2021年以後の世界秩序 ~国際情勢を読む20のアングル (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108884

作品紹介・あらすじ

米国の分断、米中対立、北朝鮮の核、インドの台頭……。混迷は米大統領選だけではない。国際情勢は、既存の間尺ではもはや見通すことができない。これからの世界秩序を読み解く20の視点を、第一人者が示す。

感想・レビュー・書評

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  • h10-図書館2021-2-25 期限3 /12 読了3/2 返却3/3

  • アメリカの歴史を通じて根強く残るアメリカファーストを過小評価してはいけない。孤立主義の伝統がある。アメリカの国際主義の時代は1941年から2016年までの70年程度。これから米中関係も悪化する。

  • 世界の力の均衡点はアジアにシフトする/アメリカ・ファーストは変わらない/「より巧妙なポピュリスト」を警戒せよ/中国の国際機関支配は止まらない/新型コロナ後、国際問題は先鋭化する/気候変動合意を反知性主義が破壊する/米国の裏庭・中南米を中国が侵食する/ウクライナ&ロシアゲート疑惑は終わらない/「勝てる候補」バイデンは最適の米大統領か/大統領選後も米「文化戦争」は激しさを増す/司法軽視のトランプは塀の上を歩く/米国コロナ敗戦で「Gゼロ」が加速する/米国の対中「対抗的関与パラダイム」は継続する/「中国の核」を抑える方法はあるか/北朝鮮の核開発は着実に進む/空気を読まない「インド」の存在感が高まる/3つの人道危機がアジアで進行する/シリア、リビアをストロングマンが蹂躙する/「米大使館移転」で中東和平は遥かに遠のく/「2回の開戦危機」を経た米・イランの神経戦は続く

  • 米国と中国の新冷戦、ポピュリストの台頭、新型コロナパンデミック後に起こること…。パラダイム・シフトを迎えた世界の今と、これからを読み解く書籍。

    現在、経済・政治・外交の中心が、米欧からアジアにシフトする「イースタニゼーション」(東洋化)が進行している。米国は中国の影響力拡大を懸念し、「インド・太平洋地域」で同盟国などとのネットワーク形成を進めている。

    米国は、建国から第2次世界大戦前まで「孤立主義」を外交の基調とした。
    トランプ政権が掲げた「アメリカ・ファースト」も、この伝統に沿うものだ。よって、バイデン政権になっても、トランプ以前の米国に戻ると楽観すべきではない。

    2016年の米大統領選挙のトランプブームは、イギリスのブレグジット(EU離脱)をはじめ、世界のポピュリスト運動と共鳴した。ポピュリズムの元祖は米国にあり、過去、大恐慌などの不況時に勃興した。新型コロナによる不況が深刻化すれば、ポピュリズムが受け入れられる余地がでてくる。

    新型コロナのパンデミック後、国際問題は先鋭化する。
    例えば、中国やロシアは感染被害と経済悪化による不満から国民の目をそらすため、強硬姿勢を強める可能性が高い。その結果、コロナ後の世界では、米国と中ロとの対立が強まるだろう。

    米国の対中政策は、1972年までは、冷戦における対共産圏「封じ込め」というパラダイム(枠組み)の中にあったが、以降は「協調的な関与パラダイム」の中で展開された。そして、中国の経済的・軍事的台頭が米国にとって脅威になった現在、米国の対中姿勢は、新冷戦下における「対抗的な関与パラダイム」に変化したと考えられる。

  • ●アメリカファーストのキャッチフレーズは、トランプが作り出したものではなく、第二次世界大戦前から米国に存在していたものだ。
    ●フェイクニュースによるインフォでミックは、国家が関与しているものも多い。
    ●トランプ政権のベネズエラ政策の失敗は、中国からの経済援助とロシアの軍事援助による中南米諸国への影響力の拡大と、アメリカの影響力の低下をの深刻さを物語っている。
    ●バイデン大統領が副大統領候補に指名したカマラ・ハリス氏。黒人とインド人の血を引き、女性や黒人層などのマイノリティーからの支持を集める。
    ●米中新冷戦。「トゥキディデスの罠」古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが「戦史」で詳述したペロポネソス戦争のように、覇権国である米国(スパルタ)が、台頭する中国(アテネ)に不安を抱き、それが対立を不可避にすると言う、古典的な国際関係の現実主義の理論である。

  • アメリカ、特にトランプ政権をめぐる状況がアメリカの国内の論者が見るようにまとめられている

  •  米国を中心に国際情勢の20のテーマを読みやすく解説。トランプ登場で変わったこと、トランプが加速させた面があるかもしれないがより大きな流れ、両方あることが見えてくる。
     前者はパリ協定離脱や大使館のエルサレム移転、イラン核合意離脱だ。もっとも、世界での中国の影響力増加や中東の緊張を高めるという代償を払ってはいるが。一方で著者は、アラブ諸国とイスラエルとの関係改善は、イラン敵対政策としつつも、ごく短期的には中東和平を進める実績、利益を出したと見ている。
     後者は実は結構多い。対中「対抗的関与」やインド重視、北朝鮮核開発。INF全廃条約失効すら、オバマ政権からの延長線上にある決定。また内政では、アメリカ・ファーストにも反知性主義にも伝統が背景にあり、ポピュリスト的政治手法についても、他国での潮流や民主党内の左派ポピュリストの存在を指摘している。

  • とにかく、日本は一歩も二歩も遅れていること。このままいけば、未来は決して明るくないことがひしひしと感じられる。

  • 2021年は米国政権がトランプからバイデンへと移行することにより、米中関係、エネルギー、コロナや経済対策といった分野でこれまでとは違った流れができる可能性がありますが、本書では個別テーマについて明快に整理されています。

    米国が「ハブアンドスポーク」という2国間関係重視から地域ネットワーク重視の政策への転換を図っていることの背景には、増大する経済と軍事力を背景に、アジア地域の盟主を目指す中国に地域周辺国の連携と強調することにより対応しようとしていることや、同盟国である日本の推進する「自由で開かれたインド太平洋構想」の位置づけが、その政策上重要性を持っている事情。一方、中国が経済協力、援助を背景にアジアのみならず、アフリカや南米でも影響を拡大している事実に、今後の世界規模での米中関係の緊張化が強調されています。大国同士がいずれ対立する運命にあることを予言したいわゆる「トウキディデスの罠」が現実化する勢いです。米国は中国との緊密な経済関係もある一方で、Partial Disengagementによりその優位性を牽制し、米国の軍事、経済上の優位性を確保しようとしていると筆者は言います。

    他にもロシアのウクライナ侵攻が、「ハイブリッド戦争」と言われていることや、インドの非同盟路線、中国全人代による香港国家安全維持法の制定、全米有権者の22%を占める米国の福音主義者(エヴァンジェリカル、主として共和党を支持する)の重要性とイスラエルのエルサレム問題の関係、そして対イランで合致するイスラエルとアラブ諸国の利害、など、2021年初めにおける国際情勢を俯瞰するテーマが簡潔にまとめられ興味深く読みました。

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著者プロフィール

笹川平和財団上席研究員。東北大学歯学部卒業。ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士課程修了。戦略国際問題研究所(CSIS)に入所し、2003年に上級研究員。その後、三井物産戦略研究所主任研究員、東京財団上席研究員などを経て現職。著書に『防衛外交とは何か』(共編著、勁草書房)、『2021年以後の世界秩序』(新潮新書)ほか

「2022年 『デジタル国家ウクライナはロシアに勝利するか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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