- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103671046
感想・レビュー・書評
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全然知らない人の小説を読むならともかく、全然知らない人の自伝?を読むというのもなかなかにエキサイティング。何故にこの本を読もうと思ったかは今となっては謎だけども、ともかくも読んでみるわけで。
1968年のエリートの話なのである。高校の名前とか、既に天上人レベルなんで、おうおう、いきなりすげーですよ。そんな人たちが文学やら芸術やら、時には学校にバリケードを築いて頑張ってみたりしながら、というかそんな事ばっかしてないか、ってレベルなのに怒涛のように東大に入っていくという。会社でも東大の人はやっぱ一味違うわって感じる事は多いんだけど、本物だからこそ東大に行くんだな、やっぱり。
しかしこの本を読んで、才能にも金銭的にもそれなりに恵まれていたんだぜ、っていう世の中の格差を目の当たりにし、で、どうしようかって言われると、うん、どうしようかね。とりあえず表紙の絵は好きよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
098.初、並、カバスレ、帯付き。
H.21.7/9.伊勢BF -
先に『先生と私』で大学時代を振り返った四方田犬彦はその前に、書くことによって高校時代からの解放をめざす作品を書いていた。それが本書である。それは彼自身の青春への回顧であると同時に、若くして死んだ二人の友人への鎮魂の書でもあった。そのうちの一人に対し四方田はこういう「ぼくが書かなければ、十九歳だった彼女の人生の輝きのことは、地上で誰も記憶している人がいなくなってしまうわけだろ」と。それにしても、ここで描かれている四方田の高校時代のなんと早熟なことか。かれが読んだ本、みた映画のリストをみているだけで目眩がしそうになるほどだ。かれが高校に入ったのはぼくが大学に入った1968年である。ほとんど同時代に生きながら、かれが読んだほとんどの本に興味がいかなかったのはなぜか考えさせられてしまう。しかも、そうした読書経験を四方田は高校時代にすでにすませてしまっているのである。驚くべきことである。東京ではこうしたことが高校生の世界でも当然のこととされていたのだろうか。