アンジェラの祈り (Shinchosha CREST BOOKS)

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  • Amazon.co.jp ・本 (569ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900366

感想・レビュー・書評

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  • アイルランドのリムリックでの貧困を極めた少年時代を書きつづった
    前作「アンジェラの灰」。
    悲惨な少年時代の暮らしに驚いたのですが、
    この作品はその続編にあたります。

    貧しい暮らしから逃れるように、リムリックをあとにし、
    19歳のマコートは単身ニューヨークに渡ります。
    父親はイギリスへ出稼ぎに行ったまま帰ってこず、留守を守る母親にはマコートの下に幼い弟が3人もいて思うように働けない。
    なんとか母と弟たちに人並みの暮らしをさせたくて、ニューヨーク行きを決意したのですが、
    マコートの夢は、いつかみんなをニューヨークへ呼び寄せて
    楽しく暮らすことへまで、大きくなっていました。

    だが、現実は厳しい。
    中学しかでていないマコートですから、働くところを探すのも大変です。
    大都会に迷い込んだ、アイルランド人のこせがれ。
    絶え間なく襲う劣等感と、世間知らずからくる当て外れの日々。
    そんななか、ビルの清掃夫や倉庫作業員、3年間の軍隊勤務など
    様々な職を転々としながら、勉学への意欲もまし、ついには働きながら大学へ通い出し、高校の英語の教師にまでなります。

    そこで初めて、念願の母アンジェラをニューヨークへ呼び寄せることがやっとできました。
    おいかけるように弟たちもニューヨークへ来て、一族はそれぞれに結婚し、幸せな家庭を気づきます。

    母アンジェラは73歳でその生涯をとじます。
    そしてそのあと、1985年には、
    故郷にかえっていた実父もこの世をさりました。

    肉親だけにわけもなくその言動が腹立たしくなる時もあります。
    マコートはいつも母に対して、
    貧乏からぬけだせないことを腹立たしく思っていました。
    でもそれだけなく、子供時代の自分たちを
    必死で育て上げた苦労も知っていました。
    だからこそ、母を見送ったあと、
    自分の回想記を賭けたのだと思います。
    それも、悲惨な子供時代なのに、
    ユーモラスな文章ともとれる、よみやすい作品で・・・。

    前作のあの頼りない子供がこんなになったのかと、驚きました。
    人種の気位もあるでしょうが、
    貧乏から這い上がったマコートの意思の強さに拍手喝采です。

  • 「アンジェラの灰」の続編となる自伝もの。フランクが米国に渡ってからの奮闘を描いている。相変わらずギリギリの生活を送ってはいるが、アイルランド時代のような死との隣合わせではなく、少し余裕が感じられる。

    また、作文をきっかけにして大学のクラスで注目されたり、後年先生になってから、生徒に作文を書かせる場面は、本書の白眉の1つ。この人は本当に書くことに助けられてきたのだなあと思った。

  • 灰の意味が分かった。

  • アンジェラの灰の続巻、と言えばよいのでしょうか?灰がアイルランドでの幼少時代でこちらが著者がNYに出てきた青年期から、のお話です。
    文章のテンポが良くてついつい後ちょっと…と読んでしまいます。多分訳も上手なんだと思います。

    アイルランド系アメリカ人かあ…と考えて確かにアイリッシュパブってどこの町にもあったなあ…とか思い出しました。まあ自分がたまたま縁のある町にいたのかも知れませんが。聖パトリックデイは皆が緑色の服や何かをつけているのに驚いたものです。(懐かしい…)日本人、と言うか自分はあまり宗教心が無いのでこの作者のおっしゃるような原罪とか罪とか地獄の観念はいまひとつピンと来ないのですが。大体カトリックとプロテスタントってこんなに隔たりがあるんだ~と感心しているくらいですので… 同じ民族で同じキリスト教なのに…

    両親への思慕と複雑な思い。そんなに大切なのに素直に表現できないのは家族としての時間や経験が色々あるからなんだろうな、と思います。ただ自分はあんなに反発していた父親と同じ轍を踏むことはないんじゃないの?と随所で思いました。お母さんの老後の孤独は読んでいてさびしいですね。

    こちらのほうがアンジェラの灰と言うタイトルにあってる気がしますけれども。幼年期の本のほうが個人的には自分は好きです。

  • サローヤンのヒューマンコメディを思い出させる、私の好きなタイプの物語です。

  • [ 内容 ]
    1949年10月、19歳のマコートは、単身夢の地ニューヨークに降り立った。
    が、彼を待っていたのは、劣等感とあてはずれの日々だった―様々な職を経た後、とうとう高校の教師となって居場所を得たマコートが、母アンジェラを呼びよせ、遂にその灰を故郷に撒くまでの波乱万丈を、前作に劣らぬ名人級の筆に描く『アンジェラの灰』待望の完結編。

    [ 目次 ]


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    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「アンジェラの灰」で最後にアメリカに向かったマコート少年がその後いかにしてアメリカで生き抜いて教師になったのか、なるほどよくわかってスッキリ。アメリカに呼び寄せたお母さんの頑固ぶりがすごい。嫁は大変だ。

  • 親父はろくでなしなのに、よく母親見捨てて好き勝手生きるような男にならなかったもんだと感心してしまった。

  • アイルランドでの貧しい家族との生活を感動的筆致で描いた『アンジャラの灰』の続編にして完結版が『アンジェラの祈り』。

    原作『アンジェラの灰』でピュリッツァー賞を受賞、ベストセラーを記録し、映画化され、大きな反響を得たフランク・マコートのニューヨーク渡航以後を描いたのが本書である。
    読み手を一気に引き込む語り口調のすばらしさと、悲しくも逞しいアイルランド移民の苦労を重ねた一家族の物語がここに完結する。

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著者プロフィール

1930年、アイルランド移民の長男としてニューヨークに生まれる。4歳の時アイルランド南西部の街、リムリックに移るが、父親が稼いだ金を全て酒に使うなど、一家は極貧の生活を送った。19歳で単身ニューヨークに渡り、さまざまな職業に就いた後、高校教師となる。30年ほどニューヨークのいくつかの高校で教鞭を取り、1987年に退職。1996年に刊行された、リムリックの幼少年時代の回想録『アンジェラの灰』は、ピューリッツァー賞、全米批評家協会賞などを受賞、ベストセラーとなり、アラン・パーカー監督により映画化もされた。続編に『アンジェラの祈り』(1999)がある。2009年没。

「2019年 『教師人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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