- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106036521
作品紹介・あらすじ
約40億年という生物史を振り返ると、生き残っているのは「強い者」ではなかった。ダーウィンの進化論にはなかった、「環境は変動し続けるもの」という斬新な切り口から、「協力行動」という生命の生き残り戦略に注目する。終章では自由市場主義の瑕疵まで論及。ダーウィン進化論にはじまり、総合学説に発展した現代進化論に、いま「環境変動説」が加わる。
感想・レビュー・書評
-
面白い本だった。生物学の本だと思ったのだが、最後は経済的な話になった。民主主義の衰退は今の自民党そのものだと思う。生物の進化というより生存維持に関する話でした。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
約40億年という生物史を振り返ると、生き残っているのは「強い者」ではなかった。ダーウィン進化論にはなかった、「環境は変動するもの」という斬新な切り口から、「協力行動」という生き残り戦略に注目する。終章では自由市場主義の瑕疵まで論及。ダーウィンから総合学説に発展した進化論に、いま「環境変動説」が加わる。
第一部 従来の進化理論
第一章 ダーウィンの自然選択理論
「環境」という言葉は使われなかった/生まれることより、生き残ること/相対適応度と平均適応度/「霧のロンドン」と黒い蛾/進化の速度は思ったより速い
第二章 利他行動とゲーム理論
人はなぜ溺れる子を助けるのか/溺れる子を助けない理由/ウソつき村は滅びる/にわか成金と歴史ある富豪とのちがい/協調すれば救われる
第三章 血縁選択と包括適応度
子供を作るより姉妹を助けた方が得/エスキモーの子育て/血縁選択か集団レベル選択か/操作される行動
第四章 履歴効果
三つ子の魂百まで/インカの王に数千の妻/昆虫が小さい理由/ユキヒメドリの実験
第五章 遺伝子の進化と表現型の進化
木村資生の大発見/進化はどう進むか/魚は意思では陸に上がらない
第二部 環境は変動し続ける
第六章 予測と対応
双子の電子カメはなぜちがう行動をとるのか?/季節は変わる/生き物も保険をかける/「マーフィーの法則」は当たっている/コンコルドの誤謬/宝くじ売り場の錯覚
第七章 リスクに対する戦略
モンシロチョウの悩み/1回繁殖と多回繁殖/リスキーかセイファーか/世代をまたがる環境変動/種子がとる戦略
第八章 「出会い」の保障
精子と卵子のリスクヘッジ/オスとメスの「出会い」/チョウはなぜ山に登るのか/出会いのために進化した素数ゼミ/浮気もリスク分散のため
第九章 「強い者」は生き残れない
最適が最善ではない/鳥はなぜヒナを少なめに育てるのか/3つの進化理論の違い
第三部 新しい進化理論――環境変動説
第十章 環境からいかに独立するか
進化は単なる「変化」/多産によって多死をカバー/逃げる/「休眠」というタイムマシン/体温を一定に保つ/群落という戦略/集団で越冬/育児というリスク回避
第十一章 環境改変
「巣」という環境改変/「家」とは何か/農業は大きな一歩/医療という環境改変/学習の進化/教育と科学と環境
第十二章 共生の進化史
協力し合って生き残る/真核生物の進化と多細胞化/「カンブリア爆発」と絶滅・進化/植物と組織分化/植物群落の意味/熱帯雨林も巨大共生系/共生が不可欠な地球
第十三章 協力の進化
生物が群れる理由/アラーム・コール/交尾集団「レック」/「一人勝ち」を避ける一夫一婦制/協同繁殖から家族へ/道徳と法律/民主主義は協同メカニズム
第十四章 「共生する者」が進化する
文明にはなぜ栄枯盛衰が起きるのか/資本主義も例外ではない/ゲーム理論の瑕疵/生物資源経済学が示唆すること -
農学部図書館のアルバイト学生の方に図書を推薦いただきました。テーマは「植物」です。
☆推薦コメント☆
現在生き残っている生物は「強い者」ではない。
では現在生き残っているのはどのような種なのか?
現代の生物がどのようにして生存してきたのか
その生態が様々な生物を通して紹介されています。
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB00214016 -
素数ゼミで有名な著者の本
進化論からゲーム理論や血縁選択、包括適応度、そして素数ゼミへの解説は面白い
環境への適応だけでなく、交配による生殖機会の減少から絶滅という説明は興味深い
ある環境へ完全に適応することは、逆に環境変化による絶滅の可能性が増すというのは、当たり前だけどなるほどと思う
環境への最適化というダーウィン的な進化論を裏から見ると、絶滅の可能性を避けていくというもう一つの進化論が見えてくる -
適応度を上げる方向へ変化するという生物の本質で人類の発展を説明できる。
-
「素数ゼミの謎」の著者で松浦君の研究者仲間でもある吉村先生の本。
ネオダーウィニズム的な観点からするとずいぶんとエキセントリックな話がそこにあって、熱い。とはいえ、ちゃんとこれまでの自然選択理論の上に立脚するロジックで展開されているし、丁寧に書いてあるので読みやすいと思う。
あとがきにあるけど吉村先生も小学生の頃から生物学の研究者になりたかったのか。松浦君も同じことシロアリの本に書いてたけど、エッジの効いた人たちのコケの一念と溢れる好奇心はホントにスゴい。感服。 -
サイエンス
-
非常に興味深い本だった。進化論がこんなに面白いものだとは思わなかった。生物の栄枯盛衰から、国家、社会の栄枯盛衰まで語れるとは思わなかった。下手な経済本を読むよりも、よっぽど目が開かれた。一見するとそうは見えないが、現代の行く末を暗示する書だと思う。
-
新潮選書 強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論