授業の復権 (新潮新書 57)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100574

感想・レビュー・書評

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  • ドラゴン桜で著者が紹介されていたので、本書を手に取った。
    学力低下が叫ばれる中で、参考になりうる戦後教育の先達が事例として紹介されているとともに、最後に著者の学力低下問題に対する解決策が提示される。
    ①学校における政治思想停戦
    ②競争の復活
    ③教師の褒め育て

    遠山啓と藤原和博以外はこの本で初めて知ったが、個人的に1番印象に残ったのは陰山英男である。「公文式+寺子屋の実践」という説明はわかりやすいと思った。読み書き計算の重要性はテクノロジーが発達した現代でも古びていないのではないか。

  •  力強いタイトルに惹かれて読んだ。学校の中心はあくまで授業であるという考えを基本にし、さらに授業を授業者の技術という面から掘り下げていく。筆者の姿勢にはブレがなく、ひとつは政治や思想を教育に持ち込まないこと、もうひとつは競争させるべきところではきちんと競争をさせることである。その上で本書は、優れた授業実践家数人を、提唱する授業技術を中心に紹介していく。

    「BOOK」データベースの説明がとてもわかりやすいので引用しておく。「 子供たちの学力低下は、授業時間や学習量の減少だけが原因ではない。教師の「授業」技術そのものが低下しているのが最大の問題なのだ。いま必要なのは制度改革ではなく、「授業」という観点に立った真の教育改革である。戦後教育史を振り返ると、子供たちの学力向上に命をかけてきた「授業の達人」たちがいる。創意工夫と情熱にあふれる彼らの実践にもう一度光を当ててみたい。そこに学校再生のためのヒントがあるはずだ。」

     取り上げられている人たちは、いずれも名前を聞いたことがある人たちで、その実践も聞いたことがある者がほとんどである。授業を「技術」ということから考えるとき、決して書かすことができないビックネームを丁寧に取り上げているという感じである。ざっとしか知らなかった先達の業績をきちんと、しかもまとめて知ることができるのは実にありがたい。細かいところではっとさせられることも多く、とても刺激的であった。

     筆者の意見そのものに、上から下まで完全に同意できるわけではない。ところどころにちょっと引っかかるところがないわけでもない。それでもなお、特に若い先生にはこの本を一読することをおすすめしたい。各章で取り上げられている実践のひとつにでも興味を持ったら、そこから詳しく勉強していけばいいのだと思う。筆者の言うとおり、民間の授業技術研究会はずいぶん少なくなってきている。また、教員の年齢構成がいびつで、一昔前の教育技術の継承が難しくなっているのも確かだ。そういう点で、大変価値がある「まとめ本」になっていると思う。興味深い本であった。

    目次
    序 章 授業こそ学校の魂
    第一章 「仮説、推理、検証」で学ぶ科学の心
    ──仮説実験授業 板倉聖宣──
    第二章 「目に見える」算数への革命的転換
    ──水道方式 遠山啓──
    第三章 「書く」「読む」「話す・聞く」で本物の国語力
    ──鍛える国語 野口芳宏──
    第四章 教科書を教科書通り教えよう
    ──教育技術法則化運動 向山洋一──
    第五章 類型化、そして反復が起こした奇跡
    ──百ます計算 陰山英男──
    第六章 「一個のハンバーガーから世界が見える」
    ──「よのなか」科 藤原和博──
    終 章 教育論争の忘れ物
    参考文献

著者プロフィール

教育評論家。中央教育文化研究所代表。元東京都職員。1995~2005年まで、都内公立学校に出向経験がある。著書に、『いじめの構造』『日教組』『戦後教育で失われたもの』『誰が「道徳」を殺すのか』(以上、新潮新書)、『なぜ日本の教育は間違うのか』『自治労の正体』『左翼老人』『売国保守』『税をむさぼる人々』『左翼商売』(以上、扶桑社新書)、『校内犯罪(いじめ)からわが子を守る法』(育鵬社)など。

「2022年 『左翼の害悪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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