唐招提寺への道 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106001710

感想・レビュー・書評

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  • 時が過ぎさっいて行くのでは無く、私たちが過ぎ去っていくのである。時は永劫に不変不動であり、私たちを含めて、この世のすべてのものが変化し流動して行く。永久に変わらぬものは師であり、うつろいかわるものこそ生であるとは、日頃の私の感懐である。

  • かなり時間をかけてしまった。唐招提寺に訪問して魅了されたのが2022年6月だから、買ってから2年もかかってしまった。よくない。
    とても面白い。
    まず鑑真和上や唐招提寺について、そして奈良の街や、大和路(室生や桜井、飛鳥や吉野)についての描写と内省、唐招提寺の障壁画を描くことになって、それから障壁画のイメージをつかむために日本全国の海と山をめぐる。そしてそれらをもとに障壁画を描いていく。ざっくりいうと以上だが、それにしても東山氏の文化の・見識の深さ。和歌や仏像、古典、文学、寺社仏閣建築それらについてここまでポンポンと出る人がどれだけいるか。
    芸術は深いところで、美という観点で、心を動かすという観点で、見えないくらいまでに深いところでつながっているのであって、違う畑だから、みたいに、おれみたいに知識の浅いやつがどれだけいるか。戒めになる。
    筆者は1909年生まれであり、芸大のエリートとしてベルリンに留学するも、戦争や困窮などで日の目を浴びるのには戦後のことだった。
    それは苦難のみちだったが、そこまでに見たもの、高山の光景などは、氏の「日本の美しさ」に対する眼を深めるものだった。
    自然描写にからめて引用される万葉集の歌。それらが思い出される景色と、その変わらないものをうまくつかんだ歌。その見事さをつなげる東山氏。
    まだまだ文化のかみ砕きがおれには足りない。
    文中にもあった、「遍歴と帰郷の揺れ動き、外と内に向かった二つの振り子」が東山氏の芸術の基礎構造になっている、というこの遍歴の様子は、非常にマネしたくなる。そして氏はその振り子のような動きを、自然に、宿命というような、それを「道」と言っている。
    そして障壁画の制作過程において、いかに準備に時間をかけるか。焦らずに、けっして遠回りではなく、じっとこらえながら、丁寧に準備を重ねていくのである。

    実際の障壁画をぜひとも見てみたいものだ。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN03547530

  • 才能に溢れ、謙虚で努力家で、思慮深く文才もある…笑顔の素敵な奥様もいて、長生きをされた。
    鑑真和上の一生と、最高のレクイエムを成し遂げた東山魁夷の一生がなんか重なってみえる。

    御影堂で是非、障壁画を観たいと、強く思った。

  • 東山さんは、画家であり文学者。 山雲濤声は日本の景色の凝縮。 この一枚のためにいくつもの絵が描かれていたんですね。 日本の美をもっと知りたい。 「時が過ぎ去って行くのでは無く、私達から過ぎ去って行くのである。」 東山さんの真摯さと強さにうたれました。 山雲濤声、実物を見るのが楽しみ。

  • 東山魁夷画伯が鑑真や唐招提寺に対する思いについて書いた著作。

    個人的にはあたりの景色を視線で追って適切に描写する絵画のような文書に脱帽。

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著者プロフィール

1908年横浜に生まれる。31年東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科卒業。33-35年ドイツ留学。69年文化勲章受章。74年日展理事長。75年唐招提寺御影堂障壁画「山雲・濤声」82年唐招提寺全障壁画完成。99年死去(90歳)。

「2022年 『東山魁夷アートカレンダー 2023年版 <大判>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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