ちよぼ: 加賀百万石を照らす月

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104235179

作品紹介・あらすじ

前田家の礎は利家とまつ、そしてこの側室によって築かれた。大変革期を生き抜いた女傑の決定的瞬間と決断とは。信長と前田家に滅ぼされた朝倉に仕える家に生まれながら、利家に見初められ、取り立てられた通称「ちよぼ」。長男は異例の大抜擢で三代藩主となり、天下の舵取りが豊臣から徳川に移るなか人質として江戸に送られて加賀百万石を盤石にし、能登に五重塔を建立し月光菩薩のように慕われた法名「寿福院」の生涯を描く連作短篇。

感想・レビュー・書評

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  • ちよぼ
    前田利家の正室・まつの侍女として前田家に入り、その後側室となり、三代藩主・利常を産む。
    本名は「千代」
    前田家に仕えるにあたり、千世姫と音が同じと言う事で「千代保」と改名。
    能登の妙成寺を菩提寺に定め、本堂、五重塔、三十番神堂、祖師堂等を建立した。

    戦国末期から、豊臣、徳川へと天下の舵取りが変わる時期に、我が腹を痛めた子のみならず、前田家の血を引く子や孫、一人一人に目を配り、羽の下で雛を温める母鳥の様に、常に気にかけて、
    加賀前田家を見守る、月光菩薩のように慕われた。

  • 前田利家の側室であり、三代・利常の生母であるちよぼを軸にした、連作短編集。

    正室・まつではなく、側室のちよぼを軸にしているのが、新鮮。

    利家との出会いを描く「鬼退治」が、よかった。
    幾世の家族を思う気持ち。
    大男のからりとした魅力と、幾世が心を許していくところなど、人物の魅力があった。

    ちよぼがひそかに心寄せた男性たちが軸でありながら、肝心の心を通わせていく部分があまり描かれず、やや残念。

  • あるサイトで紹介されていたので図書館で借りて読了。
    「女子とて闘わねばならなかった」
    「前田家の礎は利家とまつ、そして、この側室『ちよぼ』によって築かれた」
    と帯にありました。6つの短編でエピソードが書かれていて、関ヶ原の戦あたりの時代の事情などが角度を変えて描かれていたり、こんな女性がいたんだなあとか、そんな訳ありだったのか、とか面白く読み終えました。

  • 初出 2020年「小説新潮」

    朝倉家の旧臣の家に生まれ、前田家の奥に仕えて利家の側室となり、3代藩主利常の生母として、慈愛と強い精神力で初期の加賀藩を支えた寿福院の物語。

    私としては加賀藩に伝わる刀に関しての古文書を読んでいたので、本阿弥家とのつながりを興味深く読んだ。

    少女時代朝倉の遺児を庇って隠れ、利家と出会うのはエピソードとしては面白い。
    なかなか猿千代(のちの利常)と対面しない利家に強引に会いに行ったり、江戸での人質を代わる正室のまつとの対立があったり、金沢城や大阪城、聚楽第の城を作った匠に日蓮宗の寺を建てさせたりというのはかなり史実を踏まえているのだろうが、もっとのびのびとしたフィクションがあってもよかった。

  • 加賀の前田利家の側室にして、三代藩主となった利常の生母、寿福院ちよぼに関する6作の短編集。
    前田利家と言えば、正室のまつがあまりにも有名であるが、このちよぼもまた、前田家のため、その生涯をかけて奮闘した女傑であった。
    利家、まつに隠れてはいるが、まさに加賀百万石を照らす月のような存在であった。

  • 文庫が発売されており、読んでみたいと思って図書館利用。読み始めてすぐに「読んでる、これ」となりましたが、全然覚えていなかったので、最後まで読破。

    短編集のような構成で、ちよぼの晩年から幼少期、没後までをそれぞれの時代と周囲の人々を交えて描かれている。これはこれで悪く無いが、女の一生の物語と思って読むと拍子抜けする。短編集なので、読みやすいが、誰の話なのか?と思ってしまったことも数回。(ちよぼの話は1作目だけかと心配になった)

    いわゆる一代記を想像していたので、若干不完全燃焼気味。もっと色々知りたかった。

    利家とまつに、ちよぼは出ていたのかしら?

  • 利家とまつのことは大河ドラマでもみたのでしっていましたが、ちよぼがドラマに出ていたことも覚えていませんでした。
    この人のことがもっと知りたくなりました。

  • 前田利家には正室のまつ以外に千代保と存に二人の側室がいた.物語は幼名 幾世の時代から始まるが、それぞれが男の子を産んでおり、利家の後になることを目指して活動している.その中で千代保の息子が三代利常となった経緯も面白かった.まつの息子は二代目利長なので順当だが、存の息子 知好は異色の生涯を送る.利家の死後、千代保は寿福院として活躍するのも凄いと感じた.女の闘いが物語全体の背景だが、想像しただけで悩ましいものだろうと思う.淡々と進む中で多くの人との絡み合いが物事を動かす大きな要因になっているようだ.

  • 加賀の前田利家の側室で三代利常の生母、正妻のまつと反目しあいながら豊臣、徳川の中で前田家を守ってきた ちょぼの人生さ

  • 歴史を勉強したいけど、なかなか頭に入らないから、小説ならば楽しく読めるかと思い、手に取ってみた。
    前田利家の正室まつの侍女から、側室になり、ついには前田家藩主の生母となった千代保。本人の視点だけでなく、時代も異なる縁者それぞれの立場で描かれた六つの短編を通して、その人生が浮かび上がる。「まつが太陽なら、私は月」との立場でお家のために尽くし、後世まで語り継がれるほど敬愛される。それにしても、武家の女性は結婚そのものが就職のようなものだなと感じ入る。

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著者プロフィール

諸田玲子
静岡県生まれ。上智大学文学部英文科卒。一九九六年『眩惑』でデビュー。二〇〇三年『其の一日』で吉川英治文学新人賞、〇七年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞、一八年『今ひとたびの、和泉式部』で親鸞賞を受賞。著書に『お鳥見女房』『あくじゃれ瓢六』『きりきり舞い』シリーズのほか、『四十八人目の忠臣』『波止場浪漫』『帰蝶』『女だてら』『尼子姫十勇士』『しのぶ恋』など多数。

「2023年 『其の一日 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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