リア家の人々

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104061129

作品紹介・あらすじ

もの言わぬ父と、母を喪った娘たちの遙かな道のり-。公職追放と復職。妻の死と夫の不実。姉娘の結婚と父への愛憎。燃え盛る学生運動と末娘の恋-。ある文部官僚一家の相克を、時代の変転とともに描きだし失われた昭和の家族をよみがえらせる橋本治の「戦後小説」。

感想・レビュー・書評

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  • <a href="http://blog.goo.ne.jp/rainygreen/e/60303f4782b7ce0f4d7c36f82ef9865d">「巡礼」</a>に続いて、橋本治が、戦後の日本社会が変わりゆくさまを一つの家族の歴史を通じて紡ぎ出した小説。

    傑作です。
    まるで小津安二郎の映画を観ているかのような味わい深さ。
    法事の場面で、長女の一言を契機に場の雰囲気が一変、各々の本音と建前が入り混じった壮絶な会話の応酬が繰り広げられる件りなど絶品。
    世の変化をまったく理解できないながらも、その流れに静かに身を委ねていく一家の主・文三は、自分の頭の中では完全に佐分利信の姿で映像化されていました(笠智衆ではない)。
    三女・静は、さしあたり司葉子か。

    文部官僚であった文三の公職追放から学生運動まで、という切り口で戦後社会史を紐解く視点は、自分のような世代には新鮮であり、また説得力を感じました。
    テレビや自動車といった製品が、一般家庭にどのタイミングでどのように入り込んでいったのか、生活史という視点でも興味深い。

  • 何だかずっと昔から読んでいて、読み続けているような、ずっと知っていたような、懐かしい作品。とても、面白かったです。

  • 橋本治はずっとorthodox(正統)的な書き方で、小説を書き続けてきた。しかも、常に周りにいそうなごく「普通」な人にスポットライトを当たっている。そのところは、「普通の僕」を描く村上春樹とはいい対照になる。(村上の場合は自己基準の「普通」だが)しかも、橋本のほうは小説に歴史の重しを置く。どっちがいいというわけではないが、小説というジャンルの広がりをみせてくれたとでもいうか。
    特に「リア家の人々」は戦後から東京オリンピックまでの日本を描いたことは、1970年代を出発点とする村上とは時間軸的にはつながられる。ところどころに真実を含んだセンテンスに触れると、思わずどっきとする。まさに「妙語連珠」。

  • annex ~小説のススメ~ 爆笑問題 太田光:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2010/12/post115115.html

  • 前に読んだ「巡礼」がなかなかよかったので読んでみた。切り取られた時代設定がとても興味深い(終戦から東京オリンピックのあとくらいまで)。なんとなく知っていることや聞いたことがある程度の史実を織り交ぜて描いたひとつの家族の物語。でも温かくもないし感動もなく、わかりあわない、わからないまま終る物語。この人の描く不器用で古い男性の思考が、そういうことか、こういう人はこういう頭になっているのか、とわかるところが面白い。いつか再読したらまた違う味わいがあるかもしれない。

  • 戦後の昭和を舞台にした父と娘3人の家族の物語。

    分別と技術を持つ大人の作家が書いたと感じられる、無意味さや思わせぶりのないきちんとした小説で、最後までスイスイと読めた。

    私自身は末娘の子どもにあたる世代なので、各娘たちには全く共感できず。昔の女の人は大変だね、という感じ。これは戦後の昭和を舞台にしたほとんどの小説に感じること。父の在り方には非常に感じるものがあった。

    学生運動や体制・反体制といった時代の空気は正直、いまひとつわからないし、その時代を生きた人が思っているほど重要なことだろうかと感じてしまう。ひとつ納得できるのは、末娘の彼氏の石原のバカさ加減。しかし、そのバカさに見切りをつけた末娘のその後の行動は理解できす、何しろ昔の女性は生きにくかったのだなと思うばかりだ。

  • 『リア王』を下敷きに、戦後の日本の歴史を検証しながら、父権を中心としたひとつの家族が変貌していくさまを、登場人物の感情を克明に解釈しながら描く物語。
    橋本氏の小説は初めて読んだが、本当に「お勉強しました」という感想…。読むのにすごく時間もかかったし、やや疲れた。
    だからというわけではないが、「上手」とは思うけれども「好き」にはなれないな。個人的な好みの範疇で言えば。
    それはたぶんこの小説に「省略」がないことが原因だと思う。
    優れた小説には「省略」があり、そこから何を読み取るかで、読み手の能力を試される。あるいは「行間」と言うべきか。
    それがないのだ。たぶん橋本氏は意識的にそう書いているのだろうと思われるが、とにかくすべてを提示してくる。
    そういう小説にはあまり魅力を感じなかった。それだけである。

  • The橋本治....ってカンジの良作♪
    昭和の歴史を織り交ぜながら淡々と流れる家族の物語。
    その時代をリアルに知らない(終盤の方は子供心に少し知ってるw)ので、作者の本当に表現したかったことは理解できなかったのだと思うが、(私の時代には)教科書に乗ってなかった日本の現代史、少し勉強してみたくなった。

  • 【新歓企画】ブックリスト:「大学1年生のときに読んでおきたい本たち」
    「文学というものは、自分で選んで作っていくものですね。自分で自分にふさわしい文学を作って、そのことをもとにして自分の人生っていうものを作っていかなくちゃいけない。本というのは、そういうもんなんですね。/それを読んで、「これはすごい!」と思えたら、もうその作品は自分にとっての「すごい文学」になりつつある。なりつつあって、でもそう簡単になれたりはしないというのは、やっぱり文学が評論家なんていうメンドクサイものが存在するややこしい世界だからですね。/自分は「これがいい」と思う。だからって、それがそのまんますぐれてるかどうかは分からない。人は「つまんない」と言うかもしれない。だから、そういうことが知りたくなって、友達に「こういうのがおもしろかった」と言いたくなるし、「読んでみなよ」と言いたくもなるんです。“批評”というのは、そういうところから生まれる。/本というのは、結局センスなんです。だから本の選び方というのが重要になる。まずその話をしましょう。/本というのは、自分で読まなくちゃいけない。一生懸命読みとおすというメンドクサイことをしなくちゃいけない。だもんだから、本を手に取る時にはみんな悩む。「読むなんてメンドクサイことをして、でもそれが結局はつまんなかったなんてことになったらどうしよう、時間のむだだしな」とか。それで本を選ぶ前にはアレコレと悩むわけですが、これはしょうがないですね。一度は失敗をしてみなきゃいけない。/自分の読んだ本がつまんなかったら、「自分が本を選ぶ直感はこの程度のものでしかないんだ」ということが分かるんだから、そういうレッスンを積まなければならない。CD買ったり服買ったりする時には直感を働かして、そのセレクションが失敗したら自分のせいにする。似合わない服を選んだのは自分のせいで、それをデザイナーのせいにはしないでしょうが。/センスというのは、服買う時にだけいるもんじゃない。本を選ぶのはセンスで、これはもう本を何冊も読んで磨いていくしかない。だから「失敗しなさい」と言うんですね。何度も失敗していけば、その結果、「一体自分はどういう本を読みたいんだろう?」という疑問だって浮かんでくる。「自分の読みたい本」という必然性は、そこからしか浮かびあがってこないもんです。」(橋本治)【U.K.】

  • リア王のあらすじを見ましたが、三人娘ということ以外特にかかわりはないのですかね。続編が出るのですかね。
    それで終わりかよ!という終わり方でびっくりしました。

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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