父から「外人部隊」の息子へ

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104727018

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  • 自分には、父と息子どっちの気持ちも分かる気がした。
    冒頭の手紙のやり取りの抜粋で既に、つい涙ぐんでしまった。

    訊きたいのは、外人部隊に志願したいと思う心境。
    が、然程重い意味があったわけではないようである。
    それにしても、大学の授業のフランス語と習い事の空手で、軍人になろう
    しかも外人部隊に、なんていう発想が凄い。
    若さと書いてあるけれど、本人の資質によるところも大きいだろう。

    違和感を感じたのは、大学に拘る父親の姿。
    世代的にどうしてもそういうものなのかもしれないが、大学が大事だと懸命に語る手紙の文章に
    理解できないものを感じた。

    この雄一郎さんは「違う、父の思い過ごしだ」と言うけれど、
    興味の無い学部に無理矢理行かされて、仕送りもなく、
    勉学は役に立たなくて
    バイト先で学んだことのなんと大きいことか。
    っていう感覚、私には物凄くよく分かる。
    興味の無い学部、大学へ行かされて、金を散々使うと恩に着せられ、興味の無い仕事につくために勉強をする。
    苦痛でしかありえなかったけれど、親は大学生、大学卒業という肩書きにとても拘った。
    お陰様で、私はしなくてもいい苦労と回り道を10年させられた。
    大学に行っていないことより、浪費した10年の方が私の人生にとっては重い。

    人によっては、雄一郎さんが黙ってフランスヘ行ってしまった事を不思議に思う人もいるだろう。
    でも、親が厳しい家庭というのはそういうものだ。
    親は絶対に正しい。正しい親に育てられた子供は、絶対に間違ったことをしてはいけない。
    だから、大学を卒業できないとか、ましてやサラリーマンにならず外人部隊に行くなんて
    そんなことはとんでもない。
    それでもそれをどうしてもしたかったら、黙って家を出るしかないのだ。
    厳しい親というのは自分が間違っていたかも、とは絶対に考えないから。
    間違っていないという考えの親に少しでも事前に漏らして計画がばれて止められたら、
    二度とそれはできなくなる。
    だから、止められないためには隠すしかない。


    外人部隊と言ったら軍隊だ。
    戦争が無くても、軍隊。
    志願したくなる気持ちは結構よく分かるけれど、実践してしまうって凄いと思う。

    帰ってきてくれと再三繰り返される言葉が辛い。
    無理を言わないと言う言葉自体が無理を言っているんだが、
    お父さん本人は気が付いていないのだろう。

    なかなかやる、という妹の反応は面白かった。兄弟っていい。
    外人部隊ってそんなに駄目なことなんだろうか?
    時代とか土地柄の問題か?
    そんなに誇れない内緒にしておきたいことだとは思えなかった。
    まあ最後の方ではお父さんもだいぶ理解を示していたみたいだけど。

    軍隊にいたことがあるおじいちゃんの反応は一番面白かった。
    1通目は普通のお手紙。
    2通目は伍長の心構えを書いて来ちゃうところがすごいな。
    おじいちゃんの立場で、自分の孫が軍人になって
    息子がそれを他言無用と言っているのを見てどう思っていたのかな。
    『いざというときに』という文言に、きちんと”いざというとき”を知っていて、
    経験していて、それが起こりそうなったら受け止める
    おじいちゃんの気概に感動した。

  • 登場人物が自分の家族と重なって見えた。
    僕は日本に強引に帰国した訳ですが。

  • 突然フランス外人部隊に入った日本人息子とのやり取り 05年4月

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著者プロフィール

駒村吉重(こまむら・きちえ)
一九六八年、長野県生まれ。
二〇〇三年『ダッカへ帰る日――故郷を見失ったベンガル人』で、第一回開高健ノンフィクション賞優秀賞。二〇〇七年『煙る鯨影』で第一四回小学館ノンフィクション大賞を受賞。ほかに『君は隅田川に消えたのか 藤牧義夫と版画の虚実』(講談社)、『山靴の画文ヤ 辻まことのこと』(山川出版社)、『お父さん、フランス外人部隊に入隊します。』 (廣済堂文庫)、詩集『おぎにり』(未知谷)などの著書がある。

「2021年 『このごろのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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