本を読む女

著者 :
  • 新潮社
3.13
  • (0)
  • (2)
  • (13)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 32
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103631026

作品紹介・あらすじ

人はどうして少女のままで生きていけないのだろう-読書が好きな一人の平凡な少女、万亀。幸福な青春時代を経て成人した万亀が直面する現実の辛さとささやかな喜びに、時代の流れが影を落としていく。庶民の誰もが時代に翻弄された昭和の前半、著者が自らの母をモデルに、懸命に生きようとした一人の女の半生を、愛情込めて綴った力作長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「人はどうして少女のままで生きていけないのだろう。
    人はどうして大人になり、つらい苦役を背負わされるのだろう。」

    子供の頃から本が好きだった万亀は、静かな倉の二階で『赤い鳥』を読む時間を大切にしていた。
    猿まわしのことを書いた綴方が『赤い鳥』に載った時の喜びと誇らしさ、小説家になるの?という言葉に弾んだ気持ちが伝わってくる。
    万亀が本を読む場面がとても好きだ。
    彼女の心を満たす幸福感が私にも伝染するかのよう。

    でも、万亀の身辺はめまぐるしく変わっていき、万亀のささやかな幸せすら奪っていく。
    とても辛くて辛くて、何よりも幼い我が子を抱えたことで本を忘れてしまったかのように生きる万亀が悲しかった。
    もちろん我が子の命の重さと比較出来るわけもないけれど、その苦しみの時に傍らに本があれば、彼女はあんなにも苦しまずに済んだのではないかと思ってしまう。

    最後、もう一度本を手に取る姿にとても感動した。
    少女のまま生きられることが幸せであるのかは分からない。
    大人になることでしか出来ないこともたくさんあると思う。

    ただ、母の老いを感じること、夫への愛を疑うこと、我が子と自分を生かすために他の人より多くの食べ物を得ようとすること。
    そのどれもが少女の時には意識することのない苦しみで、今から私が直面するかもしれない未来だ。

    この本を薦めてくれた先輩が言っていた「私もこうなるのかと思いながら読んだ」という言葉の意味が分かった。

  • 装幀/斎藤和雄

  • 人の人生ってこんなよね。

  • 本が読める、それが幸せだと気づく。作者の母がモデル(らしい)。ここからイケメン好きが始まったのか(笑)

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

林真理子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有川 浩
川上 弘美
林 真理子
三浦 しをん
湊 かなえ
冲方 丁
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×