サラダ野菜の植物史 新潮選書

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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035371

感想・レビュー・書評

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  • 八百屋さんやスーパーに行けばキャベツでも大根でもネギでも簡単に手に入る。ぼくらはそれを当たり前だと思っているが、考えてみるとこれは大したことではないか。キャベツなんか植物としては変だし(内側の葉っぱは光合成できないじゃん)、大根もネギもああまでおいしく、料理しやすく出来上がっている必要はないんじゃないかと思う。農耕を始めたのが人類が地球で幅を利かせるようになるきっかけだったと言われるが、農家と八百屋さんは人類の最大の武器を今に伝えているわけだ。
    本書は野菜の中でも火を通さずに食べられる(つまり燃料の節約になる)サラダ野菜に焦点を当てて、その来歴や植物の中での立ち位置(分類)などについて語っている。サラダにこだわっている目的がよくわからないけど、日頃なじんでいる野菜のあれこれを知ることができるのは単純に面白い。ただ、せっかくのこういう本なのだから、写真をつけてほしかった。アーティチョークやカキチシャといった馴染みのない野菜を文章で説明されてもピンと来ないのだ。

  • 人類が最初に食べたのは、動物が避けた苦味の強い野草。サラダ菜は早くも古代エジプトで栽培されていた。海辺生まれのキャベツは、日差しや乾燥に耐えるために葉が厚い。橙色のニンジンが登場するのは十八世紀。トマトは最初、毒草扱い…野菜たちはどこで生まれ、どのようにして世界各地に広まり、生食されるようになったのか。サラダ野菜の歴史を辿る。
    (2004年)
    — 目次 —
    第1章 自然史としての植物史
    第2章 サラダとは
    第3章 どんな植物でもサラダになるのか
    第4章 キク科のサラダ植物
    第5章 セリ科のサラダ植物
    第6章 アブラナ科のサラダ植物
    第7章 ウリ科のサラダ植物
    第8章 ユリ科のサラダ植物
    第9章 ナス科のサラダ植物
    第10章 その他のサラダ植物

  •  トリビア的な興味で読み始めても、読み進めるに従って「植物史」についてひろい知識を得られるようになっているお得な本。
     まず、野菜の分類、というのが新鮮。たとえばコリアンダーとニンジンとセロリとパセリが、おなじセリ科に属していて、似たような葉っぱの形状だなんてことがわかるおもしろさ。スーパーで見かける野菜は、食品として価値のあるところ以外は切り落とされているから分かりづらいけれど、野菜ってのは根っこがあって葉があって花があるものなんだよなぁと、当たり前のことが思い出される。
    ジャガイモやトマト、トウガラシといったナス科の植物が、そろってアメリカ大陸原産であることも興味深い。それがどのようにヨーロッパやアジアに広まっていったかなど、まさに「植物史」といった知識だろう。
     もちろん、トリビアとしても盛りだくさん。
    ・マリー・アントワネットはジャガイモの花をドレスに飾ってパーティに出ていた
    ・ホウレンソウは「小数点を打ち間違えた」ため、60年以上にわたって鉄分量10倍増だった
    ・アスパラガスは1日で7cm伸びて、放っておくと2mまで伸びる
     などなど。ただ、情報というのは、コマ切れで収集しても身に付かないもの。(だから、『トリビアの泉』は大好きなエンタテインメントだけど、情報としての価値は低いと思う) この本がいいのは、そういう「情報」をタテヨコにつなげて得られるところ。著者の深い見識が伺える1冊。

    ……以上、2004年の初読での感想ですが、いまでもそんなに変わってないと思います。

  • サラダは、和食なのか?
    日本人は、サカナを、刺身としてたべる。
    いわゆる 生食である。
    しかし、野菜を生で食べるという食習慣は、
    以外と最近なのである。
    それは、栽培上において、清浄であるとはいえなかった。
    そして、一番の問題は、寄生虫の心配があったのだ。

    自然史としての植物史
    人間は、なぜ苦いものを食べたのか?
    という考察が面白かった。
    草食動物は、有毒や苦いものを食べなかったからだ。
    その残りを食べていた。草食中心から肉食に転換したのは、
    今から100万年から200万年前 くらいと言える。

    サラダとなる野菜を、科別に区別したのは、編集力がある。
    しかし、野菜の説明はなぜ、こんなに面白くないのだろう。
    自生地、栽培状況と歴史、〈学名〉の言われ、日本への伝来、
    という同じパターンで、読むにはつかれる。
    しかし、そういう面白くない文書も、
    最後まで、よく読めるようになった。

    読書の忍耐力を培うには、いい本である。

  • 人類が最初に食べたのは、動物が食べ残した苦味の強い野草。サラダ菜は
    早くも古代エジプトで栽培されていた。橙色のニンジンが登場するのは十八
    世紀。トマトは初めは毒草扱い、二百年間も観賞用だった……野菜たちは
    どこで生まれ、どのようにして世界各地に広まり、生食されるようになったの
    か、サラダ野菜の歴史を辿る。

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著者プロフィール

おおば・ひであき 1943年東京都生まれ。植物学者。東京大学名誉教授、東京大学総合研究博物館特招研究員。専門は植物分類学、植物文化史。理学博士。著書に『秘境・崑崙を行く―極限の植物を求めてー』『森を読む』『植物学と植物画』『ヒマラヤを越えた花々』『はじめての植物学 』『大場秀章著作選-植物学史・植物文化史』、編著に『日本植物研究の歴史-小石川植物園三〇〇年の歩み―』東京大学総合研究博物館など多数。

「2023年 『バラの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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