和食の知られざる世界 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105500

感想・レビュー・書評

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  • 辻調理専門学校の校長である筆者が、
    和食は世界でどのような立ち位置であるのか、
    世界でどのような形になっているのかを教えてくれている作品。

    ただし、筆者の目線は高級和食の部分だけでした。。。
    育ちがよかったのかもしれませんが、
    少し自分は和食の最高峰を食べ続けてきた的な雰囲気が
    最後まで漂います。
    あと、海外で進化した和食は和食でないというスタンスでもありました。
    個人的には、イタリアンや中華が日本で独自に進化しているのと
    同じような気もするのですが。。。

    世界に和食が様々な形で広がっている中で、
    伝統的な部分を守ろうというスタンスは、ぜひお願いしたいですが、
    もう少しカジュアルに食べられる和食、
    日本人が和食を知る(食育)とかもやってほしいな~とも思います。

    まあ和食の世界から見た一側面を知ることのできる作品です。

  • 著者は、米カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ、仏ル・コルドン・ブルーとともに世界三大料理学校とされることもある辻調理師専門学校の校長(二代目)である。
    本書は2013年12月に出版されているが、ほぼ同時期に発表された「和食」のユネスコ無形文化遺産への登録に先駆けて執筆されており、和食の素晴らしさを語るに留まらず、和食の未来に対する著者なりの懸念を背景に、今後さらに異文化の人々に受け入れてもらうためには如何なる取組みが必要かという観点から、和食について論じている。
    著者は、世界に出て行った和食は大きく、1.ギミック和食(カリフォルニアロールのように、「和食っぽい素材」を活用し、「和食っぽい見た目」だが、完全に海外の味覚に合わせており、和食の本質的な魅力や日本人の感覚からは外れたもの)、2.ハイブリッド和食(日本の料理技術や食材の使い方に影響を受けて、それを外国料理の文脈の中で表現することによって生まれた料理)、3.プログレッシブ和食(和食の素材、和食の本質的な魅力を活かしつつも、新しい素材や手法も取り入れることによって、異文化の中で、その民族が好む味や食感に合うように作り出された料理)、のいずれかに変容しているという。
    また、そもそも「和食の本質(独自性)」とは、
    ◆季節ごとの食材としっかり向き合って、あらゆる技術を駆使し、その食材の真髄ともいうべき味を引き出していること。
    ◆その味を形成するものは醤油、酒、みりん、味噌など数少ないが、いずれも何百年にもわたって培われた製法により生まれた加工品であること。
    ◆そうした調味料とともに出汁の味が礎となって、常に一つ一つの料理を支え、食材の味を引き立てていること。
    であるとし、それを見事に表現する料理人・店として、東京・青山の『NARISAWA』、京都の『草喰 なかひがし』、東京・銀座の『壬生』などについて詳しく述べている。
    そして、和食が目指すべき道のひとつとして、自ら「プログレッシブ和食」に挑戦した、米国を代表するフランス料理シェフのD.ブーレイ氏と共同でニューヨークに作った懐石料理店「ブラッシュストローク」の試みが語られる。
    私は自分の海外駐在の経験から、異国において日本の相応の料理店と同じ水準の和食を(相応の価格で)再現することの難しさは実感するが、「異文化の中で成功するために、和食をいかに“変換”させるか」という著者の取り組みは、「ことば」に次ぐ文化ともいえる「食」に関する究極の挑戦でもあり、とても興味深いものである。また、どこまでが和食と言えるかを突き詰めることにより、和食の本質を明らかにしている点においても意義ある書と思う。
    (2015年9月了)

  • 辻調理師専門学校校長である辻芳樹氏による和食についてアレコレ。

  •  辻調理師専門学校の御曹司が、冷静な目で和食のこれまでと今後を語った本。
     世界無形文化遺産にも選ばれ世界的にも脚光を浴びている和食だが、その神髄を変えずに世界で通用するためには日本人の料理人が旧来の常識に縛られても、外国人が勝手にローカライズしすぎても駄目で、ある種の変換作業が必要になると説いている。日本人の想像以上に和食ブームは世界的に高まっており、早く日本人が変換力を身につけないと、柔道のようにいつしか主導権を海外に奪われてしまうと警告している。
     クールジャパンにしても和食にしても、日本人の文化発信力や浸透力はまだまだ弱いが、逆に拡大する余地があるということだろう。東京の魅力をうまく外国人向けに変換した成功例がオリンピック誘致だと思うのだが、何かしら学べるところはあるはずだ。

  • 辻調理師専門学校、辻調グループ代表の著者は今、世界が賞賛する「和食」の未来に大きな希望と一抹の不安を抱いている。歴史的変遷から、海外での成功例や最先端の取組みまで、世界の食を俯瞰的に見つめ続けてきた著者が綴る、和食の真実。

    ユネスコ無形文化遺産に指定され、世界から注目される和食に私自身も今とても興味を抱いている。著者は料理界の最前線で活躍されており、広い視野を以て“世界の中の和食”の存在を考えている。「海外で和食が流行している」程度しか知らなかった私は、和食が海外の食文化と見事に融合し、更なる進化を遂げていることにただ驚くしかなかった。料理の最先端の地では、日々刺激的な試みが行われている。本書には写真もなく、著者の描写からしか伺うことができないが、海外の文化に「変換」された和食はどれも意外な工夫が施されていてとても興味深かった。“日本の食”から“世界の食”へと進化している和食から、やはり目が離せない。

    著者は和食が異文化で成功するためには「変換力」が必要だと述べている。それは、日本の和食の料理をそのまま海外で提供するのではなく、現地の人々の味覚、現地の食文化や習慣にまで着目し、和食の本質は維持したままで現地の人々に受け入れてもらえるよう、和食の形を変化させることである。この「変換力」は和食のみならず、何かを進化させたり、新しいものを生み出したりするために必要なプロセスであると思う。その為にはまず物事の本質を見極めることが重要である。新たなものを創造することばかり考えていると、そもそもの本質の追究が疎かになってしまう。何かを生み出したい時こそ、今あるものをしっかり見つめることが大切なのだと思った。

  • 久米書店

  • 和食も概念的記述も良かったが、やはり料理人のエピソードが僕には面白かった。

  • 和食は、世界で勝負すべきだ。プログレッシブ和食こそ、目指す道。

  • 「和食の知られざる世界」近くの本屋でふと見かけたので購入し、読了。
    辻調理専門学校の校長による、和食の世界の話。
    和食が欧米人に受け入れられるまでの変遷、和食の歴史から和食の最大の特徴のである出汁について、どこまでが和食かハイブリッド和食から首をかしげる和食まで、そのほか卓越した料理人たちについてなど、新書の割に内容は盛りだくさんで興味深い。
    なぜ、和食が世界遺産になり得るのか。和食の良さも欧米諸国のヘルシー志向にマッチしたから受け入れられているに過ぎないようにも感じる。やはり、おいしいものはカロリーが高いという原則に反する。出汁、そして素材を生かすという考え方が和食独特なように思う。「土の中から出てきたものをそのままおいしくいただく」というフランス人シェフの和食に対する感想がポイントなのかもしれない。
    たまにはおいしいものを食べに出かけたいと思わせる。
    それにしても、著者のセレブ臭さは少々気になる。

  • 世界のあちこちで見られる「和食」。その多くは経営者が日本人ではないという。和食が異文化で成功するためのキーワードは「変換力」。変換・翻訳する力を持たずに力んだところで、所変われば伝わらない。天才なんかそうはいないしなれないから、新しい組み合わせで挑戦するしかない。料理、というか食い物屋については僕はあまり語りたくないが、そこら辺の発想はよいなあ、と思った。ところで帯に「世界遺産」って文字が思いっきり入っている(たりうる、だからいいのか?)。

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