- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104147038
作品紹介・あらすじ
天鏡峠に連なる山襞の合間に建つ合掌造りの一軒家。かつては蚕を育て暮す大家族がいたこの家に、今では母と息子がひっそりと暮らしている。道に迷った旅人たちは、一夜の宿と引き換えに里の話をとせがむ母に促され、それぞれの人生を語り始める-。彼岸に日金山に登れば死人に会えるという老女、子供のころ村に来た毒消し売りの女との淡い思い出を回想する男、願掛けで蛭を食った北前船主の哀しい人生を語る仏壇売り…。因習にとらわれながらも力強く生きる男と女の性を浮かび上がらせる。
感想・レビュー・書評
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まだ夜這いの風習がある時代で、
山里離れて集団生活を送る人達。
物への所有という概念がなく、
男が女を所有することなく、女が男を所有することなく、
親が子供を所有する事もない、
すべてが平等な世界ってのは理想の世界なのか。
無理だろう。
隔絶された自分たちの生活に疑いを持つ人間が現れたら終わるんだろうな。
大家族の崩壊後の最後の親子の生活と、崩壊への道筋、読み応えあった。
それはそうと、この本のジャケット、安っぽいオカルト本みたいだ。僕はオカルトだと思って買ったんだけど、内容はオカルトじゃないよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
飛騨白川郷合掌造りの村、20~40人の家々から櫛の歯が欠けるように村を捨てて町に。今は母親のちせと息子である少年栄吉の2人だけ。旅人が一夜の宿に訪れ、その旅人の話によってかつての村での習わしや暮らしが徐々に明らかになっていく構成です。侍の妻、毒消し売り、盆嬶(ぼんかか)、無限寺、天鏡峠、餅のなる樹の6話。侍の妻と盆嬶はインパクトがありました。無限寺はノーサンキュウですw。6話とも男女の交わりが重要なポイントをしめており、坂東ワールドを醸し出しています。「善魂宿」、2002.3発行。
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面白かったです。この小説は飛騨白川郷の合掌造りの村を舞台とした、著者の想像で書かれた小説とのこと。今は親子だけで住んでいる山奥の大きな家に旅人がやってきて、ポツポツと話す昔語りがそれぞれ短編になっています。自決した身分の低い武士をいつまでも忘れられず孫娘の髪の毛に思いを残す「侍の妻」や、15歳になった娘が神様の決めた相手とお盆の3日間だけ夫婦になる「盆嬶」はきらきらした若さを感じ印象に残りました。
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山奥にひっそりと暮らす母子の元に迷い込んだ旅人の話にからめて、白川郷の独特の家族制度から発想した大家族の変遷が明らかになる。
旅人ごとに読み切りスタイルなので読みやすい。
囲炉裏端で自分も昔話に聴いている気分になる。 -
六話連作で、山奥に住む元大家族だった合掌造りの一軒家迷い込んだ人達が母子に里での珍しい話をする。第一話「侍の妻」は土佐藩士による泉州堺事件、第二話「毒消し売り」はコレラ流行のパニック、第三話から土俗的要素が強まり、第五、第六で母子の家の事情が解き明かされる。
夫婦や子供との繋がりも家でまとめ制度化してしまう。隠れ里の発想で村を家に集約させても無理がある。だから、崩壊するのかな〜
坂東さんは短編向きかと思いましたが、この作品はピンとこない。中篇向きに訂正(笑)