- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120051227
作品紹介・あらすじ
日中戦争が終結して「戦後」と呼ばれる時代が日本と中国に到来してから、すでに70年以上もの歳月が流れた。1972に日中は国交を回復したにもかかわらず、両国の間には歴史認識問題が存在し、両国の政治、外交、社会がしばしば揺さぶられる事態となっている。
日中双方の有識者がこれまで積み重ねてきた対話と共同研究をとおして明らかになったことは、「歴史認識を近づけることが可能な一方で、歴史事実の解釈をすべて一致させることは困難だ」という事実である。本書は、ここを出発点に、歴史認識の異同の中身を多角的に知ろうとする姿勢こそ両国の社会にとって有益である、との信念を実践するために編まれている。
本書は、日中戦争へと至った過程を、一つ一つの歴史事実を紐解き、それらを積み重ねていきながら、19世紀半ば以降の近代西洋を中心とするグローバル化の波がその後の日中両国の政治や経済、文化のあり方をどのように特徴づけたのかを総合的に説明したことが大きな特徴である。
感想・レビュー・書評
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直近の日中共同研究論文集。こうやって日中双方の言い分が併記されたものを読むと、テイストやトーンの違いがくっきりと現れ、立場による認識の違いを痛感する。こういう事を繰り返していけば、少なくともアカデミズムでは認識の一致に近づいていく可能性はゼロではないかもしれないが、それと利害の絡む政治の世界とは別問題なのかと。
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日中戦争へ至った過程を紐解き、19世紀半ば以降のグローバル化が以後の日中両国の政治や経済をどのように特徴づけたのかを説明する
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東2法経図・6F開架 210.74A/H42n//K
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笹川平和財団による日中共同研究の論文集。日中戦争へ至る「過程」、原因と背景が主テーマなので、満洲事変も含む幅広い時期を扱っている。
8年戦争か14年又は15年戦争かの論争を直接扱っているのは、後者に与する臧運祜論文だが、日本側筆者を含む他の論文でも、満洲事変と日中戦争を一連の流れとして描いている。上述の「過程」がテーマである以上はそうか。一方で臧運祜論文も含め、1930年代半ばに日中関係が一旦は安定化したことが指摘されてもいる。門外漢の自分からは、この論争自体、両者の立場は単に相対的なだけじゃないかと見える。
どういう立場を取ろうが、局地的な満洲事変の後に全面的な日中戦争となったのは事実だ。この時期を、両国関係及びそれぞれの国内要因のみならず、特に国際要因(大国の協調というワシントン体制の崩壊、外部勢力特に独ソの介入)から解説した于鉄軍論文が興味深かった。