トガニ: 幼き瞳の告発

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105055530

作品紹介・あらすじ

霧が立ちこめる街・霧津市の障害児学校に赴任した若き教師カン・インホは、信じ難い現実に直面する。無力な生徒をなぶる、鬼畜のごとき「教育者」たち。告発に立ち上がったインホたちを阻む「権力」の壁。果たして、子どもたちに救いの日は来るのか-。社会派作家・孔枝泳の渾身作。

感想・レビュー・書評

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  • 2005年6月。韓国南部の都市、光洲市の某聴覚障害者特殊学校で、校長をはじめとした教職員が長期にわたって障害児たちに性的暴行や体罰を加えていたという、信じられないようなおぞましい犯罪が内部告発によって明らかにされた。
    加害者たちは逮捕されるのだが、あろうことか彼らは警察や教育庁、弁護士や裁判官らの共謀(といっていいだろう)によって、執行猶予付きの不当に軽い刑罰となるのだ。

    被害者や支援者たちは、何度も警察や教育庁、市役所に訴えるものの全く相手にされなかった。
    裁判では「前官礼遇」という悪習(裁判官や検事を辞めて転身した弁護士に対して、なるべく裁判で勝たせるようにする)があり、また証人の発言には地縁、血縁、同窓生などの繋がりが幅を利かせる。さらには次第に被告人の肩を持つようになる判事。
    教会の牧師は、校長を陥れた黒幕がいると信者たちへ都合のよい話をでっち上げ信じさせる。
    「13歳以上の子どもに対する性的暴行は被害当事者や保護者が示談して告訴を取り下げれば、起訴自体が無効になる」ことを利用し、貧しくて知的障害のある両親に破格な示談金の交渉をし、示談を成立させる学校関係者。

    それらに重ねて障害者に対する人権は無視される。
    初公判は被害者が聴覚障害を持ち、傍聴人も同じ障害をもつ人たちが多くいるなかで、手話通訳士を準備することもなく行われた。
    付け加えるならば、聴覚障害児の通う学校でありながら、被告人たちをはじめ手話のできる先生がほとんどいなかったことにも驚きを隠しきれない。

    そのような不正、腐敗がまかり通る卑劣な大人たちに、心にも身体にも傷を受けた子どもたちは立ち向かわなくてはならなかったのだ。

    社会派作家・孔枝泳(コン・ジヨン)さんは、この実話を題材にした小説『トガニ』を発表する。
    「トガニ」とは「るつぼ」という意味で、この性的暴力事件をめぐって起きた、浅ましい大人たちの狂乱のるつぼを表したものだと思う。

    事件の経緯や裁判過程などは、ほぼ事実にそって忠実に描かれているものの、小説では実際の事件より加害者、被害者の数を減らし、第三者の目を通して伝えたいという著者の思いから、子どもたちに寄り添う教師カン・インホと人権センターの女性幹事ソ・ユジンを登場させている。

    わたしは社会に蔓延る不条理さと生きることに対する理不尽さに、怒りと悲しみでいっぱいになった。
    ……いや違う。
    正直に言うと、まず感じたのはそういう思いではなかった。
    怯んだのだ。わたしはこの巨悪な壁を前にして足がすくんだのだ。
    ここで仕事をするしかないカン・インホの立場なら。子どもを預けるしかない家族の立場なら。弱味を握られ負い目を持つ同僚の立場なら。突然この事件に関わることになったソ・ユジンの立場なら……
    またはこの事件を知った市民のひとりだとしたら、わたしは何か行動を起こすだろうか。作中の市民たちは時間の経過によって真実が霧のなかに包み込まれることで、心地よい偽りの言葉に安心し、次第に穏やかな自分の世界へと帰っていく。そんな彼らの姿がぴったり自分と重なり愕然とする。

    ソ・ユジンのような行動は誰にでも起こせるものではないだろう。体の弱い娘を母親に預けて、ついこの間まで何の関り合いもなかった子どもたちのために、自分の全てを懸けて権力という闇に立ち向かっていく。
    それでも彼女の毅然とした態度や軸のぶれない気概は尊敬するし、自分もそうでありたいと強く願うのは決してわたしだけではないはずだ。
    子どもたちが未来に夢を持てるように、無責任な大人でいてはいけないと思う。
    真実を知ること、考え続けること、忘れちゃいけないこと。勇気を出すこと、悪いことは悪いと言えること。
    足がすくんだままでもいいから、その場で踏ん張れるだけの気概は持っていたい。
    抽象的な言い方しか出来ない自分が本当に嫌なんだけど。

    そしてある事情で戦いから逃げるように途中離脱しなければならなくなったカン・インホ。
    インホに対して、ただ感謝と温かい言葉を贈り、彼の幸せを祈るユジンと子どもたち。
    インホが「大丈夫、味方だよ」と伝えてくれた言葉。おんぶしてくれた大きな背中。抱き締めてくれた温かさ。それは決して偽りや偽善でなかったことを子どもたちはちゃんと知っている。
    相手の立場を重んじ、苦しみを慮り、寛容な心で相手を認められる、そんな強く優しい子どもたちの笑顔を想像しては目が潤んでしまう。

    「ぼくたちもみんなと同じように大事な存在なんだと気づいた」
    子どもたちはソ・ユジンに伝える。
    ユジンやインホが彼らの子どもたちとして、自分たちを守ってくれたという愛情がしっかりと伝わったからに違いない。

    だからどうか、カン・インホも自分の人生を歩いてください……そう伝えたくなる。

    〈この世のなかを変えたいなんて気持ちはない。ただ自分が変えられないようにするために戦っている〉
    不条理な社会も理不尽な人生も、現実もフィクションも、愛情や優しさ、勇気も……
    それらは全てソ・ユジンのこの言葉に繋がっていくのだと信じたい。

    わたしたちは、貧富の差や障害の有り無しで変わってしまう人権、様々な差別に対して鈍感になってはいないだろうか。そんな「変化」に陥ってはいないだろうか。
    決して変わってはいけない部分があることを胸に刻まなければならない。

    彼らの世界はまだまだ続く。
    この先には考えられないような未来が待っているのだから……

       ────────────────

    2009年、小説『トガニ』が出版されました。
    わたしの大好きな俳優コン・ユさんが、この小説を兵役中に進級記念として指揮官からプレゼントされます。
    小説に衝撃を受けたコン・ユさんは、忙しさを言い訳にこういう事実から耳を塞ぎ目を閉じて生きてきたと感じます。このような事件が世の中に起きていることをみんなに知ってもらい、何かを感じるきっかけになってほしいと願い、事件を闇に葬らせないためにも原作者の孔枝泳さんにアプローチし、映画が制作されました。
    映画は460万人以上という多くの観客を動員し、その反響はすさまじく、ついに政治をも動かすことになったのです。

    2011年10月、「性暴力の処罰などに関する特例法」が改正されました。
    小説の名から「トガニ法」と呼ばれたこの法には、障害者の女性や13歳未満の児童に対する性的犯罪に対し最高で無期懲役まで科することを認めるとともに、性犯罪の時効をなくすなどの内容が盛り込まれたのです。
    世論に押される形で警察は再捜査に乗りだし、加害者も再逮捕され(とんでもないことに復職していた教職員もいた)学校は廃校となりました。

    本作品の訳者は、大学在学中に拉致され、24年間、北朝鮮での生活を余儀なくされた、蓮池薫さんです。
    生きていく上で習得しなければならなかったであろう言語を訳された本文は、すっと内に入ってくるとても読みやすいものです。
    そして「訳者あとがき」で、蓮池さんが作品に込められたメッセージを読み解かれた部分には、とても心打たれるものがありました。

    • 地球っこさん
      kuma0504さん、こんばんは。
      お久しぶりです。

      わたしは最近コン・ユさんのことが好きになったので、彼が映画化に動いたという作品...
      kuma0504さん、こんばんは。
      お久しぶりです。

      わたしは最近コン・ユさんのことが好きになったので、彼が映画化に動いたという作品に興味を覚えて原作小説も読んでみました。
      そんな感じなので、今のわたしは文学や映画も含めて韓国のことはほとんど……というか全くの不勉強な状態です。

      でもkuma0504さんへのお返事には到底ならないと思いますが、頑張ってみまーすp(^-^)q
      「何書いてんねん!」と怒らないでくださいね 笑

      感想でも書いたのですけど、「事件の経緯や裁判過程などは、ほぼ事実にそって忠実に描かれている」ということですが、どこまでが事実なのかは私には分からないので、とりあえず小説の内容に沿ってまとめてみます。


      事件は光州で起きましたが、小説も映画も「霧津市」という架空の都市を舞台にしてます。

      舞台を架空の都市としたのは、kuma0504さんが教えてくださったとおり、光州は「光州事件」が起きた場所ということで、原作者は
      「現代韓国における民主化運動の象徴的な場所なので、あえてそこは避けました」
      とインタビューで答えておられます。

      また小説も映画もラスト近く、判決を不服とした人権団体によるデモが行われます。

      小説ではデモに対する警官隊の放水、映画ではそれに加えてカン・インホ(イノ)が警官に地面に押し倒されて制圧される場面があります。

      やはり光州事件を連想させるものだったそうです。
      それについて原作者の言葉をまとめると、
      「光州事件を意識したというより、実際にデモが行われたのは、ノ・ムヒョン政権のときだ。そのときは警官隊による鎮圧はなく、普通にデモが行われた。
      一方、小説執筆中と映画撮影中は、イ・ミョンバク政権のときで、デモは厳しく取り締まられた。なので小説や映画では警官隊による放水によるデモの鎮圧場面が描いた」
      そうです。
      このデモの撮影は、予定は光州だったそうですができなかったそうです。


      この加害者である校長と行政室長は双子で霧津栄光第一教会の長老です。
      もちろん彼らは特別献金もしてます。
      そして彼らの妻も教育長もこの教会の信徒です。

      不在の担任牧師に代わって礼拝を司どる息子の牧師は、下手すると教会の存廃にかかわってくる事案であることから、まだ何ら結論の出ていない問題を信徒たちに持ち出します。

      一生を捧げて障害者のために献身してきた篤実な信徒の二人が罪を犯すはずはない。
      そうすると聴覚障害者たちがウソをついたことになる。
      しかし、知的障害もある子どもたちが、ウソを作り出すほどの知能はない。

      そして牧師は、はっきりとは言わないのですが、その矛先を、「霧津人権運動センターを主軸に結成された慈愛学院対策委員会の委員長、『教会のない教会』の牧師であるチェ・ヨハソン牧師」に向けます。

      チェ・ヨハソン牧師は、霧津栄光第一教会の元牧師で、牧師の父親である担任牧師とともに霧津栄光第一教会を起こした人でした。
      ところが担任牧師が自分の息子に教会を世襲させようとしたとき、反旗を翻し、教会を出ていきます。
      そのとき彼を慕っていた多くの信徒たちも一緒に教会を離れていきました。

      そんな因縁を持った2つの教会(ふたりの牧師)が、加害者側と被害者側に別れて原作には登場しました。(映画ではチェ・ヨハソン牧師は登場しません)

      長々と何書いてるのかわからなくなりました……
      ごめんなさーい。
      2021/04/01
    • kuma0504さん
      地球っこさん、頑張ってコメントありがとうございます♪
      2009年小説発表から、映画作成、2011年法律改正までのスピードは、次の大統領選挙の...
      地球っこさん、頑張ってコメントありがとうございます♪
      2009年小説発表から、映画作成、2011年法律改正までのスピードは、次の大統領選挙の影響もあったにせよ、驚異的に速く、おそらく市民の人権意識の広がりが背景にあるのだろうと思います。そのあたり含めて、小説で細部を点検してみたくなりました。
      私は、当然あるだろう団体の利害関係の闇にはあまり関心はなく、周りの市民のサポートの方にあるので、流石に裁判の結果が分かっている今はある程度は明らかになるっているでしょう。
      光州のデモが弾圧されなかったことで、少し安心しました。光州市民はデモの弾圧には、ものすごくピリピリするはずです。80年の被害者にたくさんの10代がいましたから、まだまだ遺族は現役世代です。どのような経過を辿って事件が発覚していくのかを確認したい。
      2021/04/02
    • 地球っこさん
      kuma0504さん、おはようございまーす♪

      毎度のことながらkuma0504さんのレビューや、いただくコメントから「あ、こういうとこ...
      kuma0504さん、おはようございまーす♪

      毎度のことながらkuma0504さんのレビューや、いただくコメントから「あ、こういうところに目をつけて読んだらいいのか」と刺激を受けてます。
      「十二国記」のときもそうでした(*^^*)

      だからといって、そこから読みこんでいく力は全然ないんですけど(^o^;
      それでもいろんなことを知りたくなります。
      自分の国のことも知らなくちゃいけないけど、今は韓国やそれから中国のことも知りたい気持ちでいっぱいです。
      まあ好きな人(コン・ユさん)ができたら、その人のことを知りたいという邪悪な?乙女心が2/3を占めてることは否定しませんが……笑 

      本を読み返してみて、事件が発覚したとき「かつて得た民主化運動の勲章をタンスの引き出しにしまっておいた長老たちが、久しぶりにスーツにネクタイをしめて家を出た。」との一文があって、これがkuma0504さんの教えてくれた光州事件のことかなあと思ってました。

      映画も設定は少し違うし目を背けたくなるシーンもあるけれど、すごく本気の覚悟を感じて観てよかったです。
      2021/04/02
  • 2005年光州市で起きた聴覚障害者特殊学校での長期性的暴行事件を小説化したものです。地球っこさんのレビューを読んで、「あの」光州市でそんな非人権的な事件が起きたことがショックであり、「本質」を確かめたくて紐解いた。

    小説なので、舞台も海沿いの霧津市になっているし、登場人物の名前は当然のこと、人数も省略されている。でも大筋では事実通りに話が進み、小説内では加害者の校長含む教職員は、極めて軽い判決で結審して終わっている。ただ、著者の孔枝泳氏自身は80年代の民主化闘争を闘った若者だったらしく、負けたままの小説を描くはずが無い。彼らは負けたのだろうか?小説の中でソ・ユジンは霧津市を離れた主人公カン・インホに宛てたメールでそうではないことを書いていた。

    裁判の後、「事件の前と後で1番変わったこと」を聞かれて、被害者のひとりの子供がこんなしっかりしたことを手話で答えていたらしい。
    「ぼくたちもみんなと同じように大事な存在なんだと気づいた(279p)」。
    それは人権という観点から、とっても大切な言葉である。

    軍事独裁政権を終わらせるキッカケとなった光州事件(韓国では5.18民主化運動とは呼ばれている。ホントは「事件」なんかじゃなかったから)、軍事独裁政権を終わらせた87年抗争、その結果、韓国は人権の尊重を国の方針にした。全国各地に人権センターを建てたのも、その一つの現れだろう。そのことを、2018年私は映画に刺激されて光州市ロケ地巡りをしてヒシヒシと感じた。

    小説を読んで、それらの雰囲気が少しずつ残っているのを確認した。何よりも、主人公カン・インホと共に事件にかかわることになったソ・ユジンの勤め先が「人権運動センター」であり、図らずも此処が運動を最後まで指導することになる。2018年、私は光州市郊外にある駅のエントランスで、人権啓発のわりと大規模なパネル展示と、40ページオールカラーの光州市人権センター発行の無料人権解説パンフに出会った。少なくとも光州市は本気なんだと思っていた。光州市警察署は「市民にやさしい警官」の壁絵に囲まれていた。

    小説を読んで、それらはたゆまない市民の運動なくしては掴めないものだということが、それを市民が「自覚して」いることが、ひしひしとわかった。
    「韓国がそんなにいい国じゃないってことはわかっていたけど、ここまでだれも彼も同じとは思っていなかった。これからはたいへんな戦いになりそう。教育庁、市役所、みんな同じよ。霧津女子高や霧津高の同窓生か、そうでなければ、小学校の友達だとか、妻の甥っ子、でなければ栄光第一教会‥‥インホ、40億(約4億円)よ。あの人たちはわたしたちの血税を1年に40億ウォンも使いながらそんなことをしている」(121p)

    韓国の地方都市を代表する「霧津市」において、複数の子供たちの明確で具体的な証言がありながら、教育長も警察も(少女を診察した)医師も弁護士も教会も、卑劣な特殊学校校長や副校長、生活指導教師に味方する。判決は被告人に有利に結審する。

    目に見える建物や法律は数十年で変わるけど、目に見えない因習や地縁血縁金縁は簡単には変わらない。真実が見えない霧の中の街の風景が、小説全体を覆っている。これは決して抽象的な描写ではなくて、韓国南部を旅するとしばしば出くわす自然現象である。濃霧は時に10時ごろまで凡ゆるものを見にくくさせていた。

    このバッドラストと見える(僅かに希望を見出す)終わり方が、俳優コン・ユを動かし、映画が韓国社会を動かし、法律改正、再捜査、学校の廃校へと動かしたらしい。

    韓国市民は「動けば変わらせる」という成功体験を何度も、世代をまたがって持っている。この小説が韓国の「恨(ハン)」を描いたのだとしたら、珍しく小説の外で、その恨は「解かれた」。

    5.18民主化運動の観光名所、日本語パンフはたくさんあったのだが、今度光州市に行った時には「トガニ法ゆかりの地と解説パンフを教えて欲しい」と観光案内で聞いてみようと思う。おそらく日本語パンフはないだろうけど、詳しく教えてくれると思う。

    • 地球っこさん
      kuma0504さん、こんにちは♪

      わたし今、泣きそうです。
      というか、もう涙落ちそう。

      kuma0504さんの冷静な視点で書...
      kuma0504さん、こんにちは♪

      わたし今、泣きそうです。
      というか、もう涙落ちそう。

      kuma0504さんの冷静な視点で書かれたレビューは、韓国や光州市のことがとてもわかりやすいし、また外面からだけでなくて「人権」、市民の「自覚」、「恨」という内面からのことにも触れておられて、すごく胸に響きました。

      なんだろ、今とてもぐっと込み上げてくるものがあるのですよ。
      kuma0504さんのこのレビュー、ホント読むことができてよかったです。

      内容のないコメントでごめんなさい。
      いつもないですけど(笑)、それだけ伝えたくて。
      2021/04/13
    • kuma0504さん
      地球っこさん、おはようございます♪
      過分なコメントありがとうございました。
      少し説明不足かな、というところもあったのですが、地球っこさんのと...
      地球っこさん、おはようございます♪
      過分なコメントありがとうございました。
      少し説明不足かな、というところもあったのですが、地球っこさんのところで十二分に説明しているので、ま、いいか、と思って書かせて頂きました。
      どうしても、2018年の旅のことに少しだけ触れたかったので。
      思ったよりも、光州市そのものを彷彿させる描写はなくて、いろんなところに配慮しながら書かれた小説なのかもしれません。
      面白い小説を紹介してくださり、ありがとうございました。
      2021/04/14
  • 孔枝泳「トガニ 幼き瞳の告発」書評 実在の事件描き社会揺さぶる|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11640992

    コン・ユと映画が社会を変えた!韓国で法律まで変えさせた 映画【トガニ 幼き瞳の告発】(2020年6月27日)|BIGLOBEニュース
    https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0628/kbd_200628_9913075596.html

    トガニ : 幼き瞳の告発 孔 枝泳(著) - 新潮社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784105055530

  • トガニとは韓国語で「坩堝(るつぼ)」の意味。悪の坩堝、不正の坩堝がここでは聴覚障害者養護学校とその寄宿所であり、被害者は性的虐待を日常的に教育者である校長や教員、また議員から振るわれていたというのだから驚愕。これは実話であり、当時は権力により封印されてしまったこの10年前の悪行を、本書の作者である孔枝泳さん(女性)の熱意による一からの洗い出し、真相究明によって世論を大きく動かし、ついには罪を暴き、「トガニ法」なるものまで制定されたという、その発端となった本なのだそうだ。生々しい記載は決して読んでいて気持ちいいものではなかったが、法定の争いや対権力に立ち向かう主人公や被害者とその家族の心情の葛藤がとても説得力あり、従って無難な完結にもなっておらず、リアリティが迫ってきて、非常に読み応えがあった。コン・ユ主演で映画化もされています。(3.6)

  • 映画版視聴済。

    小説と映画とでは設定が色々異なっている(ユジンが学生時代の先輩で子持ちであったり、主人公が終盤に選択する行動であったり、ミンスのその後であったり)。胸糞展開はどちらも同じなのだが、映画の方が個人的には好きかな(演技や演出が素晴らしい分、目を覆いたくはなるのだが……)。

    映画版では無かったと思うのだが、「うちの息子や孫娘には聞こえないその言葉が、この耳から離れないんです」p220 というユリの祖母の言葉、彼女のその後の選択がやるせない。加害者側にとってはたかが紙切れ1枚だが、ユリに障害がなければ、貧しい家庭でなければ、あるいは……と考えてしまう。

    これは自分の無知なのだが、当時の韓国の背景(歴史)が脚注かあとがきで説明されているとより物語に入れたかなと思った。小説版では主人公・インホの背景も描かれるのだが、あえて清廉潔白な善人/先生とはしていない(酸いも甘いも知る人間くささがある)のが印象的だった。インホが選択してきたことが良いか悪いかは別として、彼もトガニ(坩堝)に巻き込まれるしかなかった人間のひとりなのかもしれない。

    ●映画版「トガニ 幼き瞳の告発」感想【ネタバレ有】
    https://booklog.jp/users/kkkmovie/archives/1/B00A7OEFH8

  • 実話を元にしているのに、あの結末にしたのがイマイチ解せないし、後味が悪すぎる。

    韓国の実情を知っていたら、又違って見えてくるだろうか…

  • 同じくインフルエンザの際に母が借りてきてくれた。韓国の聴覚障害児が校長や教師に性的暴行を受けていたのに裁判でもみ消されてしまう話。最後まで、結局うまくいかなかった話…

  • 映画の予告は知っていますが、原作や元になった事件があったことは、良くは知りませんでした。たまたま職場にこの本があり、一気読みでした。韓国の社会がどのようなものなのか分からないのですが、相当な権威主義がはびこっているように感じました。一人の若き教員が、聴覚障害児が性的虐待を受けていたことを告発しようとするも、権力に押しつぶされるという話。小学生の頃から陵辱されていた女児の気持ちなど、胸くそが悪くなりましたが、メディアを持ってしてもあらがうことのできなかった社会が怖かったです。日本もそうではないと言い切れるのか?怖い。

  • 韓国で起きた実際の事件を題材に書かれた作品。聴覚障害者の学校で起きた校長などによる生徒に対する性的暴行事件。校長は地元の名士で、裁判を潰すために知的障害のある親に示談書にサインさせることや、警察に便宜を図らせることを企む。さらには、原告の一人である主人公である新任教師の過去を暴く。本人は意識していないことだったが、悪意を持ってみると、悪人のように見えてくる過去を公開したのである。自分を守ることも充分にできない障害のある子どもたちに対する卑劣な仕打ちに対する怒り、哀しみが胸に突き刺さってきた。そして、その真実を明らかにして正そうとすることがとても難しいことがとても伝わってきた。真実は伝わらない、努力を傾けないと伝わらない、真実を伝えることが夢だという言葉が哀しさを深くさせる。最後の、子どもたちが、自分もみんなと同じように大事な存在だと気づいたという言葉が印象的だ。笑顔が素敵で、前向きに生きようとする子どもたちのハツラツとした様子が目に浮かび、この悲しい物語の最後で、少しホッとさせてくれる。ぜひ読むべき作品である。隣の韓国であった事件ではなく、日本でも起こりそうな話しである。最後に、翻訳は拉致被害者である蓮池薫さんがされている。とても綺麗な翻訳で情景が伝わってきて読みやすい。

  • 惨い話だった。権力を嵩にきて田舎町の身体障害者の学校で行われてきた鬼畜のような校長達。実話に基づいての小説だというから驚きだ。韓国の人の名前が似てるので少し読みにくい所があったが憤りを感じながら読んだ

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