヤする。
    いや、彼らというよりは彼らの親達だろうか。
    何かこう、こうした事件というのは容疑者の幼少期まで遡るとそこに何かしらの要因を感じる事が多い。

    川崎殺傷事件の犯人、岩崎隆一に対して世間が投げつけた「1人で死ね」という言葉。
    熊澤英昭が息子英一郎を殺害した事でそれを実行した。

    果たしてそれは親の責任だったのか、どうするのが正しかったのかは最後まで分からなかった。

    令和に起きた凶悪な事件を元に、色々と考えさせられた本だった。

  • 『ルポ川崎』の著者でもある磯部涼が令和元年に起きた3つの殺人事件ーー川崎の無差別殺人事件、元農水省事務次官による実子殺人事件、京アニ放火事件を追ったルポルタージュ。

    かつて凶悪殺人事件の犯人はある種のダークヒーローとして扱われることがあった。少なくとも、何かしらの時代性や社会的意味を背負った存在として語られることが多かった。

    しかし、令和に入った今、人々が凶悪殺人犯に向ける言葉は「他人を巻き込むな、一人で死ね」である。そこには、事件や犯人に社会的意味や時代性を読み取ろうという発想は全く感じられない。むしろ正反対だ。今の人々は凶悪殺人犯をこの世界におけるバグ、自分の人生とは一切関わりのない異物として徹底的に排除しようとしている。

    こうした人々の意識の変化の背景にあるものは何か?磯部はそこに着目しながら、丁寧な取材で事件の痕跡を追う。そして、その緻密な取材を踏まえて凶悪殺人事件と社会性/時代性との接続を試みようとしている。

    そこには、ここ数十年の流行である自己責任論(無論それは人々の余裕のなさの裏返しでもある)とは対極にある、社会的包摂の重要性を改めて問う姿勢があるだろう。少なくとも人々は「異常な事件」としてこれらを視界の片隅に追いやるべきではない。我々が暮らす、我々が作り出した時代の歪みとして、きちんと受けとめるべきだという問いかけを読者に投げかけている。

    また『ルポ川崎』は、若者たちが音楽というカルチャーを使って出口の見えない川崎の貧困地区での生活から抜け出す成功物語という側面もあった。古典的なロックスター物語やヒップホップの成り上がり物語の再演がそこにはあった。

    しかし本書で取り上げられる殺人犯たちはカルチャーを愛しながらも(ゲーム、小説、音楽)、それに救われることなく、出口の見えない暗澹とした生活に深淵へと飲み込まれてしまう。

    結局のところ、ロックスターの成功物語をなぞれるのは一部の才能ある者たちだけだ。その他の大多数は夢に敗れ、その一部は本書の主人公たちのように闇の奥底へと落ちていく。

    音楽ライターでもある著者は、カルチャーの力を強く信じているはずだ。しかし、ここで書かれているのは必ずしもカルチャーは全ての人を救うわけではないという認識だ。その認識はとても重く、取材を重ねたからこそのリアリティがある。



  • 令和に起きた事件。だけど、根っこの部分は平成や昭和から地続きの問題であること。高齢化、引きこもり、格差社会、ネット上でのやりとり…。
    いつか問題になると、誰もがどこかで聞いてきたはずなのに、問題の当事者であるという意識は低い。だから、軽率に非難する。
    犯人を庇うわけではないけれど、介入する余地がなかったのかと考える。みんなが救われる世界線だってあったはずだと考える。

  • 社会の背景に目を向けることが大切だと思う。自己責任が覆っているこの世界では、分断ではなく助け合いも必要な社会である。

  • 真剣に事件を考えているようで、
    カッコ良く書いているけれど、
    結局なんの関係もない人たちに
    取材という体でズカズカ土足で踏み入って、
    浅い知識で
    憶測で持論を展開しているだけの話だと感じた。
    胸糞。

  • 5割方前にあったエリート官僚のニート息子殺しの話になってて、熱量もなんかそこだけ突出してるのでこの話だけで本出した方がよかったんちゃうんか?と思った。そうすると何がテロリズムやねんってなっちゃうやろうが、そもそもこの本タイトル付けに失敗してると思う。
    裁判の話見とると親子だニートだの眼鏡外したらモロアスペに対しtwitter経由でネチネチネチネチ掃除せえ掃除せえ言うとったら果てにアスペがブチギレて半殺しにされ、余りの屈辱に前後を忘れて殺したとしか取りようがない……。
    家庭内暴力の事始めには確実に母親に責任が有るように思えるし、いい学校行ける頭はあったんだから、居場所、落とし所さえあれば何とかなっただろうにと言う切ない思いを感じた……

  • 「この”令和“には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております」

    改元の際にこの説明をした安倍晋三が凶弾に倒れた。しかし、逮捕された男性は政治的思想による犯行ではないと供述しているらしい。

    テロリズムは普通政治的目的があるが、本書で紹介される犯行にも政治的目的はない。
    ただ、犯行があった背景に8050問題やアスペルガーなどの政治が放置してきた問題があることから、あえてテロリズムと呼んで可能な限り丁寧に、詳細に事実を追う。
    世間を騒がせた事件について、単に異常者、不良品だったと済ませるではなく、議論を尽くすことで社会的包摂に寄与するという東浩紀の主張が本書の補助線になっている。

    令和元年のテロリズムは中心がぼやけているのに対し、周りの反応は他罰性がはっきりしている。
    今回のテロは時代の何を反映してるんだろう。

  • ここで取り上げられる被害者も加害者も
    今の日本の精神面での病理をよく捉えている
    と感じた
    特にアスペルガー症候群や グレーゾーンの人たちや 気質を抱えた人たち

    今や誰もが皆 こうした精神的な弱者を自認している
    今や自分勝手な者も 怠け者やものぐさ者も 障害の一括りだ
    特に人口の少なくなる50代から10代の人達だ

    そして70代以上の日本の人口のボリュームゾーンである団塊の世代を中心とした老人は自分の衰えを認識できず上級国民か、一般国民か、それ以下なのかによって犯罪者になるか、ならないかも区分されている点を指摘されている

    老人達は人口が減る日本国民に堂々と養われている
    事故を引き起こし子供達が亡くなっても責任を感じる言葉も言えず遺族の気持ちを平然と逆撫でする老人の運転手もいる

    令和に元号が変わり4年目に入っている
    コロナ禍での社会変化も3年目だ

    この、コロナ禍が始まる前の年に発生した重大事件として
    川崎市登戸駅前でのカリタス学校児童の無差別殺人事件
    元農林省事務次官が引きこもりの長男を刺殺した殺人事件
    京都アニメーション放火大量殺人事件
    そして、まとめとして 池袋での元官僚の高齢者運転手による自動車事故
    つい最近、無罪判決が出たばかりだ
    著者の指摘による社会構造の繭に守られていたという指摘はまさに証明されたかのようだ

    これらの事件、事故は社会構造から発生するテロリズムと著者は表現した
    コロナ禍で人のふれあいを断絶された社会
    併せてTwitterなどのSNSの大量使用
    毎日 テレビで流れる戦争での死体をボカシただけの悲惨な映像
    ゲームの中でも 武器で攻撃しまくり 殺しまくるゲームでは殺しまくった方が正義だ
    コロナ禍により 人に揉まれて仕事を身に付ける新卒社員さえいない
    その人達が既に、会社の中では先輩になってしまった
    このような実生活の中で、社会が変わらないはずもない
    社会や人が狂ったと表現されたとしても、令和以前と比較すれば当たり前なのかもしれない

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著者プロフィール

ライター(Twitter→ @isoberyo)。著書『ルポ 川崎』 『令和元年のテロリズム』。『リバーベッド』が初の漫画原作となる。

「2023年 『リバーベッド(2)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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