大人の見識 (新潮新書 237)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102370

作品紹介・あらすじ

軽躁なるものを勇豪とみるなかれ、かつて戦国の名将はそう戒めた。国を誤る指導者の愚があり、滅亡の淵から救い出した見識もあった。英国流の智恵とユーモア、フレキシビリティを何より重んじた海軍の想い出…、歴史の中へ喪われゆく日本人の美徳と倫理をあらためて問うとともに、作家生活六十年の見聞を温め、いかなる時代にも持すべき人間の叡智を語る。

感想・レビュー・書評

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  • 中西さんと違うところは、弊原喜重郎外相の外交を擁護しているように見えるところ。中国人による在中日本人の迫害に対し、軍を出兵させず「見殺しにした」「軟弱外交」と言われた裏には、イギリスから学んだ「小さい事件で騒ぐよりも大局を見ろ」という意識があった。
    阿川さんは「日本ではこんなことは言えない」と書いてたけど。何事も色んな側面から見て判断しなければね。

  •  読み応えがありました。阿川弘之「大人の見識」、2007.11発行。日本人の国民性は勤勉、几帳面、そして軽躁(熱しやすく、冷めやすい) 東条英機、鈴木貫太郎、吉田茂の話が興味深かったです。東条英機が横暴で独善的(気に入らない人間は二等兵に召集など)、中学生ぐらいの頭脳、重箱の隅を突っつくようなみみっちさと容赦がありません。鈴木貫太郎には首相としての顔つき、人間としての風格があり、それが国家の品位につながった。吉田茂のユーモアには大拍手。GHQを Go home quicklyの略かとマッカーサーにw。

  • イギリス流ユーモアと暗記についての心得が参考になる。

    「イングランドでは馬しか食わない燕麦 (oats えんばく) を、スコットランドでは人間が食っている」
    この発言にすぐさまスコットランド出身の議員が応じた。
    「仰有る通りなり。だからスコットランドの人間が優秀で、イングランドの馬が優秀なのです」
    日本の国会だったら前者の差別発言、ただでは済まないでしょうが、ロンドンの議会は、爆笑で終わったといいます。…
    だけど、ユー モアの複雑多岐な形を貫いて、一つ共通することは、「いったん自らを状況の外へ置く」という姿勢、「対象にのめりこまず距離を置く」という余裕がユーモアの源である。 真のユーモアは単なる滑稽感覚とは異なる。 人生の不条理や悲哀を鋭く嗅ぎとりながらも、それを「よどみに浮かぶ泡(うたかた)」と突き放し、笑いとばすことで、陰気な悲観主義に沈むのを斥けようというのだ。p70-71

    暗記出来たと思ったら、本を伏せて又唱えてみなさい。 毎晩じゃなく、三日に一遍でもいい。そうすると僅か半年で、二千五百年前に孔子とその弟子たちの言った言葉を六十、丸々覚えてしまうことになる。これは将来必ずお前の知的財産になると思うよ、意味なんかよく分らなくたって構わない、文章を覚えていれば意味はあとで段々分って来るから(p174)

  •  「急ぎの用はゆっくりと」、「静かに時を過ごすことを習え」といった「大人の見識」を身につけることを勧めた本。

     著者は日本人が軽率な者を勇敢と見なしたり、些細なことに対して大げさに騒いだりする傾向を持っていることを「軽躁」であると指摘し、それに対して「静謐」を重んじよ、と主張する。そして、この「静謐」という語は『今昔物語』に出てくる「和魂(やまとだましい)」に通ずる。

     これは戦時中に武士の心意気として盛んに喧伝された「大和魂」とは異なり、「日本人なら本来持っているべき思慮分別」と定義される。

     その他は日本海軍やイギリス海軍に関する記述が多い。両者ともユーモアのセンスを重んじたとか。その内容の大体はべた褒め。


  • 年の功というに相応しい内容でしたが、私には少し読むのが早すぎました。

    歴史で学ぶ教科書とは異なり、立体的なお話が垣間見れて感心させられてしまいます。
    また、紳士として求められるユーモア論等も確かにと考えさせられます。
    歴史を紐解きながらどんな見識を持つべきか?が説明されています。
    学生時代に使用していた英和辞典で「wisdom」つまり、「叡智」というものがありましたが1つの考え方を学べた気がします。

  • 【ひとこと】
    「軽躁なる日本人へ」ということで、子・孫世代へ分かりやすく語りかけた一冊

    【手に取った理由】
     アガワサワコさんのエッセイを読み、偉大な父の言葉に触れたくなったため。

  • 2012年のベストセラー『聞く力』に続き2匹目のどじょうを狙った『叱られる力』も好評の阿川サン。彼女によれば、本書の著者である作家・阿川弘之氏は大変に怒りっぽくて「コワいお父さん」だったらしい。明治から昭和にかけて文壇で活躍して「小説家の神様」と呼ばれた志賀直哉に師事し、連合艦隊の総司令官の人間像を赤裸々に描いた『山本五十六』など、数多くの戦記文学や随筆を残した著者が、歴史の中で失われつつある日本人の美徳と倫理をあらためて問い直す。日本人の見識、英国人の見識、さらには孔子や天皇の見識にまで言及し、後の世代の人々が叡智(えいち=優れた知恵)を養う一助になればとの思いを込めた一冊。文体は優しく、阿川サンが言っているのとは正反対で全然コワくない。

  • 大人の見識(新潮新書)
    著作者:阿川弘之
    戦争には海軍に所属し終戦後は賞を受賞を切っ掛けに作家として山本五十六等の多くの作品を世の中に青春時代にを問いかけている。
    タイムライン
    https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • やはり昭和は面白い

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著者プロフィール

阿川弘之
一九二〇年(大正九)広島市に生まれる。四二年(昭和一七)九月、東京帝国大学文学部国文科を繰り上げ卒業。兵科予備学生として海軍に入隊し、海軍大尉として中国の漢口にて終戦を迎えた。四六年復員。小説家、評論家。主な作品に『春の城』(読売文学賞)、『雲の墓標』、『山本五十六』(新潮社文学賞)、『米内光政』、『井上成美』(日本文学大賞)、『志賀直哉』(毎日出版文化賞、野間文芸賞)、『食味風々録』(読売文学賞)、『南蛮阿房列車』など。九五年(平成七)『高松宮日記』(全八巻)の編纂校訂に携わる。七八年、第三五回日本芸術院賞恩賜賞受賞。九三年、文化功労者に顕彰される。九九年、文化勲章受章。二〇〇七年、菊池寛賞受賞。日本芸術院会員。二〇一五年(平成二七)没。

「2023年 『海軍こぼれ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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