内閣政治と「大蔵省支配」: 政治主導の条件 (中公叢書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120034183

作品紹介・あらすじ

「政治主導」の可能性について論じられるようになって久しい。多くの論者が、政党の力を高めることを提唱してきたが、本書は、政党・内閣を支える「よき官僚」の条件を探ることで、「政治主導」の条件をその背後から解き明かす。素材は今でいえば財務省、当時は大蔵省。時代は、昭和27年から37年の10年。高度経済成長前夜にさかのぼり、戦後日本の政官関係の原点を、人物の横顔とともに描いていく。

感想・レビュー・書評

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  • 興味深い本です。この本を読むのは、3度目です。1度目も、2度目も、挫折しました。今回が、3度目です。読みにくい本ではありません。専門用語も、必要最低限におさえています。その意味で、僕のような一般読者に配慮した本です。それにもかかわらず、眠気が誘われるのです。眠気の正体がなんとなくわかりました。著者は、日本政治専攻の東北大学の先生です。テーマは、官房型官僚です。著者は、官僚を官房型官僚と原局型官僚に分けます。原局型官僚とは、重工業局、資源エネルギー庁、主計局、主税局等に所属する役人のことです。官房型官僚とは、官房に所属し、局同士の調整、対省庁間の交渉業務をおこなう役人のことです。著者によると、官房という組織は、戦後のものだそうです。戦前は、官房という組織がありませんでした。何故ならば、業務は、省庁内で完結していたからです。戦中に入ると、調整機能が必要になってきました。第1に、内務省が、いくつかの組織に分割されたためです。各省庁の枠では、収まらない仕事が存在するようになったためです。第2に、戦争のための物的動員計画を作成する必要があるためです。これにも、各省庁間の調整が不可欠です。第3に、台頭する軍部に対抗、そして、利用するためにも、調整、対外交渉部門が必要となりました。そのため、官房ではなく、総務局という部局を新たに設置しました。総務局を受け継いだのが、現在の官房です。他の役所と異なり、解体を逃れた大蔵省には、本来、各省庁間の調整をおこなう官房は不要なはずです。にもかかわらず、大蔵省において、森永、石野、谷村の官房型官僚は、大きな影響力を持ちました。大蔵省のエリートコースは、主計局です。森永、石野、谷村は、次官、主計局長は経験していますが、主計次長、主計官の経験していません。これは、異例のことです。これは、戦後の混乱の中で、少数与党の余儀なくされました。そのため、与党との交渉だけでは、予算を通すことはできません。国民世論の支持が必要となります。そのため、世論に訴える能力のある官房型官僚が、活躍したようです。と同時に、自民党が多数を占めるようになると、彼らは、不必要になりました。

  • 論文試験の参考に。

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著者プロフィール

東京大学教授

「2021年 『日本政治史講義 通史と対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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