黒死病: ペストの中世史 (INSIDE HISTORIES)
- 中央公論新社 (2008年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120039881
作品紹介・あらすじ
一三四七年秋、世界の終焉を告げる船がシチリアにたどり着いた-またたく間に欧州人口の三分の一を奪い、「大いなる死」と呼ばれた疫病の恐怖を、驚くべき緻密さで再現。
感想・レビュー・書評
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黒死病について、私は全く知識が無かったのだが、読んでみようと思ったのは、コロナの影響である。
未知の流行り病が現れたとき、過去の人々はどう対処していたのかが、気になったのだが、時代は中世(1347~1450年くらい)のヨーロッパ中心で、まだ医学や技術革新も、今とは比べものにならないくらいの状況を考慮したとしても、死亡者数が凄まじく多い。酷いところで、全人口の30~40%というのだから(あくまで推測だが)、読んでいて、空恐ろしくなった。
また、黒死病の原因が、鼠に取り付いたノミらしく、鼠が荷車や船に入り込んで、それをヨーロッパ各地に人が運んだということで、瞬く間に感染が拡がった。
更にそれの原因が、天災や異常気象などによる、鼠の大量発生や、作物不良で食物を求めて、鼠の活動が活発になり、人里に降りてくるなど、環境の変化が要因になっているところ、また、衛生的に汚い場所は、更に、そういった感染を拡大しやすいことを知り、今でも、除菌を徹底的にやっているところには、納得がいった。
それから、最も恐ろしいのは、未知の病気の恐怖で、人が人を信じられなくなることで、治安が悪くなったり、暴動が起きたり、孤独になったり、冷静に物事を観ることができなくなり、それが、ユダヤ人大量虐殺にも繋がっており、人の弱さを実感した。
ただ、それとは別に、イングランドでは、そのような状況でも、確固たるリーダーシップを発揮して、秩序と規律と法律遵守の精神を保つことができ、世間の人々が、この国はまだ混乱に陥っていないという自信を持てたということも知り、これは、今のコロナでも分かるような気がした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多数の資料を基にした解説だけでなく、ノンフィクション小説やドキュメンタリーのように記述されている部分もあって、当時の各地の様子が目に浮かんで記憶に残りやすかった。特に、ペストで妻と五人の子供を一度に亡くした男性の話は印象に残った。ただ、資料の不足からか1348~1349年のペスト流行の終息直後の復旧・復興に向かう様子についての解説や記述があっさりとしていて空想するしかなかったのが少しだけ残念だった。
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99112892 -
読みやすく、印象に残る。
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2m
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[ 内容 ]
一三四七年秋、世界の終焉を告げる船がシチリアにたどり着いた―またたく間に欧州人口の三分の一を奪い、「大いなる死」と呼ばれた疫病の恐怖を、驚くべき緻密さで再現。
[ 目次 ]
オイメダム―さまよう病
「やつらは怪物だ、人間ではない」
恐怖の跫音
シチリアの秋
ヴィラーニかく記せり
テンプル騎士団総長の呪い
新しいガレノス医学
死という日常風景
頭を西に、足を東に向けて
ユダヤ人大虐殺
「ああ、信仰薄き者たちよ」
始まりの終わり
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
パンデミック時の人間行動を知りたかった。
批判するのは簡単だけど、現代人はどれほど賢い対応がとれるだろうか。
また、現代の西欧との対比で当時の不潔さが印象深かった。 -
ペストの流行の様子とがヨーロッパにもたらした影響を描いた本
『ペストの大流行により、労働力が減少し、賃金が高騰することで中世の支配者・被支配者の構造が逆転した。』
だそうな。産業革命にもペストが一役かっているのかもね。