誘拐逃避行: 少女沖縄「連れ去り」事件

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104690022

感想・レビュー・書評

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  • 誰もこの子を愛してあげられなかったのねってことが悲しい。
    アビューズするばかりで。

    書き方は比較的公平。
    「誘った恐ろしい子」「淫婦」みたいにならないように気をつけて書いている。
    確かにこの子はこいつを利用したけれど、こいつを(というより自分を)利用して逃げなければならないほどに孤立無援なんだという視点がちゃんとある。でも足りない。
    もっと説明しないと、多分足りてない。

    この子のためになにかしてあげられる人やシステムがないなんて酷すぎる。
    たとえば自分が出会ったとしてもなにもできないししなかっただろうと考えると滅入る。

  • 自分はこの事件を記憶していないのですが、誰も救われてないなぁという印象。
    誘拐されたとする女児、その母親、祖父母とすべてがすべてお互いに保護や干渉をしない関係が、事件前から事件後までずーっと続いているんですよね。
    そして、誘拐したとされる側は本人や元妻が、結構すごい人生歩んでて、更に弟にまで迷惑をかけてしまっている。
    事件が解決した後でも、幸せになった人がだれもいないっていうのは、いろいろ残念ですね。
    女児がなんにも変わっていないというのが特になんとも言えないです。
    ただ、著者の感想部関連でところどころひっかかるのがあって、「家族は幸せでなければいけない」みたいな思想が見えてくるかなとは思いました。
    幸せじゃない逃げなきゃいけない家族は認めていないんじゃないかなと。
    著者は「セックスボランティア」の作者でもあるんですが、なんというか視野が狭いというか、視線が一点集中なのかなという印象です。
    事件だけじゃなく、著者の感想や取材姿勢も含めて、読後感はぐったりします。

  • 47歳の山田を虜にした少女めぐ。
    女に子供を無責任に産ませた男、祖父に押し付けて逃げ去った母親、冷遇する叔父、性的欲望を隠しきれない山田、自分の意思で「誘拐」されためぐ、そしてそれをメシの種にする筆者。
    「悪」とは一体何なのか。

  • 子供が犯人を主導する生々しさ。
    最後の犯人のコメントが気持ち悪くてしょうがなかった。

  • 人間の欲望は、どこまで行ってもただの欲望で。
    求められた嬉しさ、ここから逃げ出せる嬉しさ。
    この事件が美しい物語になり得ない事実が現実。
    誰が悪いのか、誰も悪く無いのか、
    需要があるから供給があるのか。
    当事者達でしか分からないことなのだろうけど。
    少女が自分には夢があるから、
    と言い切る強さを大事にしてもらえればと思いました。

  • 読み終わると、とても気分がわるくなる。
    作品の質が低いとか、筆者のスタンスに問題があるとか、そういうことではない。事件そのものの卑劣なねじれ具合と、それを饒舌に語る被告を始め関わりのある人たちの自己正当化が、とてもいやな気持ちにさせる。
    全員が全員、自分はそんなにはわるくない、仕方がなかった、と自分を正当化しているのがよくわかる。
    だから、つかまっても、刑期をつとめても、解決した感じが、まるでしない。
    いやーないいわけばかり聴かされている感じ。

    生い立ちとか、トラウマとかそりゃあいろいろあるんでしょうけど、でもやっぱりどこかにはっきり善悪を分けていく起点はあって、やっぱり間違ってしまったんだよ!それを認めなさいよ!と言いたくなる。

  • 先日、改題された文庫版を書店で見かけて気になったので、単行本版を図書館で借りた。
    2003年に実際に起きた「少女沖縄『連れ去り』事件」について、「加害者」の男や、二人に関わった人々に取材を行って、事件の裏側にあるものを読み解こうとしたノンフィクション。
    文章は読みやすく、テンポもいいのでさくさく進む。何より作品そのものの構成が巧みで、読者を飽きさせずに引っ張っていく。電車内で読んでいた時、集中していて気付いたら降りる駅を過ぎてしまっていたくらいだ。
    内容については、実際に起こったもののため、単純に感想を言うのは難しい。少女自身の口から語られることがない以上、彼女が何を考えどう感じていたのかは、結局誰にも分からない。
    ただ、生き辛い現実を何とか生き抜くため少女が選んだ方法は、あまりに悲しくやりきれない気持ちになった。

  • 47才の中年男と10才の少女が沖縄で保護された。
    両親に逃げられ祖父母、叔父に虐待されてた少女は「帰りたくない」と言った。バツ2の無職、中年男は少女を救いたいといった。
    とても奇妙な愛の逃避行?冗舌な中年男の言葉の裏には醜い性欲が隠されていた。少女は男を利用しようとしていた。
    読み終わったあとすごく複雑な気分になる。誰が加害者で誰が被害者なのか?どこまで追いかけていっても心の闇は誰にもわからない。
    でも哀しい、とても哀しい。

  • TBSラジオdigで紹介されていたので。
    なんなんだこのヤダ味は。
    刑事事件になったところで解決しないこの感じ。

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著者プロフィール

河合 香織(かわい・かおり):1974年生まれ。ノンフィクション作家。2004年、障害者の性と愛の問題を取り上げた『セックスボランティア』が話題を呼ぶ。09年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞、19年に『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で大宅壮一賞および新潮ドキュメント賞をW受賞。ほか著書に『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』『帰りたくない 少女沖縄連れ去り事件』(『誘拐逃避行――少女沖縄「連れ去り」事件』改題)、『絶望に効くブックカフェ』がある。

「2023年 『母は死ねない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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