- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104541034
作品紹介・あらすじ
あっという間にアカの他人。でも実はまだ切れていない、「彼」と私の仲。それぞれの「私」は闇を抱える、「彼」の影を引きずりながら。男女の営みのグロテスクな心理を描く"関係"小説。
感想・レビュー・書評
-
長編が好きだ。
短編とは知らずに読んだ、
しかしこの短編に取り憑かれた。
結晶、
残骸
予言
水葬
冷血
家路
これは結晶のレビュー
寵姫の臣下との裏切り、密通から始まる。
オドロオドロしい、身の毛のよだつ拷問より凄まじい話しから始まる
初っ端からやられる。
なんと美しい語り
場面が浮かぶ、
五感が刺激される
やはり三浦しをんは恐るべき人だ。
語彙の素晴らしさ
これだから読書はたまらない、
特に並行して多読してると
他の作家とは歴然と違う三浦しをんに取り憑かれる
内容はドロドロだけど
文体、言の葉に捕まる。
Talking About Him
おそらく
次つぎと彼について語られるのであろうが
最後まで待ちきれずに
「結晶」のレビューを、書いてしまった。
残骸、予言と
「せっかちで早とちり、おっちょこちょい、自分の悪いところである」
一つづつ完結しながら
物語は続く、
ひとりの不倫男が家庭を壊してはまた作り、
本妻家族、
また新しい家族と、不幸が溢れていく
人間は悲しい。
男も、悲しい
その子供はなおさら悲しい。
予言は高校生思春期の理不尽なやりきれなさ。
一つの不貞が二つの不幸な家族を生む。「二つという単純なものではないが。」
巻き添えを食うのはいつも子供だ
本文よりー理解のないところに愛は生まれない。しかし愛があると思っていた場所に
後から理解の及ばない空白地帯が出現した場合はどうすればいいのだ。
幸いなことに、夫の浮気という不幸に出くわしたことがない。
想像するだけでも、自分はいたたまれない。
妻にとって最大の屈辱
おそらく、生きていけないと思う。
疑似体験と言えども
この本を読むのは苦しかった
された側、こちら
相手夫、そして両方の子供ら
地獄であり
この場面のリアリティなは参った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ある男の周りの人たちの情景。
とでも、いえばいいのだろうか?
話は、短編でいいのだが、一つ一つのお話の内容が濃い。
一人の男の生涯の不倫について・・・。
本の帯で、金原瑞人さん(という方)がベタ褒めをしていらしたので、どんなものかと借りてみると。
女と男の感性の違い。愛の違い・・・かな?
「ミステリ+心理小説+現代小説」(本の帯より。)
まさしくそれだ。
もう少し、時間をおいて再度読むと、また違った観点から読み解くことができる作品だと感じます。
しかし、しをんさんのエッセイばかり読んで、久しぶりに小説を読むと、
「本当に、同じ人が書いたのか?」と驚かされる。
この人は、つくづく文才に優れている、と何度も感じさせられる。 -
本気のしをんちゃんは、やっぱりすごい!
最後に添えられた、唯一横書きの一頁の
田村隆一 「腐刻画」
という一行で、見事に完結する世界。
銅版をニードルで削り取った線が、酸に腐食されることで
美しい版画の描線となって生き続けるように
この6つの短編の登場人物たちの中で
「村川」というニードルで心をキリキリと削られ
その傷を愛情や憎しみという酸で自ら腐食しながら
それでもその痛みを受け入れ、昇華させた人だけが
人間らしく生き続けている。
何人もの女性と恋に落ち、家庭を壊し、家族を傷つけても
ひとかけらの罪悪感もない村川という男性の輪郭が
5人の語り手によって丁寧に語られてもなお茫洋としているのは
彼が永遠を夢見て求め続ける愛や家族が
「誰かに愛される自分」を愛している彼の空疎な幻想だから。
尊敬し、愛されていると思っていた父に、
ある日虚空に放り出されるようにあっさりと捨てられた息子の呼人が
椿という得がたい友を得て、父への慕情も憎悪も濾過して
幸せだったころの記憶と思い出でよしとしよう、と逞しく生きていく姿に励まされ
愛されたいと願ってしまう自分の哀しさを見つめ
変わっていく愛や家族のかたちを受け入れて生きる日々の尊さに気づく
重たいのに、どこか透明な美しさを湛えた名作です。-
まろんさんのレビューを読んで、借りてみました♪
しかし、読み終わった後もハテナばかりで。。
しかし、まろんさんのレビューを読むと、「おお、...まろんさんのレビューを読んで、借りてみました♪
しかし、読み終わった後もハテナばかりで。。
しかし、まろんさんのレビューを読むと、「おお、なるほど・・・こういうことが言いたかったのか・・・。」と、やっと分かりました(^^♪
2012/11/03 -
紫苑さんが、こんな拙いレビューを読んで借りてくださったなんて、
うれしいやら恥ずかしいやら。。。
『私が語りはじめた彼は』というタイトル通...紫苑さんが、こんな拙いレビューを読んで借りてくださったなんて、
うれしいやら恥ずかしいやら。。。
『私が語りはじめた彼は』というタイトル通り
語る人物がみんなそれぞれ、自分の願望や憎しみや諦めを勝手に投影させながら
村川や自分のことを語るので、
いろんな解釈ができて、正解がない感じの物語ですよね。
でも、呼人が語っていた、幸せを感じた一瞬を抱きしめて生きる、ということについて
しをんちゃんは対談でも熱く語っていたりするので
やっぱり、実はとても奥ゆかしい心根の人なんだなぁと思います。
そして、なんといっても五感を研ぎ澄まして結晶化したかのような
美しい文章がすばらしい作品でした(*'-')フフ♪
2012/11/04
-
-
大学教授村川を巡り、係わってきた人達の連作短編集。
当の村川はほぼ登場せず、本人の気持ちはまるで分かりません。
ただ、とにかくモテる人らしい。
家族がありながら、不倫をし、新しい家族を作る。
でも、村川の魅力は伝わってこなかった。
なので、村川を忘れて、それぞれの登場人物に没頭して読みました。
自分の意思を初めて貫いた婿養子の男の話「残骸」、親の離婚に苦しみバイクに乗るようになった少年の話「予言」が好みでした。
-
人間のなんとも言えない闇の部分や欲が男女の恋によって狂わされている感じがこの先自分も同じような目に遭うのではと考えさせられたり、見えない部分を想像した。後半になるにつれて読み進めていくのが止まらなかった。
-
図書館の返却期日までに読めそうにないから、読まずに返そうか…と思いつつ、オビの金原瑞人さんの推薦文を見たら、なんだか読みたくなって。
結局、イッキ読みしちゃいました(^^)/
連作短編集かな??
今まで読んできた三浦しをん先生の職業モノの作品群とは全く違う内容とテイストで、驚かされたし面白かったです♪
すべての出来事の原因は、ある男性の生き方なんだけど…語っているのは、周囲の人間で。そのワタシたちの愛のストーリーですね。
何が事実なのかは判らないけど、それぞれの真実があるのでしょう。
しをんさんの、こういうタイプの作品も、これからも読んでいきたいです(*^_^*) -
人を愛した結果、私はどうなるんだろう。
話の構成がすごくおもしろい。
果たしていい男なのかどうかは、別として。 -
やることは派手では無いけれど「先生」はなかなか自分勝手な男だったなと思います。大人たちの執着とか快楽に巻き込まれた「子ども」の立場にある人たちの描写には考えさせられるものがありました。親といえども一人の人間なのでなんとも言えませんが。醜いけれどそれも人間味なのでしょうか。
-
スパッと気持ちよく終わるわけではないんだけど、そういうもんだよなぁってなる。
-
当たり前だけど、エッセイとガラッと変わった、冷たく湿った恋愛小説。一人の男に関わったその周辺の男女の振り回され、翻弄される様が描かれる連作短編集。