- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104452019
感想・レビュー・書評
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南北朝時代の高師直を描いた歴史小説。「葛の楠木」「われ、白鳥の皇子とならん」「悪名」の三篇から構成される。三篇は独立した話としても読むことができる。「葛の楠木」は楠木正成、高師直、吉田兼好、「われ、白鳥の皇子とならん」は千種忠顕が中心人物であるが、全体を通せば高師直の物語である。
「葛の楠木」では高師直が楠木正成の戦法を学ぶ。足利尊氏と正成が理解し合っていたという描かれ方は多いが、師直が正成の理解者という点は意外性がある。師直は婆娑羅大名であり、悪党と通じるところがあっただろう。安部龍太郎『道誉と正成』では婆娑羅大名の佐々木道誉と正成に通じ合うところを描いている。坂東武者の固定観念から自由である。
「われ、白鳥の皇子とならん」は公家ながら武力を持とうとした千種忠顕を描く。恩賞のために働く武士との意識の違いが描かれる。「悪名」は四条畷の戦いに吉野攻略、観応の擾乱と師直の栄光と凋落が描かれる。観応の擾乱は足利直義と高師直の対立で始まったが、二人は政治思想から性格まで対立した。
根本的なところは以下の師直の台詞にある。「それがしは御所より執事職を拝命しているのであって、武衛さまの御恩は受けており申さぬ」(192頁)。師直には尊氏に養われている意識はあっても、直義に養われている意識はなかったのだろう。
副将軍のような権威だけでは従わない。領地のために戦うという中世武士の論理がある。婆娑羅には既存の権威の破壊者イメージがあるが、中世武士の論理の貫徹という伝統性も有している。鎌倉幕府自体が反乱軍として出発した歴史がある。
直義は鎌倉幕府の政治を継承し、公家や寺社の権利も守り、武士の荘園侵略に歯止めをかける存在であった。これに師直は対立した。武士に畿内周辺の領地を持たせ、幕府の常備軍にしようとした。これが楠木正行を破り、吉野行宮を焼き討ちした師直の強さであった。師直の路線が続いていたら、室町幕府の将軍権力は強化されたかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一話目の「葛の楠木」だけ。残念ながら私には、皆が一目置く楠木正成の不気味なスゴさが分かりませんでした(涙)
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12/12/16 兼好法師、高師直など魅力あふれる人々の物語。
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臨機応変に動けるトンデモ狂言回しな兼好法師が新鮮。寧ろ登場人物は皆良い意味で新鮮。
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足利家の執事「高師直」を中心に描いた作品。
実はこの辺の時代っておもしろいんだよね。
兄弟が親子がって南北朝で入り乱れるので。
太平記が昔から好まれたのは理解できる。
密かに大河ドラマの「太平記」はおもろかったから
TSUTAYAにはやくならばないか楽しみにしてるんだよね。