- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103710172
作品紹介・あらすじ
新任地川崎で、彼女の頬を濡らすのは涙の雫か、全てを洗い流す慈雨の雫か。モラハラ夫、我が子を見捨てる母親、身寄りのない記憶喪失の男……横浜家裁川崎中央支部にやってくる家事事件の当事者たちは多種多彩。社会から零れ落ちそうな人たちの心を開き、それぞれの人生に寄り添うため、赴任したばかりのかのんはひたむきに奔走する! 人間、そして家族の表と裏を心揺さぶる筆致で描く連作短篇集。
感想・レビュー・書評
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家裁調査官・庵原かのん シリーズ。
今作は、北九州から川崎に移り横浜市家庭裁判所川崎中央支部での連作短篇集。
一筋縄ではいかない癖のあるモンスターばかりを相手にすることになる。
だが真摯に向き合う姿勢は変わらず、かのんならなんとかするだろうと…。
彼女はひたすら当事者たちの話を公平な目で見て問題点を探す。
どこまでも諦めずに解決の道を探る。
しかしながらなかなか大変な職業である。
「はなむけ」が内縁関係の夫と縁をきり、前夫からの家を売り遺産としてお金を少年院にいる2人の子どもに渡すという話が強烈だった。
複雑な家族関係と内縁の夫の事故で上手くいかなくなった生活。
子どもたちは、それぞれに問題をおこしてしまう。
一見、すべてが投げやりで勝手にしろという感じかなと思っていたが、自分の命が短いことを知り、やるべきことは子どもたちにお金を残すこと。
これは、しっかりと話を聞かないとわからないこと。
それを引き出したかのんはやはり凄い。
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横浜家庭裁判所川崎中央支部に異動し、栗林とも入籍した庵原かのんを描く、シリーズ第2作。
裁判所にまでもつれこむのだから、もめにもめて、泥沼化している案件ばかり。
嘘はつかれる、プライベートな内容ど真ん中に踏み込まなければならないと、どれもヘビー。
そんな中、誠実さや、秘められた想いが明かされると、ぐっとくる。
「キツネ」「はなむけ」は、じーんときた。
「幽霊」は、珍しく心あたたまるというか、純粋に読後感のいい話。
ひとつひとつの案件が着地点を見せる一方、止まらないコロナ禍と、「こじらせてしまった人」こと田井岳彦の問題が、物語を通してずっとざわつかせ続ける。
重たいけれど、読み応えのある連作短編集。 -
子供が出てくる話があって
現実もこのような事があるのかと思うと
切なくなってしまった
大変な仕事なんだと読んでいて思いました -
※
幽霊
待ちわびて
スケッチブック
引き金
再会
キツネ
はなむけ
全7話
色々な夫婦関係、さまざまな親子関係、
多種多様な家族の中で生じる家庭内の悩みや
争いごとを調整し、解決に向けて手を尽くす
家裁調査官たちの物語。
1話毎にタイトルの『涙の雫』が伝わってきて、
頬に鳥肌が立って胸が詰まりました。
生きた人と人が関係して起こる争いなので、
各人の主張が真っ向から対立していて、
相容れないものや理不尽に感じるものには
腹が立ち憤りを感じて怒りの感情が湧きます。
通じない言葉にはもどかしさが募り、
諦めや悲しみの感情にも深く共感してしまって
脳の疲労を緩和させたくなりました。
嘘をつく人、人を欺く人、人を利用する人、
自身のことしか考えない人、人を傷つける
ことに躊躇も罪悪感も抱かない人、自分以外の
人の感情に思いが及ばない人、さまざまな人が
いるけれど、主人公の様に相手の話に耳を傾け、
深く話を聴けたなら、たくさんのすれ違いや
気持ちのわだかまりが決定的な溝や争いになる
前に解せるんじゃないかそんな風に感じました。
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『家裁調査官・庵原かのん』シリーズ第2弾。
前作でのかのんの勤務地は福岡家裁・北九州支部。
そこでは少年事件を担当していた。
シリーズ第2弾では家事事件を担当することに。
本の帯には
魑魅魍魎渦巻く人間ドラマ
嘘と誤魔化しの連鎖、調停室に響く怒号、やがてこぼれ出る「家庭の秘密」
と書かれているが
なんともはや…、ドロッドロやん!
だけど…、かのんはただひたすら『聴く』姿勢を崩すことなく
ドロドロの人間関係の中から
一筋の光をみつけ、よりよき道を切り開く努力を惜しまない。
それはもう〈忍〉の連続。
シリーズ第1弾よりさらに濃い内容に
うるっときたり、それはしんどいわぁ~と思ったり。
第3弾が楽しみだ。
以前、他の本のレビューにも書いたことがあるが
最近、発行された本には「コロナ」のことが描かれていたり
どこかに「コロナ」の気配が感じられる。
ずーっと後になって、その本を読んだらどんな感じだろう、と。
この『雫の街』では
「コロナ」のことがしっかり、はっきり描かれている。
物語の舞台である家庭裁判所は
どんな状況であろうと、その扉を閉ざすことはできない。
それが感染症だったとしても
様々な対処、工夫をしてその扉を開け続けてくれたんだ…
私たちの生活に、いや人生に、閉ざされてはいけない場所があった。
そして、”そこ”には”そこ”で待っていてくれる人がいる。
そんな当たり前のことを今更ながら思い起こさずにはいられない。
そんな本だった。 -
何年かぶりに乃南アサ作品を読みました。私の中で印象に残っている本は、「凍える牙」「しゃぼん玉」「いつか陽のあたる場所で」かな。シリアス系もほんわか系もどちらも面白いですね。
相撲好きが有名です(もちろん観戦が)が蔵前国技館にも足を運んでいたようです。
「雫の街」は女性家庭調査官の庵原かのんから見た人間模様の短編集です。記憶喪失、離婚、親権、不倫、相続他、様々な問題と向き合いながら、人間の悪いところと良いところのバランスをとっていく仕事なのかな。私だとちょっとメンタルをやられてしまいそうな大変な仕事ですね。
今も平和的解決のために実際に調査官として働いている方々に心からエールを送ります! -
北九州から川崎に移ったかのん
新しい勤務先は横浜家庭裁判所川崎中央支部
栗林(クリリン)と入籍し、公私とも充実
家裁調査官は少年事件と家事事件の両方を扱う
前巻は、少年事件を扱った話だったが、今回は全て家事事件
少年事件はひたすら少年の更生に向かって動くが
離婚調停や遺産相続などを扱う家事事件は、どんな場合も対立構造が前提、何とも気の重い仕事だろうか
読んでいるこちらまで胃が痛くなりそうだ
そして、少年事件と家事事件は合わせ鏡のよう
家事事件で争う両者の間には必ずと言っていいほど、狭間に立つ子供がいる
その子供が少年事件を起こすことも珍しいことではないようだ
また、「キツネ」や「はなむけ」の話からは、血のつながりはないけれど固く結ばれた親子の絆が感じられ胸を打たれた
何はともあれ、庵原かのんさんの上司からも一目置かれる優秀な仕事ぶりに脱帽
あまりにも重すぎる内容の中で、かのんの仕事を理解してくれるクリリンの存在
二人で、美味しい手料理とお酒でストレス発散している姿がこの本の良いアクセントになっている
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庵野かのんシリーズ第二弾です。栗林君と結婚して川崎に引っ越してきました。
劇的な話はなく結構淡々とした連作短編集ですが、こういうのはあまり現実感無くドラマチックにすると途端に痛々しい感じになるので、これくらい淡々としていていいと思います。 -
結局何もない。結果が出ないし。もめてる案件を述べているだけみたいな感じがするだけ。
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前作が少年事件のお話だったのに、かのんさんが川崎に転任になって家事事件を担当することになったので、今回は夫婦や親子のお話です。
個人的には前作に続いて少年事件の話を読みたかったのですが、これは単なる私のわがままです。
物語の設定が2020年から2021年にかけての話なので、新型コロナのことも物語に影響しています。
個人的には、「幽霊」と「はなむけ」が良かったです。