貴族とは何か: ノブレス・オブリージュの光と影 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038945

作品紹介・あらすじ

貴族の世界史から「高貴なるものの責務」を問い直す。不当な特権と財産を有し、豪奢で享楽的な生活を送る怠け者たち――このような負のイメージは貴族の一面を切り取ったものに過ぎない。古代ギリシャから現代イギリスまで、古今東西の貴族の歴史を丁寧に辿り、いかに貴族階級が形成され、彼らがどのような社会的役割を担い、なぜ多くの国で衰退していったのかを解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 利他という言葉をよく耳にするようになったのはコロナが始まった頃だったか…行き詰った資本主義を打開するキーワードとして語られているのか、閉塞感のある時代の生きにくさを乗り越える思想として語られているのか、使われている理由は様々だと思いますが、99%クラブに表出しているような富の偏在をつくった新自由主義のエンジン、利己主義に対する違和感として多用されているように思われます。ただ21世紀になって利他主義が突然出てきた訳ではなく、その源流のひとつにノブレス・オブリージュがあったことを、さらにはその水源に古代ギリシャ、ローマ、中国における「徳」という価値に立脚する政治があったことを、そしてそれを支える社会階層としての貴族をフューチャーするユニークな史観です。貴族の興亡による世界史、知っている話も深い話に変わっていきます。そういえばコロナで延期されたオリンピックも今ではすっかり利権の塊イメージですが、クーベルタン男爵の想いは大いなるボランティアによる大会でした。そこにはヨーロッパの貴族たちのコミュニティが大きく関与していたと聞きます。西欧の貴族社会の流れを細かく紐解きながら、しかしこの本を成立させている著者の問題意識は最終章の『現代日本に必要な「貴族」とは?』に濃縮されている思います。ノブレス・オブリージュからナショナル・オブリージュへ。ここに来て、利他主義、ケアの思想、ESG、SDG's、ソーシャルテーマ、公共性、…などの世界の模索の意味に繋がってくると感じました。なにかこれからの社会を論ずる時の重要な補助線を得たような気になりました。

  • ノブレス・オブリージェとは「高貴なるものの責務」のことである。
    本書は、世界中の貴族の歴史を解き明かしつつ、貴族が果たしてきた責務と最近のにわか貴族が公共の福祉よりも自身の快楽に重きをおく現状を痛烈に批判している。

  • いかに貴族階級が形成され、彼らがどのような社会的役割を担い、なぜ多くの国で衰退していったのか。古代ギリシャから現代イギリスまで、古今東西の貴族の歴史を辿りながら、その役割を解明するとともに、「高貴なるものの責務」を問い直す。

    第1章 「貴族」の形成―「徳」を備えた貴族たち
    第2章 ヨーロッパにおける貴族の興亡―中世から近代まで
    第3章 イギリス貴族の源流と伝統―現代に生き残った貴族たち
    第4章 日本の「貴族」たち

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著者プロフィール

君塚 直隆(きみづか・なおたか):1967年、東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。現在、関東学院大学国際文化学部教授。著書に『ヴィクトリア女王』『立憲君主制の現在』『ヨーロッパ近代史』『エリザベス女王』『女王陛下の影法師』『貴族とは何か』など多数。

「2024年 『君主制とはなんだろうか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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