彼女のことを知っている

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104444120

作品紹介・あらすじ

性の解放。性の革命。性的自立。性をめぐる自己決定権。そこにはいくつもの言葉があった――。フリーセックスとヒッピームーヴメントの空気が漂う70年代の京都から、好景気のなかで「自立」が謳歌された80年代の東京、#MeToo運動に世界が揺れる現在まで。離婚した母と暮らす少年だった「私」が50代の作家となったとき、自身の経験を娘にどう伝えようとするだろう? 「性」が人生にもたらすものを描きだす長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  •  書かれた順番も読んだ順番も『旅する少年』の後なので、ああ著者はあの実体験をこういうふうに小説へと昇華しているのだなあ、と感じながら読みました。著者と精神的にも肉体的にも交わり、通り過ぎていった<彼女>たち、昔の・今の妻、そして娘。SNSで見ず知らずの他人と同調し合いディスりあうのが普通の現代から、面と向かっての人間関係を振り返るとき、そこにはバッサリと割り切れないものが残る。#MeTooに対するドヌーヴのあらがいのように。

  • 過去の人々の飽くなき追求にわたしたちの人生は乗っかっているし、その上でわたしたちは間違っていることに声をあげつつ、また次代へバトンを繋がなければならないし。普遍的なものが変遷していく様が深く、面白かった。
    70年代に始まり、現代に至るまでの「性」の扱われ方の視点を通して、それぞれの時代の「生」について考えさせられた一冊でした。

  • 黒川創の書くものは『鶴見俊輔伝』から入ったので、資質として良かれ悪しかれ批評家的な体質がにじみ出たものであるだろうと予測はしていた。だが、ここまで「批評」的であることを恐れない小説であろうとは思わなかった。その筆致は小説的なストーリーの起承転結の旨味を損なってでも理に落ちる地の文の語り(ナレーション)を介した解説を施すことを恐れたりしない。だから正直「しんどい」本ではある。だがこの著者の誠実でかつ円熟した筆致は、ウーマンリブやMeTooムーブメントに揺れる世界の片隅で大事なことがらを語る確かな決意を見せる

  • 著者の私小説的な作品と言えるだろう。四つの章からなり、それぞれ独立した短編としても読めるが、まとめて一つの長編と見るべきだろう。現在の著者の生活と青春時代の思い出が交錯する。
    著者はほとんど私と同世代といえる。青春時代を京都で過ごしたその情景はちょうど、私が過ごした京都と重なる部分が多く、単純に懐かしさを感じた。

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著者プロフィール

作家。1961年京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。1999年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境[完全版]』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞。主な作品に『もどろき』、『イカロスの森』、『暗殺者たち』、『岩場の上から』、『暗い林を抜けて』、『ウィーン近郊』、『彼女のことを知っている』、『旅する少年』、評論に『きれいな風貌 西村伊作伝』、『鴎外と漱石のあいだで 日本語の文学が生まれる場所』『世界を文学でどう描けるか』、編著書に『〈外地〉の日本語文学選』(全3巻)、『鶴見俊輔コレクション』(全4巻)などがある。

「2023年 『「日本語」の文学が生まれた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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