- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104445028
作品紹介・あらすじ
庭に神様、巨木に神様、膝小僧にも神様がいる──。発見と驚きの出会い旅。紅白歌合戦より人気の神楽、「荒神様有」と記された不動産広告、神話を信じて卵を食べない町や、「妖怪さん」のおかげで栄える町。出雲・石見・境港。そこには神様と人が織りなす暮らしがあった――。とっておきの話と出会いから見えてくる縁の不思議、心に沁みる生き方、意外なしたたかさとは。日本人の奥深さに触れる一冊。
感想・レビュー・書評
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この本を読むと出雲大社と水木しげるロードに行き石見神楽が見たくなりました。
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出雲の石見では今も神楽が盛んで、子ども達は毛布やタオルケットを巻いてオロチごっこをし、若者は神楽に打ち込んでいる。石見神楽は進化し続けているのだ。
舞子は一種神がかり的な状態になるらしい。
多幸感の空間
目に見えない世界との共存
身近な神々との暮らし
敗者や滅ぼされし者の視点
そして、「おじいさんがアイドル」
若い頃のあの人の舞は凄かったと、人々は談義に耽るという。
水木しげるに多くのページが割かれている。
米軍の爆撃による大けがで、左腕を付け根付近から切断された上、マラリアで生死の境をさまよった水木さんは、少しだけ回復したある日、左腕の傷口をくんくんとかいでみる。
「微かに赤ん坊の匂いがする・・・。
なんだか生命が底の方からわき上がってくる匂いだった・・・」
「たしかに赤ん坊の匂いだ。
声明が守勢から攻勢に転じたのかな・・・」
「ぼくは毎日赤ん坊の匂いをかぐのをたのしみにしていた。
それは天の香りだった」
「ぼくはなんとなく”希望”がわいた。
すなわち、生きられるかもしてないという安心感だった」
(自伝的長編「コミック昭和史」より)
目先の利益しか見えない「都会人」が置き去りにしてしまった、それでも未だに脈々と残っている世界が柔らかい筆致で描かれており、最後まで心地よい。 -
「出雲の神社」「水木しげるロード」「石見神楽」の考察が載せられる。山陰に重ねて足を運び、まずは風土と情緒をじっくりと体感することから。かつて、ラフカディオ・ハーンが訪ねて著した神々の地、怪談の地では、目に見えない幽事(かくりごと)を心の支えとして生活が営まれている。そうした幽事を敬い、崇めるうえで、目に見える顕事(あらわにごと)としたのが、発展しながら伝承される神楽であり、水木さんが描きオブジェとなった妖怪なんだろう。現代のハーンよろしく、豊かな感性による真摯な著作から、新たな気づきをいただいた。