- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106103834
作品紹介・あらすじ
人口わずか七五〇万の小国イスラエルは、度重なる戦争を切り抜けながら、いかにして超大国アメリカを動かすに至ったか-。そのおそるべき危機管理能力、国防意識、そして周到な外交術とは。強固な二国間関係を生んだ「伝説のロビイスト」や米国ユダヤ系社会から、ホロコーストの生き証人らユダヤ移民たち、そして情報機関モサドの元長官にペレス現大統領まで。四年におよぶ取材を通じて迫った、生身のユダヤ国家。
感想・レビュー・書評
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イスラエルの歴史や現状、アメリカとイスラエルの関係がわかりやすくまとめられている良書。人口はそれほど多くないのに世界に大きな影響をもたらす力を持っているユダヤパワーの源泉が理解できました。
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マイケルルイスの行動経済学本でイスラエル史を読みたくなったので読む。こういう時の定番中公新書のは重厚すぎたので読売支局長によるこの本を選ぶ。手ごろにまとまっておりよい。どういうアイデンティティであれ、個人として厳しい状況にある人が民族などに強い帰属心を燃やしすぎてしまうとなかなかなんだなあ… 見方を変えれば日本でも起こっておることだなあ…
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「自分たちの国は自分で守る」ことを真摯に実践しているハリネズミ国家。
そのために国家間ベースでの関係性でのアプローチではなく、全世界のユダヤ人ネットワークを活用して、情報や資金を確保するという強固な民族主義を感じる。同様に中国の華僑という存在があるが、ここまで国家を真剣に支援はし得ないだろうと感じた。
特にロビー活動を通じて、アメリカの親イスラエル政策をコントロールしている点には圧巻。
第二次世界大戦後から、ほとんどゼロベースから経済だけでなく軍事的にも急成長させて現在に至る勢いは、確実に日本を凌いでおりす。間違いなく、核も保有していることでしょう。
年がら年中ほぼ戒厳令体制であり、女性も含めた国民皆兵で、自国の安全保障のためなら敵国への先制攻撃や暗殺も辞さず、国連の制裁決議にもどこ吹く風…。
自分も含めて、いまの大半の日本人には腹の底から理解できない国がある。
ただかの国のインテリジェンス体制・仕組みだけは、しっかりと学びたい。 -
2006~2009年に読売新聞エルサレム支局長を務めたジャーナリストが、1948年の建国以来世界に例のない極めて特殊な国家として存在しているイスラエルについて、網羅的かつコンパクトにまとめたもの。
イスラエルの特殊性は本書の中でも、
◆中心都市エルサレムは、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三宗教の聖地であり、合計約40億人、世界人口の約六割が心を寄せる聖都である。
◆第一次大戦中の英国の三枚舌外交が生み出した国家である。
◆厳しいユダヤ教の戒律が生活を支配する、ユダヤ法に根差した「ユダヤ国家」である。
◆人口750万人で、埼玉県並みの規模にもかかわらず、世界中に広がる1,300万人のユダヤ人が心の故郷として支えている。
◆建国以来、ほぼ独力で四度の中東戦争、エジプトとの消耗戦争、二度のレバノン紛争とパレスチナ紛争を切り抜けてきた。
◆奇跡的とも言える成長により、中東最強の軍事国家に変貌し、先進国並みの生活水準を実現した。
などが示されているが、
著者は更に、イスラエルと米国との関係、米国内のユダヤ系社会とロビイストの影響力、聖都エルサレムの今昔、ユダヤ人の苦難の歴史、イスラエル国家の変わりゆく姿などについて、詳しく解説している。
そして、「「自分たちの国は、自分たちで守るしかない」・・・国民全体に危機意識が浸透するイスラエルは、安全保障に対する意識が希薄な日本とは、いわば対極の存在だ。この国を知ることは、国を守るとはどういうことなのかを改めて考えるヒントになる」とも述べている。
2010年の出版だが、取り上げられた切り口は現在でも有効性を失っておらず、現代世界の縮図・中心のひとつである聖都エルサレムとイスラエルの歴史と現状を知るために有用な一冊である。
(2010年10月了) -
[殻の内幕]建国から数十年の間に、度重なる戦争と紛争を重ねつつその生存を保ってきたイスラエル。ハリネズミのように身を守りながら、今や中東の大国として国際社会の行方を決める要因ともなっているその国に赴任した著者が、あらゆる角度から国の外郭をなぞり、内奥に迫った一冊です。著者は、読売新聞の記者として国際畑を歩まれてきた三井美奈。
歴史、地理、外交、経済、社会と幅広い分野を網羅していることから、イスラエルを知る上での格好の入門書と言えるのではないでしょうか。特にイスラエル国内の問題のみにとどまらず、その視点が米国やアジアまで及んでいるところに好感が持てました。記者さんならではと言いましょうか、第一人者に対するインタビューの様子もしっかりと収められており、手に取りやすくその上内容も充実している作品ではないでしょうか。
著者の目線が徹底して現実主義の上に成り立っているのもイスラエルの「等身大」の姿を記述する上で役立っているのではないでしょうか。遠い国のこと故、つい中東情勢は感情論に流されやすい場合があるのですが、イスラエルという国はそもそもそういう次元で成り立っていないということは著者の指摘するように頭に留めておいて良い点かと思います。
〜今は豊かに暮らしていても、いつ何が起きるか分からない。この危機感は、迫害と差別を受けてきた民族の本能である。〜
ホロコースト博物館に足を運ぶとそのことを痛切に感じます☆5つ -
日本人にとって、中東問題は難しいことはなんとなく頭ではわかっているものの、イスラエルは遠くてよくわからない国というのが普通の感覚ではないでしょうか。本書はエルサレムに記者として駐在した著者による、イスラエルの内情のレポートで、読み応えがあります。
米国でのユダヤ系ロビー活動の影響力の凄さ、イスラエル国民の戦時意識と防衛力に関する意識の高さには驚きました。また、現代の若者は建国の時代を知らず、イスラエル、パレスチナ双方ともに、相手国の人々を生身で感じたことがない層が増えているという事実は、ロボット兵器の活用の増加ととに、将来への不安を感じざるを得ませんでした。 -
イスラエルは国連に対する嫌悪感が強い。
その背景にはユダヤ人苦難の歴史がある。ユダヤ人はアメリカでは少数派。いつ何が起きるかわかんない。ユダヤ人が安心して暮らせるのはイスラエルだけ。
WW2後もヨーロッパではユダヤ差別はなくならなかった。それで多くのユダヤ人がイスラエルに来た。
情報収集能力の高さは世界中からユダヤ人が集まる移民社会ということにも起因している。
イスラエルの軍需産業の最大の得意先はインド。
ユダヤ人の人口が減少していて、世界中でユダヤ人を探す動きが出てきている。 -
イスラエルの現状と国を支える力について、イスラエル人、ユダヤ系アメリカ人など多くの声を取材しながら冷静に、どちらかと言えば批判的に書かれた本。アメリカとの関係や、イスラエル内にも様々な立場があることがよくわかった。本書を読むに当たっては歴史的な知識は前提。