パリ左岸のピアノ工房 (Shinchosha CREST BOOKS)
- 新潮社 (2001年11月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900274
作品紹介・あらすじ
記憶の庭から甦る、あの音。鍵盤の感触。どこでピアノのことを忘れてしまったのだろう?愛情溢れるパリの職人に導かれ、音楽の歓びを取り戻した著者が贈る、切なくも心温まる傑作ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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ピアノを中学生まで習い、それからも趣味で弾いている程度の自分からしたら羨ましいような、深いピアノの世界を覗かせてもらった。
ピアノを愛する人との出会い、本当に羨ましさしかないし、どんな音のピアノか文章でなんとなく伝わっても、読んでいるだけではもどかしくなる。
ファツィオーリもシュティングルも、この目で見て、触ってみたい。
著者は良い師にも出会えていて、大人になってからピアノを習い直すのもいいなぁと感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もう10年以上前に読んだ。
ピアノ工房の本で、セジュールのピアノについて考え想像し、自分のピアノもセジュール(居間)にふさわしいものを選んだことを思い出す。
ピアノと言えば木材で、地球環境よ影響を受けた木そのもののことから、◯◯年製のピアノなら酸性雨の影響を受けていないなど考えたものだ。
日本のピアノ工房だって負けないものだと言いたいところだが、やはりヨーロッパの工房から学ぶことも多いしこの物語のような温かな時が流れたらと思う。 -
「そうよ、弾いてごらんなさい。蜂蜜みたいな音なんだから」
リュックのアトリエから、場所や時をも飛び越えて奏者の人生を彩る古いピアノたち…
ピアノのみならず、音楽、楽器好きにはたまらない物語ですね。
うちにもアップライトがあったんだよな…
何というか、めちゃくちゃ癒された読書時間でした。
森の匂いがした… で始まる物語、宮下奈都さんの羊と鋼の森も読みたくなってきた… -
主人公のカーハートが、パリ カルチェラタンのピアノ工房に偶々立ち寄るというセレンディピティからピアノを巡る物語は展開する。外国人や一見の客を歓迎しないフランスで、紹介者を介して経営者のリュックが初めて彼をピアノを保管・修理している店の奥の部屋に入れてくれたとき、カーハートは漸く仲間に入れてもらえる。そこでピアノを愛する人々との交流を広げ、リュックや工房を訪れる人々からピアノに関する様々な専門的な知識、ピアノの構造や製作の歴史、調律師、奏者、製作者、修理人の苦心や技巧等のピアノを巡る様々なエピソードを教わる。「ベートーヴェンでさえ十六分音符と三十二分音符のあいだの音は指定できなかった。そういう記譜法はないからだ。つまり、楽譜は近似的なものにすぎないということだ。」
音楽的素養皆無の自分にとっても、ピアノの関心を抱かせる一冊でした。 -
何かを愛するということや、身の回りの人を大切にするということ。
自分の中に主義や行動原理を持つことで、それらが叶うことがあるようにも思います。
自分の目指すものを自分が知っているということは、何かを作り続けるうえでとても大切なこと。これは私の仕事にも言えることで、最近人との会話を通して考えていたことが腑に落ちた感覚。
大切なものを持っている人は他人の大切なものも大切にできるのだと、改めて感じられる素敵な本。 -
良い本なのだろうが翻訳本特有の読み難さで集中できず、内容が頭に入らなかった。興味深い話も所々あったとは思うが再読はないかな。
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アメリカ人の著者が生活の中で偶然見つけたピアノ工房で様々な人々やピアノとの出会いがやわらかなリズムで描かれている。
ピアノの発表会が大嫌いだったという著者の意見には大いに同意する。
誰に聴かせるでもなく、ひとりピアノに向かい合い、その音色にうっとりしたり、たまに上手く弾けたりしたら小躍りしたくなるほど嬉しい、そんな音楽の楽しみ方だってあっていいじゃないか、と著者はいう。
まさに我が意を得たりだ。
この本には大仰なドラマや驚くようなどんでん返しはない。
フランス人が他人と親しくなっていくのと同じくらいゆったりとしたペースでお話もリズムを刻んでいく。
一度読みはじめたならきっとこの世界を離れたくなくなるだろう。
終わりがあるから尊いのは百も承知なれども。 -
久しぶりに心震える作品に出会ってしまいました
パリの小さな扉を開けると そこは深い深いピアノの世界_
愛情あふれるパリの職人に導かれ…
著者が少しずつ音楽の歓びをとり戻す心温まるノンフィクション
この奥深いピアノの世界(作品)を知ってしまった私は きっと幸運だと思う…
かつては私もピアノを習っていて 今ではまったく忘れきっていた私には
著者が少しずつ記憶の底から蘇る“あの音” “鍵盤の感触”に触れていることが
とても眩しくみえました
私はどこでピアノのことを忘れてしまったのだろう?
でもここで出会ったあるお方が言ってくれたのです
『いつかピアノを聴いてみたいと…』
なんというタイミング!!
そして不思議とこの作品を読みたいと手にとって地元に戻る時でもあり
ある方からの言葉とこの作品との不思議な縁を感じずにはいられませんでした
会ったこともない私のピアノを聴いてみたいだなんて…
言葉でも言い表せないくらい嬉しかった…
自分で手放したはずのピアノをもう一度 弾いてみようと思わせてくれたのは
ある方の言葉とこの作品のおかげです!!
鍵盤を押して 音を聴く_
10年以上振りに弾く自分の粗削りな演奏でさえ
ピアノの持つ多彩な音色に改めて感動しました!
この作品で特に感動したのは ピアノ職人は自分が作った痕跡を残すために
“サイン”を残すそうだ
それもピアノを分解しないと分からない場所に想いをそっとしのばせて…
グランドピアノだけでなく どんなピアノにもサインは存在するらしい…
ピアノを弾いてみて思ったことは…
もっと音楽を楽しむことって個人的なことだったのだと気づきました!
大曲が弾けるような私になりたかったわけじゃない…
私は自分が音楽に見いだした喜びを深めて
どんな曲でも 世界の感覚を広げてくれるような曲を弾きたかったのだと!
もっと自由に もっと豊かに もっと自分らしく
ピアノで自己表現したかったのかもしれない!
この感覚を取り戻させてくれて“ありがとう”_
この場をかりて優しい言葉をかけてくれた方と
そしてこの作品に感謝の気持ちを捧げたい…
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すごく面白かった。パリという芸術の都でピアノという芸術品を語る。読書の楽しさを改めて感じた本。音楽好きな人にオススメの本。本書は新潮クレストブックスというシリーズから出ていて、海外の面白い本を紹介している。このシリーズの本をもっと読みたくなった。