- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120051630
作品紹介・あらすじ
人生のダメな時期、万歳。人生のスランプ、万々歳。青春小説の金字塔、待望の続篇。バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐこの男。名を横道世之介という。いわゆる人生のダメな時期にあるのだが、なぜか彼の周りには笑顔が絶えない。鮨職人を目指す女友達、大学時代からの親友、美しきヤンママとその息子。そんな人々の思いが交錯する17年後。オリンピックに沸く東京で、小さな奇跡が生まれる。
感想・レビュー・書評
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本とゆうのは読み手側からアクション起こさないと物語が始まらず止まったままになってしまう。とりあえず読みたくなったらいつでも手の届くところにスタンバイしてありましたが開くことができず数日が過ぎてました。なにせ前作で世之介が40歳で死ぬことが分かってるだけにページをめくり時間を進めるのが辛くって。
とゆうことでしたが落ち着いたので開けてみると、そこには、大学を留年してようやく卒業しバイトとパチンコで食いつなぐ24歳の世之介がいました。
100円ショップとか出始めた頃の1993年と2020年東京オリンピックのマラソンの場面とが交差する物語です。
初版が2019年2月なので東京オリンピックが始まる前に書かれた作品で、コロナの影響で1年延期になったことや暑さ回避でマラソンは札幌で行われた事までは予測不能だったところにタイムパラドックスが生じているのですが、そこからいろいろ想像させてくれました。
世之介が桜子と結婚していたらどんな未来だっただろうかとか・・。
7月の章を読み終えて、寝落ちしながらせめて10月の章までは読もうと遠ざかる意識に夢見心地でいると眠ってしまったようで夢の中に世之介が現れて、スクランブル交差点で信号待ちしている世之介と知り合いたちが青になり交差点で出会い挨拶したり声かけたりしながら、それぞれの方向に向かって歩きだす姿がありました。寿司職人を目指しているハマちゃんとか、大学時代からの友人コモロン、桜子に亮太、桜子の兄の隼人。夢の中の世之介の歩みはゆっくりで信号変わってしまっても何処行くか決められず立往生してたりでしたが、うっ、これって冒頭のデジャブだぁw
読了してみて、
整理せずに引出しにしまい込んでた数々のスナップ写真をランダムにみてるような。順序正しく思い出せないけれどあの頃の匂いとか感情が浮かんできてその1つ1つのシーンに確かに世之介が寄り添ってくれてたんだと、別になんの頼りにもならない奴だったけど・・・。
そうそう桜子の元夫が登山家だったとゆうところが引っかかりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
また会えました。
1年留年し、大学を卒業したもののバブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐ世之介は、24歳。
パチンコ台の取り合いに負けた相手は、居酒屋の店員であり、しかも散髪屋の前でも会うという…。
そこで五分刈りにした浜本は、鮨職人を目指す。
ケンカ相手がスルッと友人になる面白さ、いい。
まぁ、ダラダラと過ごしながらもどん底だとは思ってないのが世之介の個性と捉えるのか。
留年組の小諸(コモロン)の部屋から双眼鏡で見つけた母子・日吉桜子と亮太との妙な出会いから交際まで。
どっぷりと桜子と兄や友人との濃い時間を過ごし、桜子には2度プロポーズしたのにフラれる世之介。
久しぶりに行った散髪屋の理容師から軽そうな奴から責任感を感じたと言われる。
関わってきた人や出来事で、考えなさそうな雰囲気なのにしっかり大人になっているのかもしれない。
コモロンとのアメリカ旅行で、途中で離れてタクシー詐欺に遭う…なんてこともあり。
お隣さんは、集団生活をしている中国人でその1人が救急車を呼ぶほどの病だったり…。
桜子の兄・隼人の友人・光司の死であったり…。
まぁ、いろいろあるわけだ。
今回のラストは、日吉隼人が甥の亮太に宛てた手紙。
27年後である、オリンピックで活躍したことを誇りに思うことから始まり世之介のことをよく思い出すと…。
頼りない世之介の顔が浮かぶということ…。
世の中がどんなに理不尽でも、自分がどんなに悔しい思いをしても、やっぱり善良であることを諦めちゃいけない。そう強く思うんです。
この文を読んで、前回も読んだはずなのに忘れてしまっていた自分に反省…。
そうなんだ、世之介は善良なんだよな。
何やってもまぁ許せるってことは、善良なんだ。
この時代に出てくる紫のマークⅡも「ジップロック」が新商品というのも今読むからより楽しめた気がする。
再読してよかった
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また世之介に魅了された一冊。
前作は笑いや微笑ましさ多めの印象だったけれど、今作は涙多め、泣きどころ多め、またしても世之介の魅力に魅了された巻だった。
大学を卒業後、パチンコとバイト生活から始まった彼の春夏秋冬。
人から見れば人生のどん底。
だけどやっぱり彼は彼らしく捉え飄々としていたのがうれしい。
どん底だから出会えた縁、見えた自分以外の周りの人生、そして流れている時間の愛おしさ。
それらが伝わってくるたびに涙も流れまくり。
亮太くんと過ごした時間にはこちらまで心柔らかく包まれた。
次なる彼の"善良"な日々が楽しみ。 -
読みたかった横道世之介の続編。
ああ、どこまでいっても世之介は善良なヤツなのだ。
留年せずにそのまま行けば、最後のバブル就職に間に合ったのに、どこまでもタイミングの悪い世之介。
パチンコとバイトで食いつないでいるのだが、風に吹かれるまま気の向くままといった感じで、出会う人びととの縁にからめとられながら楽しそうに生きている。
どう見ても世間的には「負け組」なのだろうけれど、「勝ち組」より幸せに見える世之介。
バブル期を多少なりとも知っている世代には、懐かしい時代の色が浮かび上がる。
2020東京オリンピックにまつわる話が物語の一部をになっているのだが、この本は2019年に出版されたのだった…そこだけパラレルワールドの話のように感じられる。
2021.3.30 -
この本を読みはじめる前に、ぜひお願いしたいことが1つ、あります。
それは「表紙写真を5秒間、じっくりながめること」です。
前作を知らずに手にした方にとっては特に、この本の表紙写真は、なんてことない写真だと思います。
そして前作を読んだ人にとっては、「この子誰よ!?」的な写真です。
ですがそうした思いはひとまず置いて、本編を読みはじめる前に、ぜひとも表紙の写真をじっとながめてみてください。
そして読み終えてからもう一度、じっくり表紙写真をながめてみてほしいのです。
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前作「横道世之介」は主人公・世之介の大学時代の1年間のお話でしたが、今回の「続 横道世之介」は、世之介24~25歳の1年間のお話です。
今回のお話には、24~25歳の世之介の日々とほぼ並行して、2020年の東京オリンピックの様子が、書かれています。
はじめは世之介と東京オリンピックがどうつながるのか、さっぱりわからずでしたが、読み進めるにつれ「そういうことなのか…」と、胸がぎゅっとしました。
前作ですでに、もっとオトナになった世之介がどうなったのかは明かされていますので、「横道世之介」と「続 横道世之介」、どちらか読んでも、話は通じます。
けれど「どちらから読めばいい?」かと聞かれたら、わたしは「どちらからでも」と答えるでしょう。
なぜなら「横道世之介」には、そのときの世之介が、「続 横道世之介」には「続」のときの世之介が、そこにいるだけですから。
順番は関係ないのです。
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「自分て役に立たないヤツだな」とか、「自分の人生なんて、いつ終わってもいいや」とか、生きているとそんな気持ちになることが、1度や2度、ありますよね。
「続 横道世之介」の世之介も、見る人がみればおそらく「なんの役にも立っていない人」です。
正社員でもないし、この先どうするとかもないし、24歳だし、正直この先どうするつもりなの?アナタは、という感じです。
世之介も「どーすんだろオレ」と心の角で思いながらも、生きています。
けれど、そんな世之介の姿をみていると、とてもうらやましくなっている自分がいます。
「人間には、役に立たなくてもいいから、誰かそばにいてほしいときがある。」(41ページ)
役に立たなくても、そばにいてほしい人。
横に居てくれるかわりに何もあげられないとしても、それでも横に居てくれる人。
それが横道世之介という男です。
いやでも変わっていく自分の隣に、変わっていく自分をふと不安になったときに、何も言わず、けれどそこに「居てくれる」男、それが横道世之介です。
もしそんな人があなたの横にすでに居たとしたらもう、しあわせラッキー意外のなにものでもありません。
でも、なかなかそうもいかないのが現実です。
それでも、誰かにそばにいてほしいときは、否応なくおとずれます。
だからこそ「続 横道世之介」という本は、必要なのです。
そっと本を開けばいつでも、「役に立たなくてもいいから、そばにいてほしい」世之介は、すぐそこにいてくれるのですから。
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この本のなかには、世の中の時がどんなにすぎても、時代が変わったと言われても、それでも忘れたくない日々がつまっています。
過去は過去のままま、時間がいくら経っても変わることはありません。
だからこそ、どんなに「自分」の未来が進んでも、いつでも本を開けば、そのままの世之介が、いつでもそこに居てくれるのです。
さてさて、「続 横道世之介」を、あなたも読み終えたころでしょうか。
パタンと本を閉じたら、表紙写真をながめつつ、ゆっくりとした時間をお過ごしください。では。 -
傑作の続編も傑作でした。
世之介なき現代とバブル後崩壊の過去エピソードを行き来する構成の妙が冴えています。
いろいろブレることはあっても、基本、善良であること。
少しでも近づきたい! -
本作が「横道世之介」の続編なので、世之介が亡くなると分かっていて最後まで読むのがとても辛かった。それでももしやと期待して別なラストに一縷の望みをつないだがあり得るはずがない。前作は大学1年生の1年間が描かれていたが、今作は留年して卒業した後の24歳から25歳の1年間が描かれている。バブル期最後の売り手市場に乗り遅れ、就職できずに相変わらずウダウダしている世之介。20年後の2020年に浜ちゃんやコモロンや桜子が世之介のことを思い返すシーンも挿入されている。
作中に世之介の存在を善良であることの奇跡と書いてあった。世之介の友人であるコモロンは世之介をキツイ時に併走してもらう持って来いの相棒と言い、写真コンクールで審査員をしていたプロ写真家は、世之介の写真を善良さがある作品と評していた。
一番印象深かったのは、桜子の息子・亮太が公園の砂場で自分より小さい子のおもちゃを取ってしまい、「僕の方が強かったから」と言い訳をして叱られていた時に、世之介が「弱い人間は弱い人からおもちゃを取ろうとする人のことだ。強い人間は弱い人に自分のおもちゃを貸してあげられる人のこと」「強い人間っていうのはあんまりいないんだ。本当に少ないんだ。でも、お前の母さんはな、亮太のことをそんな人間にしたいんだよ。分かるか?」と話し、更に諭した言葉。「亮太には見込みがあるからだよ。たくさん子供がいる中で、本当にちょっとしかなれない強い人間におまえならなれるかもしれないって思っているからだよ。実はな俺もそう思った。初めて亮太に会った時『ああ、こいつは強い人間になれるかもしれない子供だぞ』って」。世之介は来るものを拒まずですべてを受け入れているようでもあるが、彼なりに譲れないものを持っている。バイト先の会社で盗み疑惑をかけられたり、アメリカで同乗詐欺を受けるなどと、貧乏くじを引いてもへこまずに、お人好しで明日を信じて生きる明るさが彼の魅力だろう。
作中最後に、隼人が亮太宛てに書いた手紙が最後に添えられていて、そこに世之介へ対する著者の気持ちがこめられていると思った。
『世界中を船で回っていると本当にこの世界にはいろんな国があります。そしていろんな問題があります。眼を覆いたくなること。悲しみ。痛み。憤り。本当に奇跡でも起こってくれないかと思います。そんなとき、ふと浮かんでくるのが、あの頼りない世之介の顔なんです。世の中がどんなに理不尽でも、自分がどんなに悔しい思いをしても、やっぱり善良であることを諦めちゃいけない。そう強く思うんです』
2020年、亮太は東京パラリンピックで視覚障害者マラソン選手の伴走者をつとめ、コモロンはパラ開催に関わっていた。世之介の「善良」なるものと出会った人たちが、彼の醸す「善良」と関わり、その後の生き方に影響を与えたのだろうと思う。
タイムリーにも今朝の新聞俳壇に神戸市に住む男性の俳句が取られてあった! 彼のファンがここにも居たと思うととても嬉しくなった。”風花や空に世之介行くごとく” -
続編も面白かった。大学を5年かけて卒業した後の、24〜25歳の世之介の1年間。「学生」という身分がなくなると「青春」と言い難くなり、学生の身分の大きさを実感したが、良い意味で偏見を持たない世之介の日常は相変わらずマイペースで幸せ(に見える)。世之介の人柄が周りの人々を惹きつけてやまず、前編から最後がわかってしまっているのが切なくてたまらないが、少なくとも世之介が濃い良い人生を送ったことは続編からも良く分かった。
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世之介くん続編。大学卒業後、バイトとパチンコで食いつないでいる。
パチンコ暮らしをしていても、世之介さんはマイペースで善良。読んでいてこちらもその調子に飲み込まれる。今回も周りとの人との関わり合い、楽しかったなあ。。世之介といると周りが安心するんじゃないかな。そういう人は貴重だなあ。
寿司職人の女友達は最初だけで後は影が薄くなっちゃったかなと感じた。