遠い家族 母はなぜ無理心中を図ったのか

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103549918

作品紹介・あらすじ

なぜ母は義父を殺して死んだのか? 事件の当事者が背景を綴る慟哭の手記。18歳の春、母が義父を殺して自死した。あれから16年、ひとり取り残された僕は母の生涯を辿る旅に出た。日本に出稼ぎに行った韓国人の母を求めながら、韓国と台湾で暮らした幼少期。日本で母と義父と過ごした中高時代。そして、「あの日」までの経緯。母親に愛されたいと願った息子が心中事件の背景を綴るノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 被害者遺族でもあり、加害者遺族でもある。
    最近は家族内で起こる事件も多い印象だから、こういうことは、少なからずあるのだろう。
    さらに著者は、実の父と母の国籍も違い、幼少期に過ごした場所も、3か国・地域にわたる。
    親戚も、友だちも、ずっと近くで彼のことを見守り、支え続けてこられたわけではない。
    どんなに過酷な人生であろうか。
    幼少期、いじめられていたとはいえ、自分も弱い者に対してカツアゲをしたりしていたこと、母の生前と死後でけっこう変わる異国の親戚の態度など、全面的に共感できる話ばかりではないのだが、著者が現在、自分の体験を整理して前を向いていること対しては、エールを送りたい。

  • 最後まで読み終えて、著者のお母さんの印象がガラリと変わった。
    義父を殺し、飛び降り自殺を図った母。
    母はどうしてそんなことをしたのか。母をもっと知りたいという思い。テレビのドキュメンタリー番組出演をきっかけに母の生涯を辿る旅に出た著者。そこで、今まで知らなかった母の素顔を知ることになる…というストーリー。

    幼少期の思い出からその事件が起こるまで、あまりにも辛い境遇に読み進めるのが辛かった。が、韓国と台湾、そして日本という3カ国を跨ぐ家族の話に、どんどん引き込まれ、最後は私にもお母さんの気持ちが伝わってきたような気がした。

    文章が上手い。子どもが見たままの状況が、当時の自分の心境を交えて描かれている。外国の話なのに景色がはっきり目に浮かぶよう。
    台湾にいる父と祖父の家で暮らしていた頃の祖父とのエピソードなどは、微笑ましくもあり、学校に行かなくなる話などは両者の気持ちがわかって少し胸が痛くなった。

    事実は小説より奇なり。
    親の都合で3カ国での生活を余儀なくされ、苦労の人生を送った著者が、今は役者として立派に活躍されているのがせめてもの救い。
    お父さんと再会し和解したのも良かった。韓国のお母さんの親類らに歓待され、母の素顔を知れたのも大きい。愛する息子のために、言葉もわからない日本へ出稼ぎに行った母。
    お母さんを理解することは著者の幸せに不可欠だと。
    お母さんのセリフ「世の中捨てたものではない」。本当にそうかもしれないね。

  • 著者が大学に入学する直前、
    母が義父を殺し飛び降り自殺。
    物語はそこから始まり、
    著者の幼いころから現在まで辿っていく。

    フジテレビのザ・ノンフィクションで放送されたらしい。
    彼がさらに彼の言葉で綴りました。

    お母さんの無理心中があったからこそ、
    このような形で世間の注目を浴びたのでしょう。

    しかし私から見れば、お母さんのしたことは
    しばしばあるストーカー殺人の女版にすぎません。
    この小説はむしろ前田勝さんの自伝として、
    大変興味深いものでした。

    戦争からのがれる形で中国から韓国にきた祖父。
    一方的に母に惚れた父。
    台湾と韓国のハーフであるために、
    どちらに行っても外国人であるといじめられた幼少期。
    母方の親族、祖父、父のもとへたらいまわし。
    そして日本に出稼ぎに行った母のところで、
    母が一生でただ一人恋した義父とともに暮らす。

    私自身この前に特殊詐欺の本を読んだので、
    このような環境で(多少やんちゃであっても)
    大きく道を踏み外すことが無かった
    この違いはなんなのだろう?と考えてしまいました。

    遠い家族は…。
    近いより遠い方が悪いところが見えなくて上手くいく
    さまざまな登場人物を見て、そう思いました。
    また、離れて時間をかけて初めてわかることもあると
    気づかされました。

  • 止まらずに一気に読んでしまいました。

    心には止まっていて、思い出してはこねくり回して考えてしまいます。
    自分にとっては、次の本を選ぶのに時間がかかってしまう読書でした。

  • あまりの凄まじいストーリーに一日で一気に読了。素直な作者に共感。外国人と言うだけで台湾、韓国でいじめに遭った後、日本で差別の少ない高校生活の記述に救われた。が、外国籍だとアパートを簡単には借りれないと言う現実がある事を思い知らさせた。淡々とした文章で
    ありのままを書いている正直な胸のうちを告白しているのだがこういう心境になるまでの過程を
    思うと泣けてくる。自分の息子と変わらない主人公の今後の人生にエールを送りたい!

  • 生い立ちは自分ではどうにもならない。
    良い出会いがその人を作っていく

  • 淡々と時系列で小さい頃からのエピソードが語られる前半、母と父に振り回され、母とも父とも分かりあえないもどかしい気持ち、とにかく重い。そして帯にもなっている18歳の春、母が義父を殺して自死、著者に一通の手紙を残して。

    それで、著者の人生が好転する訳もなく、社会に出ても苦労が続く。事件から10年ほど経ち、母が自身を産んでくれたことへの感謝、事件のことを周りに公表して、もっと心から関わりたいという気持ちから、母のことを題材にした舞台をプロデュース。

    さらに、それから数年、テレビ番組からドキュメンタリーの取材を受ける。韓国に母の親族と知人を訪ね、何年も疎遠になっていた実父を台湾に訪ねる。そして、母が著者のことを大切に、第一にしてくれていたことを知る。

    年月を経て歳を重ねたことで、母と父のことを理解できるようになった、ということかもしれないが、理解しようという姿勢、素直な気持ち、感謝の気持ち、があってこそ。

  • 東2法経図・6F開架:775A/Ma26t//K

  • 2023/04/24予約 18
    母親が著者の義父を殺し、母親も飛び降り自殺をする。
    その時、著者は高校を卒業したての18歳。
    韓国人の母、台湾人の父のもとに産まれ、親の都合で国や住む相手を転々とする。その後、母親に呼び寄せられ日本で暮らし、母親は日本人と結婚する。
    著者は加害者遺族であり、被害者遺族でもある。
    なのに被害者遺族の面は出せず、謝り続ける加害者遺族としか見られない。
    残された子どもが、こういう運命をたどるとわかっていたら母親もこんなことはしなかったのかもしれない。
    その事実を公表した著者は勇気のある人だ。

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