がん検診の大罪 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036132

作品紹介・あらすじ

「早期発見・早期治療」は大間違い-がん検診の有効性を示す根拠は存在しない。降圧剤、糖尿病・高脂血症治療薬の長期服用がもたらす、思いもよらぬ副作用。そして、国民の過半数が異常と判定されかねない、メタボ健診の不可解な基準値…。統計データの詳細な分析によって、現代医療の陥穽を警告し、予防医学の立場から、本当の医療とは何かを問う。

感想・レビュー・書評

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  • はじめに臨床大規模研究の注意点を書いて言います。きちんとした前向き研究でないと間違ったデータや解釈がされてしまうそうです。
    こういう目で見るとメタボ検診の診断基準、すべての降圧剤の効果、肺がん検診の有効性に関しては疑問だそうです。
    岡田先生の言いたことは、日本は病気の治療にばかり力を入れていますがもっと予防医学の啓蒙と教育に力を入れるべきだということです。

  • 統計数字の正しい読み取り方を指南しながら、
    がん検診は受けるとかえって危険だという。

    ・小児がん検診の唐突な中止の背景
      不要な検査でリスクが高まる
    ・肺がん検診の怪
      検査をまめに受けていたグループで発症率が高くなる
      古いデータ?
    ・レントゲン検査の害
      がんの3.2%がレントゲンによるもの
    ・危ない検査
      胃のバリウム検査

    国が奨励するがん検診には、有効性を示す根拠がまったく存在しない。
    長期間服用して、総死亡を減少させる効果が確認されている抗がん剤はほとんど存在しない。
    有効性が確認されているもの
    ・TS-1,タモキシフェン

    著者は検査を受けるのはやめているとのこと。

  • 健康で長生きするためにとても重要なことが書いてあります。
    もちろん、健康診断は受けないことが大事なのです(具体的には本をお読みください)が、そのほかにも、
    ・少し肥満である(BMI24前後=177cmで75kg)
    ・運動をする
    ・7時間睡眠(それ以上でも以下でもなく)
    ・バランスのとれた食事
    ・LDLコレステロールは低いほどいい(多い食品は卵の黄味、からすみ、フォアグラ、あん肝、イクラ、ウナギの肝、かずのこ、バター、肉類とくに若鶏の皮つきもも肉)
    ・塩分ひかえめ(即席ラーメン1食分が1日の上限)
    ・野菜(茶わん1.5杯)、果物(リンゴ中なら1個以上)を多く
    ・タバコは×
    などが寿命に関係しているとか。

    うーん、こう書くとあたりまえの項目(とくに後半)が多いですが、本全体を通して、意外な話が多いです。
    たとえば、AEDというのが流行ってあちこちに設置されていますが、あれの普及は、延命には統計的に役に立っていないとか。
    今の医療は、かなりヒドいことになっています。
    健康診断は、健康に悪影響を及ぼすものが多い検査だそうです。
    自分の健康は自分で守りたい人は、ぜひ読んでください。

    [08.10.3]

  • 薬にせよ、検診にせよ、手術にせよ、その目的とするところには直接的な効果があるかもしれないけれども、副作用も多少なりともあることも多く、結果として長期かつ統計的に問題のない手法での調査で総死亡率がどの程度下がるのかを見るべきだというのが本書のベースロジックです。また投薬や検診の効果を測る統計調査の手法にも多くの疑問が呈されています。(例えば私の職場のコーヒー自販機に「コーヒーを毎日飲む人は肝ガンのリスクがXX%下がることが判明」とありますが、まずこの数字が出た統計調査の方法にも疑問があるでしょうし、そもそも肝ガンのリスクが減っても他のリスク要因が上がるので総死亡率が下がるわけでは全然ない、などというようなことです)

    著者の基準で過去の論文などを見たところ、ほとんどの生活習慣病の薬や早期がん発見の検診で総死亡に有意な差がない、という意外な結論になるということです。特に、健康に問題がない人も一律に検査するやり方の検診では、例えば肺がん検査や胃がん検査のレントゲンは却って悪い結果になるのでは、という指摘しています。バリウムまで飲んで、そういうことなの?、と思ってしまいます。また毎年の検診で血液検査の腫瘍マーカーのチェックをしているのですが、次からどうするか考えてしまいます。昨年は偽陽性になって再検査させられましたし。

    ただ、著者の意見にも異論反論はあって、片面の意見として捉えるのがよいのかもしれませんね。そもそも総死亡(しかも年数には調査の関係で限度もある)を金科玉条として見るのが正しいのかどうかも意見の分かれるところでしょう。

    ただここまで懐疑的な著者が自信を持って、高コレステロール血症治療薬のスタチン系だけは総死亡が減少することが証明されている、というのは覚えておきたいものです。

    ---
    がんも含めた生活習慣病に関しては、結局次のような境地に達するべきでしょうか。

    "変えることができるものについては、それを変える勇気を(=生活習慣等)、
    変えることのできないものについては受け入れる冷静さを(=遺伝や体質や運、等)、
    そして、それら二つを見分ける知恵をわれらに与えたまえ(=で結局どこまで薬や医療に頼るべきなのかどうか)"

  •  中途半端すぎて参考になる部分が少ない

  • さてさて、がん検診の大罪って
    タイトルに惹かれ買ってみました。

    ・メタボの無駄さ
    メタボリックシンドロームは最近大流行で
    それによって結構株価も変動したりするほどですが
    そもそもメタボの基準がかなりおかしいんですよね。
    特にね。腹囲。。。もはや何を見たいんだと。
    糖尿病の薬とか降圧剤とかも実際に健康になるために
    どれだけ寄与しているのか、この本を読んでわからなくなったので
    どうしても、健康産業のマーケティングなのかなと思ってしまいますね。

    ・しっかりとした統計に基づいてるっぽい
    この本は少なくとも、統計の知識のある方が書かれているみたいです。
    って私自身がそこまでちゃんと知識がある訳ではないですが。
    有意差とか標準偏差って言われて分からないことって
    結構人生のロスにつながると思うので、今年の勉強すべき事の
    中に統計を入れても良いかもしれないですね。

    ・法律と医療のギャップ
    これってそもそも前提とする考えというか思想が異なるから
    しょうがない気がしないでもないですが
    両方の間を埋められるような人が出てきてくれると良いですね。

    内容は興味深いんだけど、文章自体が続きを
    もっと読みたいと思わせるような書き方ではなかったかなと
    個人的に思ってしまいました。
    いわゆる玄人向けってやつですかね。
    もうちょっと噛み砕いても良いと思うけど。

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著者プロフィール

新潟大学名誉教授。医学博士。専門は予防医学、長寿科学。
1946年京都府に生まれる。新潟大学医学部卒業。1990年より同大学医学部教授。
米国学会誌IEEE Transactions on Biomedical Engineering共同編集長、学会誌『生体医工学』編集長などを務める。
1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」受賞。
著書『人はなぜ太るのか』(岩波新書)、『ほどほど養生訓』『放射能と健康被害 20のエビデンス』(日本評論社)、『がん健診の大罪』(新潮社)ほか多数。

「2018年 『血圧の薬はやめてもよいか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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