文明と戦争 (上)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044007

作品紹介・あらすじ

戦争は人類共通の自然状態に根ざした現象なのか?それとも文化が発明したものなのか?戦争・戦略の分野で注目されている新進気鋭の研究者が、生物学、人類学、考古学、歴史学、社会学、政治学の最新成果を脱領域的に横断し、多角的に徹底検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 進化論や世界史の知識が横断的に必須なので、読み進めるのが相当にエグかった。

  • 戦争について、その起源から現代、これからを、進化論、ゲーム理論を使いながら学際的に辿った大著。戦争を通していろいろな角度から文明の歴史について、例えば都市国家、馬が家畜化される前後の牧畜民の姿などなど、興味深い視点が提供される。著者の思いが脱線気味の時もある印象だが、グローバルな事例を時点・場所を超えて縦横無尽に駆使しながら、自身の考え方を説明していく姿勢には好感が持てる。「歴史と戦争研究会」の訳、ということで、メンバー間のクオリティのばらつきが非常に大きい印象で、また一部誤植があったり、生産性と経済規模が混同されていたりと、きちんと監訳が機能しているのか心配になるところもあるが、著者の思いが感じられる大作であることを勘案して★五つ。

  • 戦争論関連の名著

  • 最近の研究では、同種間の殺害は、動物においても餌食やパートナーを求めて競争する中で人間と同程度に行われている。

    狩猟採集民は、数世代で構成される拡大家族(氏族)で生活を送った。成員数は20~70人の間で、典型的な人数は25人だった。いくつかの家族集団は地方集団の下に集まり、血縁関係にある多数の地方集団は方言部族となり、固有の名前を持って民族としての意識をはっきり持った。地方集団は祭事のために季節ごとに集まり、共同の儀式を執り行うとともに結婚が行われた。地方集団の規模は175~1400人で、平均500人程度だった。

    周辺の地方集団とは、交換、共同儀式、同盟、戦争が行われた。狩猟採集民社会の90%で暴力を伴う紛争が起きており、ほとんどの集団では、少なくとも2年に1度の割合で戦争が起きていた。これは、他の人間社会と同等かより高い数字で、多くの研究において、狩猟への依存度が高いほど戦争の頻度が高まると結論付けられている。

    暴力的な攻撃は、潜在的なものとして人間の本性に備わったものであるといえる。攻撃性は生存闘争に用いられる先天的なもので、環境の影響を受ける選択的なものである。

    人間は道具を作る能力によって、より死をもたらしえる第一撃能力を持ったため、他の動物では効果的な抑止力が機能しなくなった。人間は、自身を傷つける恐れから公然と戦ったりしないが、相手が武装しておらず脆弱な場合には奇襲で殺すことができる。さまざまな地域のデータによると、狩猟採集民の成人間の暴力による死亡率はおよそ15%(男性では25%)程度であることを示している。

    農耕に移行したことによって、恒久的な生活基盤地域への居住、カロリー摂取の増加、授乳期間が短くなったこと、働き手の需要が増大したことなどの要因が組み合わさった結果、女性の出生率は4~5人から6~8人へ増加した。

    エラム・ドラヴィダ系の諸言語は、かつてはティグリス川からインド洋まで広がっていた。新石器時代の近東の農耕民や農耕の南西方向への拡散は、おそらくアフロ・アジア(セム・ハム)系の諸言語に反映されている。

  • ふむ

  • https://twitter.com/naokis/status/241872206907469825『銃・病原菌・鉄』、『繁栄』ときたら、次はこの本を読むしかないだろうと思わせる人類史の骨太本。しかし1000ページはきつい。どうする?

    2012.09.01 HONZで見つける。

  • (チラ見!)

  • 上巻を読了。

    「人間にとって戦争とは何か」という二十一世紀に生きる私達にとって避けては通れない問いについて、幅広い知見をもとに書かれた作品です。

    上巻だけでもかなりのボリュームですが、全体の構成が良いからか、思っていた以上にさくさく読めました。

    自分のような門外漢にとっては詳細に紹介された事例がときに詳細すぎるように感じた部分もありましたが、部ごとにまとめがなされているので助かりました。

  • 戦争は初期の狩猟採取民族でも行われていた。アボリジニや北米西部沿岸先住民の事例。チンパンジーも群間で争い殺害を行う。
    アボリジニー、サモア、アフリカ、南米などの狩猟採集/園芸/牧畜民での殺人はルソー主義者の理想と違い桁違いに高い。
    戦争の発生起源、文明との関わりに迫るための考察がビッチリとこれでもか!という勢いで展開される。
    タイトルで面白そうだと手を出しましたけど、軽い気分で読みきれる本ではありません。かなり面白く、下巻も興味もあるんですが読み出す気力が沸きません。
    この文字と内容の詰まり具合は「生まれて初めて」レベルです。上巻だけで「吉川英治三国志全巻」と同じだけの時間要しました。中学生のときに「大国の興亡」に手を出したとき以来の苦闘です。

  • ダイヤモンド氏の著作が好きな人はこの本もお勧めです
    銃・病原菌・鉄を始め、学問ジャンルを横断的に網羅しながら、人間と戦争・戦闘という主題を、淡々と誠実に説明しようという試みは好感がもてます

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著者プロフィール

アザー・ガット
テルアビブ大学政治学部エゼル・ワイツマン国家安全保障講座担当教授。一九五九年生まれ。イスラエル・ハイファ大学卒。テルアビブ大学(修士)、英オックスフォード大学(博士)、ドイツのフライブルク大学、米エール大学などで研究や教育に携わる。軍事史及び戦争・戦略研究の分野で著作を発表。著書に自身の過去3冊の研究をまとめた『軍事思想の歴史――啓蒙主義から冷戦まで』(A History of Military Thought: From the Enlightenment to the Cold War [Oxford: Oxford University Press, 2001] )。

「2022年 『文明と戦争 (下) 人類二百万年の興亡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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