作品紹介・あらすじ
海や星や太陽に抱かれ、いつも幸せに満ち溢れていた。あの「船」が来るまで-。大自然の中で暮らす姉と弟、その家族のひかり輝く愛を描く。
感想・レビュー・書評
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考えることが何もなくなると、ぼくはただ、空気がからだを洗い流していくにまかせていた。ぼくはまた、暗やみになった。浜辺に寄せる波のように、口から出たり入ったりする自分の息づかいに耳をすませていた。一107pより
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文明がないから際立つ真理。自然と家族と姉弟愛。
文明が発達していない海辺の地。
その土地では、特徴で名前が決まる。
主人公はそこで暮らす「朝の少女」と「星の子」。
朝と太陽が好きな、誰より早起きの多感な少女と、夜と星の好きで夜更かしばかりするやんちゃな弟。
物語は、章毎に2人の視点で入れ替わりながら進む。
性質の違いから、最初は互いに煙たがる姉弟も、
さまざまな出来事を通して自然や家族、隣人や自分を見つめ、知り、学び、互いの大事さについて気付きながら瑞瑞しく成長していく。
姉弟の父の教えには「この世の何に対しても礼儀正しく振る舞わなければいけない」とある。
ラストシーン、出来事を通してその教えを胸に刻んだ「朝の少女」が、全てに真摯に明るく向き合おうと心に決めたとき、よそからの来訪者たちと出会う。
来訪者は、ひどく太って、見慣れない衣装を着、船を不器用に漕いでいる。
彼らを見て「朝の少女」は、きっと遅れた島から来た人々に違いないけれど、失礼にならないように迎えよう、きっと新しい素晴らしい友情が生まれるはずだと希望に満ちて、来訪者たちを歓迎すべく、村のみんなに知らせに帰る。
本編はここでおしまい。
終始、優しい言葉に満ちた物語。
文明がないからこその人の心と生き方の真理があり、1文1文に読者自身が己を見つめなおさせる透明さがある。
しかし、そのすべてをひっくり返すエピローグが
「クリストファー・コロンブス」の署名のあるたった2ページの最終見開き。
"未開の地に改宗させ正すべき人々を見つけた。
疑うことも知らない無知な彼らは聖なる信仰であるキリストの教えと教育を施せば良き奴隷となることであろう、 ひとまず国に連れ帰るつもりである"
これは、アメリカ大陸原住民の話だった。
すべてはこのためか、と思うほどの対照的なエピローグ。
この後味の悪さは尋常じゃない。
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朝の少女と星の子、姉弟それぞれの成長を描いた作品。良き教師であり、良き友人でもある自然の描写が生き生きしていて良かったです。全体を通して純粋で綺麗な物語なのですが、エピローグが結構衝撃的でした。
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マイケル・ドリスの作品