戦犯の孫: 「日本人」はいかに裁かれてきたか (新潮新書)

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  • 新潮社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105562

作品紹介・あらすじ

「靖国参拝」問題の根源とは? 戦後史のタブーに挑む。罪をいつまで背負わなければならないのか。東条英機、広田弘毅ら「A級戦犯」の末裔の生々流転と、海外の「BC級戦犯」の生き様を、若き俊英が掘り起こした問題作。

感想・レビュー・書評

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  • A級戦犯・帝國陸軍・海軍について勉強をしている人間からの視点で読むととてもガッカリな内容で残念。A級戦犯により裁かれた軍人の家族の戦後の生活も他の著書に書かれているため、真新しさを感じない。A級戦犯の孫ってどんな暮らしをしたのかなとか知りたい人にはいいかもしれない。

  • 戦争責任は当時の日本全体、それを代表していた軍部や政府、そして支持した国民全体にあると感じる。当時に生きた日本人にとって、言葉も理解できず意思も表明できないような赤子でもない限り、個人的には全体にあったと考える。勿論軍部や政府に反抗し、対抗する勇気ある国民も居ただろう。それはごく一部の人たちであり、開戦前、開戦後も一貫して態度を貫き通せた人でもなければ責任の一端はあると感じる。
    中でも、戦後に戦犯として罪名を背負った人々については、開戦への責任、戦時中の暴力や民間人・捕虜に対する殺害などは明らかな犯罪=犯罪者と言える。また、広田弘毅の様な文官についても外交官としての失敗や内閣を統率できなかった責任はあるだろう。
    本書はそうした戦犯達の孫にフォーカスし、戦後どの様に生きてきたかについて書かれたものである。誰もが知っている東條英機や広田弘毅、土肥原賢治などの孫達が味わった戦後についてどれほど多くの日本人が知っているだろうか。何も考えなければ、戦犯の子供の子供なのだから、仕方ないだろうという人もいるかもしれない。だが自分の先祖に対する責任を負わなければならないなら、日本人の大半は戦国時代を経て犯罪者になってしまう。親や先祖は選べない事を考えれば、生まれた瞬間に重責を負って生まれてくるというのはあまりに酷い。
    本書はそうした人々(孫達)がどの様にその様な状況を克服し、加えて名誉を取り戻し、かつ普通の人々と同じ生活を取り戻したか知る事ができる。勿論不幸な境遇を克服できずに亡くなられた方もいるだろう。もし貴方が祖父の犯した罪を生きている間中考えなければならないとしたら恐ろしい。不条理そのものだし、耐えて生き抜いた人々にはさぞかし辛かったであろう。
    後半は日本人に使役された韓国人や台湾人についても語られている。祖国に帰ることもできず日本人として罪を償わされ、最後まで祖国の土を踏めなかった戦犯が多く居たことも、孫達の記憶から忘れ去られてはならない。

  • 満州事変から太平洋戦争にかけての戦争責任を問われた戦犯たちの子孫や、戦犯そのものの人生などをまとめた一冊。

    たくさんの書物と本人らへのインタビューを元に描かれていることからすごくしっかりとした学術書のような印象。
    その点、無知なわたしにはなかなか難しく読むのに悪戦苦闘…。
    それにしてもA級戦犯の中でも東條英機のお孫さんの話はかなり苦しい。学校の担任から担任を持つことを拒否されるなんて、どんな気持ちだったんだろうか。
    土肥原賢二や広田弘毅もA級戦犯だということくらいしか知らずで。広田弘毅だけ文官でありながら靖国神社に祀られてるのも知らなかったくらい。

    戦犯問題に関していろんな意見があるのは重々承知ですが、もう誰も悪くないというか、少なくとも子孫に関しては何も責を負う必要はないと思うなぁ。
    本書で描かれていたB級、C級戦犯なんてなおさら。台湾人や朝鮮人の人ですら、日本の戦犯扱いされてたそうですが、
    そんなの本当に罪はあるんだろうかと思ってしまう。
    (捕虜へのやむを得ない暴行とかそんなんはやっぱりあるんやろうけども…)

  • 戦争

  • 【由来】
    ・図書館の新書アラート

    【期待したもの】
    ・これ、すごい面白そうじゃない?

    【要約】


    【ノート】

  • やっぱり知っているようで知らないことが多い。

  •  残念な本。

     まず、タイトルに騙された。

     太平洋戦争で戦犯とされた人たちの「孫世代」に着目した視点に興味を持って買ったのに、実際に「戦犯の孫」について書いた部分は第一章だけ。全体の半分もない。

     その第一章では、戦犯の孫4人を取り上げているが、彼らの心情や生い立ちについて書いた部分の大半は、過去に出版された回想記や雑誌のインタビューからの引用・要約で、著者が自分で取材(聞き取り調査)した部分はごく一部。したがって、全体としてオリジナリティに乏しく、生々しい人物像に迫るには程遠い内容に終わっている。「実話ナックルズ」「EX大衆」といった「??」な雑誌からの引用もある。手抜きをして安易に書いた本を買わされた気がした。

     亡くなった人物を取り扱うなら、その人の著書を丹念に読み込むのも学者の仕事だろう。だが、本書で取り上げた戦犯の孫4人のうち3人は存命なのだから、もっと本人から取材すべきではないのか。亡くなった東条由布子さんだって、1年前まで生きていたのだから、周囲の人たちから取材すれば、もっと違った話が書けたはずだ。

     特にひどいのは、東郷茂徳の孫・和彦氏を取り上げた項だ。東郷和彦氏は元外務官僚で、現在も大学で教鞭をとっている有名人なのに、著者が東郷氏に面会した形跡すらなく、過去の出版物から生い立ちや思想を紹介しているだけだ。

     この本を書いた林英一さんという人は、今年(2014年)で30歳になる若い学者らしい。若手研究者のお粗末な仕事ぶりといえば、STAP細胞の小保方氏を思い出す。林氏に上司がいるのか知らないが、少なくとも、出版した新潮社の担当者がもっと指導してあげないと、新潮新書の評価まで落とすことになる。

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著者プロフィール

二松学舎大学文学部歴史文化学科准教授

「2023年 『残留兵士の群像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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