時価会計不況 (新潮新書 13)

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  • 新潮社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100130

感想・レビュー・書評

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  • 時価会計の導入による企業へのインパクト

  • 一頁当たりの文字数が少ないせいか、企業会計に素人の方にも非常に分かり易く時価会計を概説し、その導入に異論を唱えています。
    近年万能視されている時価会計ですが、1930年代の米国での公社債の例を持ち出すまでもなく、今は時価会計を導入するにはタイミングが悪く、時価=正当な評価というのは一種の擬制ですし、時価主義の採用が新たな粉飾の温床になる等、少数説ながら一つ一つの論拠は妥当で説得力のあります。しかし、同じ説明を何度も繰り返して冗長な部分が見受けられますし、IAS39はともかくFAS115に関する記述は「若干言い過ぎかな?」という印象を受けました。また、時価会計として会計処理せずに時価評価情報を開示しただけで、どれだけの問題が解決するのか、という点については触れていないのが残念です。

    ただ、一般の読者にとっては、関心はあれど敷居が高かったテーマなだけに、こういう新書という形で手に取りやすい形で出版された点は大いに評価されて然るべきと思います。

  • [ 内容 ]
    グローバル・スタンダードにあわせるということを錦の御旗に、検証もせずに導入した「時価会計」。
    益出しや損失隠しができなくなり、企業の「真の実力」がわかるようになると期待されたが、本当は、数多くの企業を破滅に追い込むだけでなく、日本経済を滅ぼしかねない「時限爆弾」だった。
    本書では、株安、デフレ、失業率増加…、現今の不況の元凶である「時価会計」の正体を一つ一つわかりやすく暴いていく。

    [ 目次 ]
    第1章 金融ビッグバンは「猛犬の放し飼い」
    第2章 時価とは何か―「ヌエ」の正体を探る
    第3章 「株は時価で売れる」という妄想
    第4章 錬金術に毒されたアメリカ型資本主義
    第5章 時価会計の破壊力
    第6章 時価会計の情報力と原価会計の情報力
    第7章 どこの国も使わないはずだった国際会計基準三九号

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • これは難しい。
    「専門書ではないから数式やデータはさけ、時価会計の本質と正体をつかんでほしい」
    とある。まるで誰が読んでも大丈夫な感じがするけれど、そもそも会計に対するバックグラウンドがある人でないと読むのは厳しいと思った。

    で、中身について。
    今更ながら、「時価会計」について考えさせられた。
    なんだか、メディアを通じて盛んにいわれてきたせいか、根本的なところを疑った事が無かった。

    期末時点の時価で株を評価するのはいいけど、確かにいま企業が持っている株をマーケットに出したらマーケットはクラッシュするだろう。
    売りたくても売れないものが時価、か。

    説明されれば当然で納得だけど、今まで完全に見落としてた。


    •時価会計は「含み益を吐き出させる会計」といいながら、実は、一方で評価益を計上しておいて、他方で「含み損をつくる会計」なのです。

    •最近、アメリカでは「当期純利益」をやめて「包括利益」というものを報告するようになってきました。包括利益というのは、利益として報告できるものなら何でもかんでも、つまり。利益として確実かどうか処分可能かそうかにかかわらず何でもかんでも利益に含めてしまうのです。


    評価が低いのは、説明が難しかった。
    さらに、文章が(上手く言えないけど)読ませる文章ではなかった。だから、あんまり入ってこなかったため。

  • この本が発行された時とは状況が大きく異なってるから、今はもう参考にはしづらい所が多々ある。また状況が違う事を差し引いても主張にはちょっと疑問の残る所もある。

  • 2003年。古っ。

    なかなかヒドイ。一部の側面だけ語ってて、あまり説得力がない。時価会計の危うさは伝わってくるんだけど、原価会計の押しが弱すぎる。それって原価計算なら大丈夫とは言えないじゃん、ってのがよくある。まだマシ、という程度。

    「時価は固有の運用能力を語りません。過去の情報の分析で個別の能力がわかるんです。」…注記じゃダメ?

    原価計算のF/Sは「会計の専門家でしか出せない」、時価会計のF/Sは「会計の知識がなくても作れる、会計以外の専門家でないと作れない」=会計データとは呼ばない。…そこ大事?じゃあ八百屋にB/Sは作れないな。

  • 時価会計、数字のマジック。

  • エンロン事件やら銀行の不良債権やらで時価会計が新聞を賑わしていたときにホントに時価会計ってそんな万能なのかよ?って疑問に思い読んだ一冊。そんなに難しくなく分かり易く書かれていると思うのであまり会計の知識が無くとも読めると思います。
    時価会計を導入すれば、取得時の資産価格を表示していたバランスシートに現在の価値を反映させることができ、健全な会計がおこなわれる。そんな論調だった新聞各社でしたが本当にそうでしょうか?時価会計を導入すると、売却してもいない資産によってバランスシートの内容が左右されてしまうということにはならないでしょうか?それは本当に会社の実体を正確にあらわしたバランスシートなのでしょうか?
    そんな疑問に答えてくれる本だと思います。
    日本企業が今後どうなるのか興味ある人、時価会計に疑問を持った人、会計に興味のある方、オススメです!

  • いわゆるグローバルスタンダード、アメリカ崇拝への警鐘の本。なかなかアメリカの会計事情まではわからないので勉強になりました。姉妹本の「不思議の国の会計学」がさらに詳しい。

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