海と山のオムレツ (新潮クレスト・ブックス)

  • 新潮社
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901684

感想・レビュー・書評

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  • うーん。美味しそう!
    知らない土地に、知らない料理がたくさん。
    行ってみたいし、食べてみたい!

  • 美味しそうな料理が次から次へと幸せな匂いと共にせまってくるような感じ。料理を通して筆者の幼少期からの思い出などがその土地や家族・多くの出会った人たちを語っている。読んでいてとても気持ちよかった。 

  • おいしい小説。特に辛いもの(唐辛子)好きには堪らない。

    南イタリア・カラブリア出身の著者(1954年生まれ)
    の自伝的短編集。様々な人に出会って成長していく主人公の淡々とした成長物語。ドラマティックなことは
    そんなに起こらないけれど読んでいて心が落ち着く。

    父親がドイツに出稼ぎに行き寂しい思いをしたり
    友達と悪ふざけをしたり、少し年上の友人から
    書物を借りたり、ありふれた体験とともにあるのは
    その土地の材料で母親たちが作ってくれる料理。

    それがすごくおいしそう!料理の描写は個人的に
    江國香織さんを彷彿とさせました。

    1960年代のイタリアの貧しい村では
    父親たちはドイツに出稼ぎに行き家族でドイツに
    移住することもある、ということを知りました。

  • 学生の頃、シネスイッチ銀座とかbunkamuraルシネマとかでこういう映画よく観てたなあ。南仏プロヴァンス的な?
    ワインや料理、食材の描写からあふれる多幸感のかげで、貧しさゆえに家族いっしょに暮らせない悲しみとか、故郷を離れて暮らす欠落感とか、人生の苦さがそこはかとなく漂う。これはおじいさんの回想(エッセイではなく、自伝的短篇集らしい)だから、今ある幸せがはかないものだという感覚が後付けされているのか、それとも、人は子どもの頃から人生につきまとう喪失の予感とともに生きているのか。
    南イタリアのアルバレシュ共同体(アルバニア移民によって築かれ、少数言語アルバレシュ語を話す。唐辛子を使った激辛な味付けが好きだったりするようだ)についてはまったく知らなかったので、興味深かった。
    いいにおいのジャガイモだと思ったらトリュフだった章、お父さんとスイカを売る章、お酒の弱い友だちを酔わせて怖い思いをする章あたりが好き。最後の章が最初の章とまあるくつながっているのも良かった。

  • どれもこれも美味しそうで、生唾物です。温かさや匂いや味が、著者の思い出と共に伝わってくる。美味しそうで幸せそうで、あまりにもいい話で、まるで童話のようだった。

  • 南イタリアのカラブリア州にある海沿いの村で育った「僕」は、その昔オスマン帝国の圧政を逃れイタリアへ移住したアルベリア人(アルバレシュ)の末裔。独自の言語と食文化を持ち、唐辛子をこよなく愛する人びとの誇りと饗宴の日々をノスタルジックに述懐した自伝的小説。


    本書でアルバレシュの人びとを初めて知った。イタリアへ移ったのが15〜18世紀だから20世紀後半にはすでに〈移民〉という存在ではないのだが、彼らが集って誇りを確かめ合う様子は高野秀行『移民の宴』における在日外国人の姿に重なって見える。
    そして共同体を繋ぐのが食だ。とあるカップルのために南イタリアに点在するアルバレシュの人びとが寄り集まり婚礼パーティを開いたとき、本来数世紀前に別れたっきりでバラバラなはずの参加者たちを〈故郷の味〉でまとめあげたのは「アルベリアのシェフ」だった。饗宴に並ぶのはサルデッラ、ンドゥイヤ、シュトリーデラットと初めて聞く料理ばかりだが、説明を読むと今すぐ食べさせてくれ!と叫びたくなる。
    「アルベリアのシェフ」はとにかく味覚が優れていたようで、本職の料理人ではないのに「僕」の人生の折々で大事な一皿をプロデュースしてくれる。後半になると、長いあいだ外国へ出稼ぎにいっていた反動で村に定住してからは保守的で頑固になってしまった父と、いつでもノスタルジーを払いのけて軽やかに皮肉を聞かせてくれる「アルベリアのシェフ」は、「僕」にとっての"二人の父"として対比されるようになる。
    父に負けないくらい故郷の味に愛着のある「僕」だが、やがてドイツ人女性と結婚する。「僕」はどうやら料理をしないようなので、アルバレシュの味を再現・継承するのは日本食も作るほど料理好きな妻の役目になっているのだろうか。義母のミートボールパスタにドイツ育ちの感性が加わって、新しい味を生みだしているのだろうか。
    記憶のなかで洗い清められ、不純物が取り除かれた美しき「ふるさと」を綴ったノスタルジックなメモワール。ツルツルとストレスフリーに読めるのが作りごとめいているが、たまにはこういうのもいい。

  • 食事って良いなあと思わせてくれる本だった。筆者が家族や友人と食事を共にする場面は、いつも楽しそうである。料理が美味しいというのはもちろんの事だが、何よりこの人達と一緒にいる事ができて幸せという感情が伝わってくる。
    タイトルにもなっている「海と山のオムレツ」の話よりは、郷里の味が恋しいという筆者に対して、アルベリアのシェフが「ふんっ」と一蹴した話が1番好きだ。「故郷の味を感じる舌はもう育っているのだから、新しい味覚を足す事に何の後悔や躊躇があるだろうか」という考えは新鮮で、面白かった。
    あと、私の知っているイタリア料理(ピザやパスタ)が全然出てこない事も面白かった。パスタは出てきた方だけど、それよりは唐辛子の描写が多く、意外だった。

  • 知らない食材と料理を想像しつつ読むのが面白かった。食べるのが好きだけど、料理のエッセイって読んだことなかったな。

  • 作者のカルミネ・アバーテさんが
    子供の頃からいかに美味しい料理とめぐり逢ってきたか。

    料理の描写や日本では聞かない料理法だったり
    料理名だったり、とにかく美味しそう!の連続。

    料理を愛する父や故郷の人びと、
    そしてその父を愛し、美味しい料理を作ってくれる母と祖母。
    たしかに舌が肥えるよなあと思った。

    そして、作者が出会ってきた料理をこうして本にし、
    その本を手に取り、読めたことを幸せだなと思った。

    食べてみたいなあ、唐辛子がたっぷり入ったパスタ!

  •  本屋でピックアップした新潮クレストブックスの冊子に載っていてオモシロそうだったので読んだ。(最近食べ物の本ばかり読んでいる気がする…)今井麗氏の鮮やかすぎる表紙からも伝わってくるように最高な食事の本だった。こないだ読んだ『ピッツァ職人』もあいまって猛烈にイタリアに行きたい…
     短編小説集となっているが実態としては私小説でほぼ実話と思われる。著者が育ったイタリアでの食事を中心にそれと付随する記憶をイタリア料理のコース仕立ての構成で綴っている。イタリア郷土料理の旨そう過ぎる描写の連発に読めば読むほどお腹がどんどん空いてくる飯テロっぷりがハンパない。小さな子どもが思春期を経て大人になる過程を食を通じて描いていくという構成が新鮮だった。全体にポジティブなトーンが本全体を支配しており「美味しい食事があればすべてOK」とよく言われるように食べることは幸福に直結することも実感した。
     著者は故郷が大好きで、その料理を含む風土を愛していることがビシバシ伝わってくる。そんな彼に対してキーパーソンであるアルベリアのシェフことフランクの存在が印象的だった。彼は故郷の料理を得意としているものの、それに縛られるのではなく自分の家族と未来を作っていくことを促しているから。いつまでも変わらない味を求めるのと同じくらい自分たちで新たな味を作っていくことの大切さ。実際、彼のパートナーはイタリア人だったり仕事の都合でイタリア、ドイツを転々としておりこれを実践していた。料理に限らず普遍的な真理だなと思うし自分もそうありたい。以下フランクのセリフを引用する。

    *どこへ行っても、その土地特有の味というものがある。いくつもの異なる土地で暮らすうちに、きみの舌にはものすごく豊かな味覚が養われるだろうよ。大切なのは、自分たちの土地の味に、新たな味を加えていくことだ。根っこの部分に郷里の味があるかぎり、別の場所で暮らしていても、その土くれの香りは失われないはずだ。*

     同じくクレストブックスで既に何冊か長編小説がリリースされているようなので、そちらも読んでみたい。

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