生態写真集 キタリス

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 31
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104473038

作品紹介・あらすじ

〝森の獣医さん〞と〝元患者〞との不思議な友情から物語は始まった――「気がつくと、キタリスの世界や気持ちが少し解るようになっていた」……傷ついた野生動物を治療して森に帰す獣医師が、退院していった〝元患〞とその仲間たちとの触れ合いの中でとらえた、愛らしくもたくましい野生の姿。リスたちの知られざる生態を見続けた十余年の日々を、四季折々の美しい風景の中で綴る、北の森の報告書。

感想・レビュー・書評

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  • 野生のキタリス(エゾリス)が、こんなに豊な表情を見せてくれるとは!

    新聞の書評が何かで知った本だったが、写真集で4類区分ならば学校図書館に欲しいなぁ…と購入して頂いた。しかし、そんな下心を大きく裏切る野生動物の魅力の詰まった本だった。


    表紙の可愛らしくもいたずら好きそうなキタリスは、ビアトリクス・ポターのピーターラビットシリーズ「リスのナトキン」を連想させる。

    ページを開くと、そこは北海道の森の中。
    そこに生きる動物たちと、彼らと同じ目線になって佇む著者の姿があった。

    著者の竹田津さんは、元々北海道の畜産医をされていたが、思うところあって、森に居を移し、野生生物の獣医となられた。

    傷ついた野生動物たちを診て、治癒後元の森に放すが、中にはあんなに嫌がっていたはずの診療所にまた戻ってくる「元患」もいるらしい。
    そんな元患のキタリスを中心に、野鳥や鹿、森の四季の表情を本当に生き生きと写真に捉えている(あ〜、文章力なさ過ぎ…もっと的確な表現ないかしら…)。

    写真に添えられている文章もこれまた、いいのだ。

    "テレビの番組で「弱肉強食」というタイトルを使うと視聴率が上がると聞いたことがある。
    自然界では日常がそうであるとも言っているのだが、私はいつも訝っている。
    早春、(キタリスの)恋の季節の大騒ぎに、(中略)ドジなやつが現れるのではないかとクマタカの若者がやってきた。
    驚いて、集まった求婚者たちが散々になるかと思ったら、全くその様子が見えない。
    むしろ(中略)眈々とねらうクマタカの若者を何度も挑発して、相手が未熟者と知ると面白くないのか、プイと去って行った…。''p.35

    "そういえば老人になって
    動作が緩慢になったと思うことが多くなった。
    以前はドカドカと歩いていたように思う。
    それが近頃、ソロソロとなっていた。
    (中略)人間じゃあないみたいな歩き方である。
    いつの間にか私の動きが
    ヒトという種ではない生物のそれに変っているようだ。
    (中略)ヒトを卒業したのかもしれない。
    何になったんだろうと
    見上げるネズミの瞳をみながら考えている。
    考え込んでいる。''p.167

    など、味わい深いでしょう?

    そんな竹田津さんだからこそ、キタリスも他の動物たちも面白がって、こんなに近くで、こんなに豊かな表情を見せてくれるのだろう。


    子どもの頃に観た「キタキツネ物語」の動物監督をされていたことや、「子ぎつねヘレン」の原作の著者でもあることを、読後この本の著者プロフィール欄で知ったが、なるほど納得である。

    いや〜、期待以上の本に出会える幸せをしみじみ感じた本でした。2020.7.9

    • nejidonさん
      ロ二コさん、こんにちは(^^♪
      この本、いいですよね!
      竹田津さんが好きなので、ずいぶん読んだ時期があります。
      この本は登録していない...
      ロ二コさん、こんにちは(^^♪
      この本、いいですよね!
      竹田津さんが好きなので、ずいぶん読んだ時期があります。
      この本は登録していないのですが「家族になったすずめのチュン」なら、良く覚えています。
      あべ弘士さんとのコラボ「どうぶつさいばん」という絵本も好きですし。
      私ももう一度、読んでみたいです!
      2020/07/13
    • ロニコさん
      nejidonさん、こんにちは^_^

      コメントをありがとうございます。
      竹田津さんの本は初めてだったのですが、さすがnejidonさん!本...
      nejidonさん、こんにちは^_^

      コメントをありがとうございます。
      竹田津さんの本は初めてだったのですが、さすがnejidonさん!本の生き字引〜!!(いきなりフランクで失礼しました。もちろん褒め言葉でございます)。

      中高生向けのブックガイドに、「たぬきのひとり」という本が紹介されていたのですが、
      「どうぶつさいばん」も「家族になったすずめのチュン」も気になります。
      早速さがしてみます!

      本当にいつもありがとうございます^_^
      2020/07/13
  • キタリスとは北方の森林地帯に住むリスの総称で、日本では北海道に生息する。亜種エゾリスと呼ばれている。
    無償で野生生物を治療したら、地元の人からは、それが当たり前のようになって、担ぎ込まれるようになったという。彼らは元気になっても先生のところへやってきて、先生を「観察」したり、遊び相手にする。それにしても、「元患者」との関係がこんなに濃密とは、竹田津先生がどれほど「患者」たちに信頼されているかが伺える。

    餌付けすることに賛否はあろうが、都会の公園では決してしてはいけないこと。餌に釣られた野鳥は、猫に捕獲される確率が高くなる。人を怖がらなくなった動物は、人によって殺される運命ともなりかねない。人里離れた深い森に住む竹田津先生だから、きっと責任を持って行っていることだと思う。
    (でも、ヤマガラやリスが先生の膝の上にいるなんて、正直いうと羨ましい。)

    エゾリス が色々な表情をすることは知っていたが、これほど豊かとは!日々の観察なくしては、決して生まれない写真ばかりだ。決定的な瞬間を、芸術的に撮った写真も素晴らしく、感動するが、わたしは日常の中で同じ動物が違った表情を見せてくれる写真に、とても惹かれる。その観察は、思いがけない生態を教えてくれた。時々先生が「ムッとする」ことも面白い。

    先生は患者に名前をつけないが、ごく近しかったリスは名前をもらう。キタリス「アカキチ」の「野生の死」の描写は、お医者さんならではの客観的な観察眼で書かれている。
    ほとんどが写真の中に、短い文章が時々入っている。原始の森の中で四季躍動する姿も、好奇心いっぱいの表情も、淡々と野生を生きる姿も美しい。

  • 著者と心の通じたエゾリスゆえの豊かな表情が魅力的。

  •  フクロウやモモンガだけが空を飛ぶものだと思っていたのですが、短距離ではあるが、木と木の間を飛んだりするのには驚きました。

  • ふむ

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著者プロフィール

獣医師,動物写真家


「1992年 『☆新版☆ 北海道の鳥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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