旅の終わりの音楽 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900021

作品紹介・あらすじ

タイタニック号の楽団員の生涯。沈没が始まっても演奏を続けていた伝説的な彼らは、その瞬間まで、何に悩み何を喜びにしていたのか。史実と想像力が渾然一体となった希有な長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 沈むタイタニック号で最後まで演奏を続けたバンドメンバーを書いた物語。

    ただし実在の人物ではなく、全て作者の創作したキャラクターであり、タイタニック号が沈みゆく中での描写はラスト数十ページに過ぎない。
    この本の大半は、出自も生い立ちもバラバラな彼らの人生が、一つの船の上で交錯するに至るまでを描いたものである。読者は彼らの人生の終わりがどうなるかを知った上で、読み進めることになる。
    分厚さにたじろいでずっと積読していたけれど、いつのまにかロードムービーを眺めるように彼らの最後にたどり着いていた。


    訳者のあとがきが素晴らしかったので、感想の代わりにしたい。
    p589
    『ここで語られている物語はすべて夢破れて深く傷ついた男たちの物語であり、しかも彼らは偶然タイタニック号に乗り込んで悲劇的な結末を迎えることになるのだが、この小説のなかを流れる時間は重苦しくも陰惨でもなく、むしろ一種の爽やかさが、懐かしさのようなものが感じられる。
    たとえ人生に挫折しても、そしてーーあらゆる人生がそうなのだがーー最後には確実な死が待っているとしても、いや、それだからこそ、きらりと光る瞬間が、引き戻せない人生の時間がどくどく脈打っている瞬間が、このうえなく貴重な宝石のように感じられるかもしれない。』

  • 沈み行くタイタニック号で演奏を続けたという楽団員たちの物語。
    と言っても、実際の楽団員をモデルにするのではなく、完全に架空の人物たち。
    でも、タイタニック号の状況や有名な乗客などは史実に即す、という少し不思議な形式だった。
    先にカバーの書評の「ヨーロッパの没落に重ねられている」というのを読んでいたので、なるほどそういうことかと思ったけれど、読んでいなかったらちょっと私にはまとめ切れなかったな…。
    タイタニック号の名前の由来を神話から説明する場面が印象的だったのだけど、今作自体も神話に似た手触りだった。

  • 【展示用コメント】
     あの名作映画クライマックスのもうひとつの物語

    【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2001188232&key=B154510066708940&start=1&srmode=0&srmode=0#

  • 新潮クレストのたぶん創刊ラインナップ、その中でも一番売れてた気がする。まだタイタニックブームもちょっと引きずってた頃やったかな。そのうち読もう、文庫落ちしたら読もうと思ってたら文庫落ちしないまま出版社品切れてたのを古本で発見。
    沈んでいくタイタニックの中で最後まで演奏してた楽団の話は聞いたことあって、てっきりその最後の演奏の話かと思って読んでたら、楽団員各々が楽団にたどり着くまでの話やった。「旅の終わりの音楽」の話やなくて「旅の終わりの音楽に至るまで」の話。タイトルにやや偽りアリかな。
    で、楽団員各々の話、けっこう読みでもあっておもしろいんだけど、基本的に当時のヨーロッパの状況にかぶせるような没落していく物語で、ちょっとかぶり気味なところもあったり。
    こちらの勝手な思い込みではあるんだけど、最後の航海、最後の演奏の部分をもっと読みたい、ってのは正直残るなぁ。

  • かなり前ですが、村上春樹さんがどこかで勧めてくれていて読みました。
    ノルウェーの作家による、タイタニック号で演奏していた楽士たちひとりひとりの人生にスポットを当てた物語。
    彼ら全員の人生は、この船に乗り合わせたことで同時に終わってしまうことを読者は知っているわけで…、最後のページを読み終えた時の切なさは今でもよく覚えています。

  • 久しぶりに読み返してみた。
    タイタニック号に乗った楽士達の事はあまりにも有名。一人一人の物語と、船の運命、あの頃のヨーロッパの背景、そして美しい織物のように小説はすすんでいく。音楽を愛する楽士達の奏でる旋律が聞こえるような本。

  • 最後の時まで演奏を続けたという、タイタニック号楽士たちの数奇な物語。船の楽士たちは、この航海のためにヨーロッパ7カ国から集まった。様々な生い立ちを持つ彼らの共通点は、音楽を愛し、この道を選んだ宿命を受け入れていること。年齢も出身も異なる彼ら一人一人が明かす、数奇な物語。

  • 哀しくて、繊細な音が聞こえそうな文体。
    邦題もきれい。個人的に大当たりだった。

  •  タイタニック号が沈みゆく中、演奏を続けた楽団員たち。その美しい伝説の枠組を借りて、書かれたのが本作である。楽団員のみが全くの創作だが、丹念に描かれるのは、むしろ、その五人が船にのりこむまでの来し方。 彼らの生涯が突然断ち切られることは、先刻承知だ。成功や幸せと縁遠い彼らの人生は、それでも人一人分が生きてきた重みと輝きを放っていて、厳粛なきもちになる。様々なものに負け、孤独で、無駄に死んでいく人生もあるってことをなかなか認めたくない私には、少なからず衝撃的だった。   ちなみに、世間でいうところの感動作ではないので、ご注意を。

  • タイタニックの映画がはやったころに、出た本ですが、そういうロマンチックな話じゃない。タイタニック号が沈む時、そこに乗っていた楽団員それぞれの人生を丁寧に書いてあります。長〜い本だけど、読み終わるのがもったいなかった。読み応えあります。

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