時平の桜、菅公の梅

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 92
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041983

作品紹介・あらすじ

世代も身分も境遇も違う二人の男が互いに魅かれあい、そして離れゆく…。国の頂点を目指した男たちの熱き闘い。

感想・レビュー・書評

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  • 時平が主人公で道真に憧れを持ちながらも政治は譲る事ができない。でも心がきれいな印象を与える内容で腹黒さなく終わる。もっと道真や時平を知っていたらこの時代の雰囲気を楽しめたのだろうなぁ。
    ある程度の知識がついた時に読んでいたらよかったかも知れない。

  • 道真や時平を扱う本は初めて読みましたが、
    歴史に超がつくぐらい疎いわたしでも
    「多分、この時平という人物は、今までの書物では散々な書かれ方をされているんだろうなあ」と思えるくらいの人物で。
    「藤原っていうだけで敵!」みたいな小説はよくありますし、
    ましてや最年少で一の人になった時平ならね……。
    それこそ道真を「善」、時平を「悪」と決め付けたような本がいっぱいあるんだろうな。

    でもこの本は違う。
    時平のことも道真のことも簡単な「善悪」で片付けず、
    ”いろいろな面をもった人間”として書かれている。
    そこにはどちらが善で、どちらが悪であるとかいうことはない。

    私はこういうの大好きだ。
    文章も読みやすく、でも美しく、
    読む時のつっかえにならない程度に古語もほどよくまぜられて、
    王朝の雰囲気を出している。

    なんかもういろいろ最高だと思う。
    なんでこれ、直木賞候補にならないのかな?

  • 時平の視点から語られる、道真が大宰府へ左遷されるまで。



    日本史の授業で持ったイメージとはまた違って、興味深かった。

    藤原氏=私欲のみの悪者ってイメージがあったんだよなあ。


    時平視点だからかもしれないけど、道真の考えてることをもっと知りたかった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「藤原氏=私欲のみの悪者」
      確かに、、、そう言うイメージが出来上がってますよね。
      奥山景布子が、何から着想を得たか気になります。
      「藤原氏=私欲のみの悪者」
      確かに、、、そう言うイメージが出来上がってますよね。
      奥山景布子が、何から着想を得たか気になります。
      2012/12/08
  • (No.11-40) 時代小説です。「源平六花撰」「恋衣とはずがたり」の作者です。

    『何もかも恵まれていると回りにも見られ、自分でもそう自覚している貴公子の藤原時平。時平は、後ろ盾もなく若いときから研鑽を積んで、50歳近くなってから菅家としては異例の昇進を遂げた菅原道真が以前から気になっている。彼の才能に魅かれ、憧れているといっても良い。
    思い切って交流を求め、受け止めてもらえたことが嬉しい。高い志を語り合う友として、年齢の差を越えた付き合いが続き、二人はほぼ同等の政治的地位となる。
    しかし理想とする国の形において二人は違った。違うものを目指していることに気がついた二人。もはや並び立つことは出来ない。熾烈な政治闘争が・・・・。』

    菅原道真は超有名人なので、道真がどうなるのかは読んでいる私は知っています。でも、なぜそうなってしまったのかは知らなかった・・・。争った政治相手が藤原時平ということも。重要政治家は全部藤原だから区別をしてなかったし。
    藤原氏がずっと権力の中枢を担っていたと思っていたけど、時平のあたりまではけっこう不安定だったのね。結局彼の頑張りがその後の藤原氏全盛時代に繋がったのだとわかりました。
    (あくまで小説内では)時平は藤原氏の利益を追求したわけではありません。唐のような王がすべての臣民の生殺与奪の権利を持つ国とは違う、天皇を頂きながら藤原氏などの官僚が国を治めることを理想として体制を作ろうとしたのです。

    時平は自分の才能ははっきり言って、まあそこそこ人並みだと分かっていました。だから書類仕事もてきぱきと片付け、求められた資料をまとめることも一人でやり遂げてしまう頭が良い道真を尊敬していました。
    でもあるとき気がついたのです。出来ないことは他の人を起用して、多くの人を使うことこそ上に立つ人間の仕事ではないのかと。そこが時平と道真の道が分かれたときでした。

    菅原道真の事件の真実は分かりませんが、作者の解釈にすごく納得できました。
    ただ主人公が男性なので、感情的にはあまり共感は出来ませんでした。魅力的な女性が何人も出てきたのですが、彼女たちの誰かが主人公で、その人の目から見た小説ならもっと面白かったのではないかと思い、ちょっと残念な気がしました。

    本文では時平は「ときひら」と振り仮名がありますが、題名の振り仮名は時平は「しへい」になっています。「しへい」と読む読み方もあるのでしょうが、「ときひらのさくら」でも良かったのにと思いました。

  • 先日読んだ「白の祝宴」は平安時代の女房達の話だったが、これは藤原時平と菅原道真を中心にした政の世界を描いている。この時代のことはほとんど知らないけれど、なんだか面白かったのだ、これが。それというのも、ここに描かれている時平という人物が好ましい感じだったからだと思う。藤原氏といえば私の中で、栄華をきわめた平安貴族=思いのままに振舞った権力者、といった印象なんだけど、どうしてだろう?ここでは時平は藤氏の長として一族のことも考え、政にも自分のできるかぎり真摯にむきあって若き帝を助ける人物として描かれている。風雅の心にも理解を示し、紀貫之(これがまたいい味だしているんだな)と身分を越えた友情も育む。菅原道真との確執も、善と悪、といった単純な区別ではなくお互いが信じる道の違い、として痛みをともなったものとなっていて納得できる。きれいごとだけではない、でも権力欲ばかりでもない人間時平。頭脳明晰で学問の力のみで右大臣にまで上り詰めた道真。彼が歩んだ道もまた、そうだったかもしれないなぁ、と思える。そんな二人の道がだんだん離れていくのが、どちらが悪いというのではなく描かれていて、だからこそ最後がつらいものとなる。奥山さんという方は名古屋大学大学院をでられた文学博士だそうだ。この時代の人物をぐっと身近に引き寄せてもらって感謝!

  • 日本史の予備知識があったから、ぐいぐいきましたよ。あっ、これっ、知ってる ! 的なねっ。とりあえず、年とった主人公時平殿の老獪さに、心臓が( ・ω・)どきどき。コミュ力不足な菅道には、愛しさと切なさと心もとなさを感じましたよ。史実とか小説では、二人ともすれ違いまくってたけど、もっと話しあえば分かりあえてたんじゃないかな。とりあえず不安が不安をよんで、お互いが疑心暗鬼の状態に…ってどこぞのヤンデレカップルなん。

  • 時代背景もあり初めて聞くような言葉がたくさん出てくるので、現代小説のようにはサクサク読めない。だけど、平安時代の雅な生活ぶりが素敵でページをめくるのが楽しくて、読んでる間はしばらく寝不足だった。
    道真を陥れたとされている、時平目線の小説。
    時平の色恋や、その時代の人たちが恐れていた物の怪などが出てきて、飽きずに読める。
    時平と道真の関係がとにかく切ない。
    目線が時平なので、道真の考えは最後までよくわからないまま。上手いなぁと思った。

  • 仁和2(886)年正月。藤原時平、宮中で元服。光孝天皇が烏帽子親。かたや道真は40歳で讃岐守。
    「菅原伝授手習鏡」の時平しか知らなかったけど、この人結構良い人…と言うか、夭折した親父の我儘の尻拭いに若いうちからごっつ苦労人。そもそもこの話が時平目線なせいもあるだろうけど、なんや宇多天皇も道真も腹の底を見せないし、兄貴が散々奔走して整えた体制に、忠平ちゃっかり…みたいな。

    時平兄弟と温子は異母兄妹だから、実際のところはこんなに気安い感じじゃないとは思うけど…ま、ソコはフィクションだし。時平と貫之の交流ってのも微笑ましい。特に源融の詠草を死後2人で見ちゃうってエピソードがいい感じです。「みちのくの…」ね。

    あと、班子女王が穏子入内を阻止するのに醍醐天皇にしがみつく所、エグくて忘れられない(笑)。ただでさえ醍醐天皇ってば、生母(胤子ね)が夭折した上、「宇多・道真vs時平」の煽りで幼少期に即位させられて、心細げなのに…(泣)どうでもいいけど、宇多天皇って定省時代に尚侍・淑子の猶子になってるのに、こういう時は実母が出て来るものなのか⁇

    廉子女王の娘・褒子を宇多が望むとこはスルーしないで欲しかったなあ。あと、同じ高藤の息子なのに、定国は出てきて定方はスルーとか。史実的には定方の方が重要人物な気が。

  • 平安時代的なものは、歴史的にも全く知識がなく、最初はとても難しかったですが、だんだんと面白く読めました。
    時平がとてもかっこよく描かれて、家柄で出世したけれど、なかなか根回しが上手く、仕事の出来る男っという感じ。
    道真は、頭が良すぎて、この時代に生きるには大変だったのかも・・という印象です。
    時平側からの話だったので、道真側からのものを読んでみたいと思いました。
    紀貫之さんの言葉が、なかなか良かったです。

  • 藤氏の貴公子・時平と、圧倒的な才能を持つ道真。
    相手の才能を認め、共に政を行っていく中での間柄の変化を、じっくりと描く。
    若くして位を上り、藤氏と国を支えようとした時平の、苦悩と成長は、読み応えがあった。
    道真のやり方は、賛同しにくかった。

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著者プロフィール

1966年愛知県生まれ。名古屋大学大学院国文学研究科博士課程修了。文学博士<br>2007年第87回オール讀物新人賞を受賞してデビュー<br>2018年『葵の残葉』(文藝春秋)が第37回新田次郎文学賞と第8回本屋が選ぶ時代小説大 賞を受賞

「2023年 『元の黙阿弥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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