- Amazon.co.jp ・本 (722ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103750123
感想・レビュー・書評
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体験したものにしか、「そこ」を見たものにしかわからないことというのが確かにこの世にはあると思います。年齢に関わらず。
「そこ」は底であり、その場所という意味でもあります。
「そこ」の体験があまりにも激烈だった時、人は生きる道を狭められてしまうものなのかもしれません。
ある意味でぐれたり逃げたりするのも状況によっては正しいのかもしれない。それができるだけまだいいということもあるかもしれない。生き続けるという意味においては。
どんなに明晰であろうと冷静であろうと3巻目読んだら、中学生はやはり中学生なのだな、と思ったものです。宮部さんすごい。
どの子もみんな抱きしめたくなりましたよ。真実に立ち向かった子も、気の弱かった子も、いろんなことから逃げたり人に暴力をふるったり卑怯だったりした子も死んでしまった子もみんなとても傷ついたから。
大人になれば通り過ぎることができることでも、子供の時には今そこで体験していることが全てですね。大人になるとそういうこと忘れがちです。
中二病という言葉で片付けないで、子供が真剣に人生の問いに苦しんでいる時には、答えがたとえ出せなくても、せめてきちんと向かい合える大人でありたいものだと読了して思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これは、私のカテゴリ分けだと十五少年漂流記等と同じ一夏の冒険ものだ(十五少年漂流記は2年だけど)。大好きなジャンル。
事件に関わった人、関わらざるを得なかった人大なり小なり胸に抱えて生きざるを得ない。 -
勢いついて読み切った!
これだけ長くて複雑な話の結末をどう持ってくのかとこちらも緊張しましたが、なんか結構泣けたなー。
最後までおもしろかった。複数視点でしっかり描かれてるからこその決着なのでしょう。
こんな中学生いないよね、って子たちでも、ああやっぱり中学生なんだなって感じられるところが良かった。
あの頃の不安定で自己中心的で自己完結的な青臭い感性と、大人や学校や社会の体制に反発して立ち向かっていく姿はいいなあって、いい年の大人には素直に思えます。
柏木卓也は「死人に口なし」だし、彼の家族も結局救われない感じはあるが、それだけ自殺は罪深いということだと思う。
死ねば終わり、なんてことはない。
死んでもだれも救われない。生きてるからこそ。
だいぶ違うけど、なんか「僕らの七日間戦争」ぽい。
それにしても、とてもいい話だと思う。名作。 -
図書館より。
ラストはとにかく一気読み!手に汗握りながら読了。
まさかの!そして伝説になったのか。
ラストの友達になりました、の言葉に心を打たれた。
裁判は終わったけど、彼ら彼女らの時間は進んでいたんだな。
スゴいよ。面白かった。 -
第一部を手に取った時に、予備知識として中学生が校内での事件について疑似裁判をやる話、と知っていた。
ふぅむ、いじめ問題か というのが真っ先に思い浮かび、次に、裁判っていささか強引じゃないか? と危惧。
なぜ、裁判という手法を取ったのか。
それは、証人喚問という形で 登場人物に真っ正面から向き合い、心のうちを全部聞き届けるため。
よく、子供と向き合うとカンタンに言うけれども、信頼を得て子供の恐怖や打算をとりのぞき、心のうちを曝け出させるのがどれほど難しいことか。
親でも難しいのに、学校という場にそれを押し付けることがどれほど安易であることか。
「思春期の子にとって大事なのは親でも先生でもない。友達だ。大人の言うことには耳を貸さない子も、友達の言葉は真剣に聴く。」と、これは個人的に繰り返し受け取ったアドバイスだけれども、宮部さんは、校内裁判というかたちで、登場人物の心中を聞き届けたのでしょう。
宮部さんは、それぞれに瑕のある完璧ではない大人たちにも温かい。
が、思わぬ敗者とマスコミにはかなり厳しい視線を向けている。
ちゃんと向き合え、相手を蔑み自己満足に陥るな、と。
読後は、ひと夏で見違えるほど成長する中学生を見守った気分。
初出は小説新潮 2007年6月号から2011年11月号連載 -
なんとなく自分でも結論を予想していたけれど、本当の結末はもう少し深いものだった。
色々なところで言われることだけど、普段人は他人の一面しか見えていないんだなと改めて思う。
人の本性や考えなんて、噂やイメージのベールで簡単に覆われてしまう。
だから他人がどう生きているかなんて、基本的に深く考えることなんて滅多にないけれど、ソロモンの偽証では中学生たちがそれを解き明かしていく。
柏木くんは何故死んだのか、誰が殺したのか。その真実をつかみ、自分たちも傷から立ち直るために。
真実に近づいていくのは分かっていても、確証がない。見えそうで見えない。
段々左手で持つページが減っていき、終わりを感じ始めると、このまま終わってしまうのか、みんなはどうすんだ、と一心不乱に読んだ。
読み終わって少したつけど、まだ気持ちがふわふわしている気がする。
物語は終わってしまったけど、その後の登場人物たちの心情をあれこれ考えることもでき、読後感もよい。
改めて凄いものを読んだなあ。
宮部さんありがとうございます! -
14歳の少年の謎の死から大きく広がり、そして、少年たちの手で一つの結論に辿り着くまでを、学内裁判という形をとりながら、描ききる。
『ソロモンの偽証』というタイトルから、全てを知っている者が嘘をついている、学校という一つの体制が嘘をついている、等と考えられるが、誰かを傷つけても気づかない少年、嘘を信じ込もうとした少女、一人になりたいと願った少年、自分の嘘を誰かに知ってもらいたかった少年。自分自身を死なせてしまいたかった少年、無関心を決め込もうとしていた少女――そんな中での学校内裁判によって、一つの真実から、複雑に絡みあった互いの心をほぐしてゆく。それは、読者の中にもある、そうした少年少女の気持ちを解放していく物語のようにも感じられる。
そして、ラストの「僕らは――友人になりました」という一文がここまで読んできた緊張をほぐしてくれる。 -
三部通して星5である。
とにかく、分厚いことを感じさせず、ノンストップで読みきれる。久しぶりに宮部みゆきにのめりこんだ。
学校を舞台にした新手のファンタジーではないか、と思えるほど、現実的ではないが、登場人物の圧倒的な存在感と、心の機微にはっとさせられ通しである。
誰もが真っ白でも真っ黒でもなく、善意と悪意のバランスの中で生きていることを、中学生たちが教えてくれる。だれもが、大出にも三宅樹理にも柏木にもなりうることを、教えてくれているのだ。