女が嘘をつくとき (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900953

作品紹介・あらすじ

お人よしで思いやりがあり頭の良い女性ジェーニャ。離婚や再婚を経験し息子を育てながら働く彼女の恋愛・仕事・成長を縦糸に、人生のその時々に出会った女たちが語る「嘘の話」を横糸に織りなされる物語。-夏の別荘で毎晩ポートワインを飲みながら波瀾万丈の辛い人生を語るアイリーン。ところがその話はほとんど嘘で、彼女は結婚したことも子供を亡くしたこともない…。真実を知って打ちのめされるジェーニャ。しかし不幸のどん底に落ちた彼女を絶望から立ち上がらせたのも、無神経だが信心深い女の「嘘かもしれない話」だった。6篇からなる連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 6編の物語からなる連作短編集。主人公は、離婚や再婚を経験し子どもを育てながら働く、有能な女性ジェーニャ。彼女の人生を縦糸に、出会った女たちが語る「嘘の物語」を横糸に描かれる。

    誰かを騙す嘘ではなく、虚構の世界によって心を守るための嘘。賛同はできなくとも、生きていく救いや支えにもなるものだとおもった。

    「筋書きの終わり」
    リャーリャという13歳の女の子の嘘。このぐらいの年ごろ、こういう女の子がいたのを思い出した。

    「自然現象」
    かわいそうなマーシュ。先生の嘘によって傷ついてしまったけれど、二人の過ごした時間は、それでも、かけがえのないものだったのではないだろうか。

  • 嘘という名の虚構を語って、鬱屈とした日常から抜け出す女たちのお話。序章が、オデュッセウスとペネロペの対比に見る男女の嘘のつき方の違いの考察になっていて、饒舌な語りが面白く引き込まれた。

    私は嘘がつけない(大人になって嘘ではない範囲で言う必要がないことは言わない術は身につけたけど、嘘はやっぱりつけない)真面目なタイプなんだけど、「嘘がつける」ってなんて想像・創造力豊かなことなんだろう!となんだか感心してしまった。

    主人公のジェーニャが人生に悩んだとき、本を手に取る様子もさらっと描かれていて、共感で親近感を持った。
    嘘や虚構や物語の、その癒しの力に助けられながら私たちは生きているよね。

  • 図書館のロシアのコーナーで気になり手に取った1冊。
    6話の短編からなり、各話に嘘をつく女が必ず出てくる。そして全てにジェーニャという女性が関与している。

    当時のソ連情勢と共に毎話ジェーニャの置かれる状況は変化しており、メインとなる女性に対するジェーニャの態度も変化していた。読後感は決して良くなく、非常に考えさせられたが面白かったと感じる。
    想像以上に私にハマった1冊だった。
    この女たちの嘘は必要悪。救いなのだ。


    ソ連~ロシアには必要悪のようなテーマが多いような気がする。近代のこの国の歴史を思えば当たり前なのかもしれない。

  • 第4作と第6作が好き。

    ロシア語の「元気?」の答えには詳しい近況報告を前提にしてるというのを今更ですが知りました。

    登場人物の背景に前半あまりついていけなかった。全部読んでからもう一度読み進めました。

  • 記録

  • 読まなきゃいけない作家が増えた。
    女を真っ向勝負で書いてくる作家で、上手くてうなったのはアリス・マンローに続いて二人目。

    国に頼れない、男に頼れない、ロシア女の強さと孤独がつまった全6編。

    タイトル通り女たちが嘘をつく。
    本当のような嘘を。
    理由なんてない、いやあるかもしれないけれど、一言で語れるようなものではない。
    「なぜ?」と考えてしまうタイプの人はやめよう。
    女とはこういう生き物なのだから。

    ディアナ
    ユーラ兄さん
    筋書きの終わり
    自然現象
    幸せなケース
    生きる術

  • あらすじを言ってしまえばいたって簡単、確たる理由もなく嘘をつく女性達に出会う主人公(なかなかのお人好し!)の話…。だけど、味わい深い上質な文章で非常に楽しめる。

  • 『星とヒトデを縫いつける/海と母とを縫いつける』ー『縫いつける』

    堀口大學の「人間の歌」の一節が、無意識に口を衝いて出る。連作短篇という程に一つひとつの物語が互いに呼応している訳ではない。それでも一本の糸がそれらをひとつの流れに縫い合わせている。それは、タペストリーに例える程、大袈裟なものではない。その物語とこの物語の間には、語られはしないが確かにひと続きの時間の流れが存在しているのだ、そういう感覚を生み出すものがあるという感覚、細い一本の縫い糸のようなものだ。もちろんそれは、ジェーニャ、という登場人物の果たす役割だ。

    リュドミラ・ウリツカヤを読むのはソーネチカ以来二冊目だけれど、この作家の感情の起伏を抑えたような筆致に惹かれていることを、改めて自覚しながら読む。抑えた、という言葉は冷静さを伴うニュアンスも呼び起こすけれど、リュドミラ・ウリツカヤの場合、そこには感情の昂まりを事前に察知して無理矢理に圧し殺しているかのような気配がある。そのことと、かつて為政者によって一つの国として纏め上げられていた土地に棲む人々の辿って来た歴史を重ねて見るのは余りに単純に過ぎるだろうけれど。

    こんな小説を読むと、自分の棲むこの国が良くも悪くも平板な世界に見えてしまって閉口する。もちろん、ここにも格差はあり、非人道的な事は起きているけれど、太平洋の向こう側のひと達が熱狂するようなチェンジもない代わりに、どうしようもない程に付き合い難いこの世でもない。そこそこに自由があり、物は街に溢れ、世界の中でも指折りに電気を使うことができ、そしてこれこそが決定的だと思うが、大っぴらに文句を言うこともできる。気分が高揚しても、構うことなく解放できる。それが、どこでも許される訳ではないことに、ほんの少し思い至るだけで、世界の深さ、そして暗さの度合いがいきなり増し始める。

    居心地の悪さを、決して露悪的になることなく感じつつ、手探りで世界のぬめりと冷たさを感じ取りながら頁を繰る。嘘が、必ずしも愉快ではないこの世をくぐり抜けて行くための方便であることを確認しつつ。あの人の人生やこの人の人生を、白い丈夫な糸で繋ぎ止めつつ。しんしんと降り積もる雪の下に豊穣な大地が眠っているのだと信じつつ。

  • 内容さながら主人公の心の声と毒舌っぷりが面白い。賢い人だからできるウイットに富んだつっこみがたまらん!
    ついついついてしまう思いつきの嘘にこそ憧れ望みがでるのだろうか。
    責められない悲しい嘘もあるということ。けど嘘をついてる本人は悲しいとは思っておらず楽しんでるということ。んー。かなりすき。

  • 連作短編6編。
    ジェーニャを聞き手に物語られる5編のたわいない女の嘘と6編目に綴られた衝撃の物語。人の心の中は分からないし見えているもの言葉になったものだけではなく、語られないものが静かに立ち上がってくる6編目に、これまでの5編が溶けてきて、深い感動を覚えました。
    そして、最初のオルフェウスのことを書いた『序』もとても面白かったです。

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