圓朝

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051654

作品紹介・あらすじ

幕末・明治の芸能を代表する、近代落語の祖・三遊亭圓朝。江戸から明治への激変期にあって、伝統的な話芸に新たな可能性を開き、「怪談牡丹灯籠」「真景累ヶ淵」などが今なお語り継がれる伝説的な噺家の一代記。母・兄に猛反対されるも芸の道に進んだ圓朝。歌舞伎の技術を盛り込んだ芝居噺で人気を博すものの、師匠や愛弟子から嫌がらせにあい、窮地に追い込まれる。数々の苦境を味わわされる中、自らが生みだした怪談噺や人情噺で独自の境地を開き、押しも押されぬ人気咄家に成長するが・・・・・・波乱万丈な芸道を這いつくばり、女性関係や息子との確執にも悩んだ圓朝。新田次郎賞・本屋が選ぶ時代小説大賞W受賞の奥山景布子が迫る、「伝説的落語家」の素顔とは――

感想・レビュー・書評

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  • 最近、某公共放送のBS歴史番組で三遊亭圓朝を取り上げていたので何気なく見ていたら、なかなか興味深いテーマだった。
    歌舞伎もそうだが、落語も江戸時代と明治維新後とではガラッと変わってしまったらしい。

    この作品を読むと、明治新政府が出張ってくるまでの落語はなんと自由だったことか。
    高座の背景に書き割りを置いたり道具を使ったり、文楽の人形まで登場させたり。

    幽霊モノ、怪談モノを得意としていた圓朝が、道具仕立てを得意としていた圓朝がその芸風を変えざるを得なかったのは明治新政府による締め付けだったわけだが、その締め付けの中で面白いものを、自分らしいものをと模索していく。
    人気が出るにつれ増えていく弟子たち。その弟子たちを育て見届けるのも師匠である圓朝の役目なのだが、その難しいこと。

    何となくこういう噺家というのは破天荒な人生を送っているイメージなのだが、ちょっとつまみ食いのつもりの女との間に子供が出来た…という以外は割ときちんとしている。
    自分に嫌がらせをした上に疎遠になってしまった師匠の晩年も面倒を見たり、羽目を外しては迷惑をかける弟子たちの尻拭いをしたり、危うい息子に翻弄されたり。

    名人と言われ未だに誰も名跡を継いだ者のない(幻の二代目はいたらしいが)圓朝の人生を辿るにはわかりやすい一冊。
    だが他のレビュアーさんも書かれているように、かなり淡々としていてせっかくのドラマチックになりそうな場面の幾つかもサラッと流されているのが残念。
    小説というよりは圓朝の人生の概要を辿ったような内容。

    個人的に好きだったのは弟子のぽん太。社会人としては行き辛い人間だったかも知れないが、圓朝のような理解ある保護者がいれば上手く生きられる。
    それから一度は圓朝の元を去りながら戻ってきた新朝も印象的だった。

    ちなみに現在放送中の某大河ドラマに登場した橘家圓喬(松尾スズキが演じていた)も一時圓朝の元にいたらしい。

  • 圓朝の子供時代から始まって、亡くなるところで終わり。まあタイトル通り。勿論、無理に盛ることはないけど、少し淡々とし過ぎな感も。個人的には現在も谷中で拝める幽霊画コレクションの話はもっと突っ込んで欲しかった。
    あと、鏑木清方は、親父の条野採菊の方がしっかりと登場する。「随筆集 明治の東京」だと一緒に旅行したみたいに書かれてたけど。
    それから、圓朝の弟子で出来は良いけど仲間内でも余り人気なさそうな「圓喬」って、「いだてん」に出てる、北野武のお師匠様だよねー。

  • 江戸の終わりから明治時代に活躍した落語「中興の祖」と呼ばれる三遊亭圓朝。新しい噺を考えたり、弟子について考えたり、金銭面で悩んだりする伝記的小説。

    なかなか面白かった。

    「真景累ヶ淵」や「塩原多助」の誕生秘話的な話あり、幕末、維新の大激変の時代の雰囲気あり、当時の風俗もあり。

    落語を知らなくてもほとんど関係ないように書かれてるし、とても読みやすい。圓朝については興味があったので、なおさら良かった。

  • 大圓朝 三遊亭円朝の一代記。奥山さんらしい語り口で、どんどんお話が進む。江戸から明治へと激動する時代のなかで、近代落語の礎を築いていく。次々と話を拵えていく姿、素噺に転向後の高座での姿、女性に苦労する姿、などなど、生身の圓朝を実際に見ているようだった。

    名人芸、見てみたいですね。寄席に行きたくなる一作。

  • 圓朝のドキュメンタリー的な読物。
    淡々と圓朝の経歴やら人間関係が語られ、少し盛り上がりに欠ける感じがした。
    小説なのでもう少し娯楽性に振っても良かったのでは。

    でも圓朝の人となりを知るキッカケになった。

  • 伝説級の噺家「三遊亭圓朝」のお話。
    読む前はかなり期待していたんですが・・・ちょっと期待外れでした。なんというか実際のエピソードを小説の形式でただ単にひたすら追っているだけみたいな感じで、結局圓朝という人がどういう人だったのかいまいち掴みづらい。とにかく史実を忠実に・・・という方針なのか知りませんが圓朝さんにとって大きなエピソードであろう出来事も案外あっさりと次々にベルトコンベアのように片付けられていっている印象。ご本人のエピソードはこれ以上ないくらいに興味深いものがいっぱいなんでしょうが、それを描ききれなかった作者さんの力量不足なんじゃないでしょうか?厳しい感想ですけども。
    小説なんだから圓朝さんの感情や心の動きみたいなものはもっと、創作でもいいので、読ませるようなつくりにしてほしかったな、と。

  • エピソード集。席亭になろうとして挫折するのは三遊亭の性なのか。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 圓朝のことを知らずに読み始めましたが、とても有名で偉大な落語家さんだとよくわかりました。

    圓朝は落語の才能に長けていたけど、弟子を育てる才能にはあまり恵まれなかったのかな。
    弟子に裏切られるのはつらい。

    師匠の圓生から嫌がらせをうけた過去があるからか、弟子にはあまり強く言えず、弟子からみても、世間からみても、『良い師匠』でいようとすることに縛られていたのではと感じました。

    自分の経験や身近な話から噺を作ったりするところ、自分でもこういう話があったら面白いな、人物や場所を変えてみたらどうだろう…などと妄想を膨らませることが多いのでめちゃくちゃ共感ポイントでした。
    ただ、あそこまで露骨に元ネタがわかるよう作ったら、傷つく人も出ますよね…。
    才能があるからギリギリ許されたのでしょうか…。

    あとぽん太がすごく可愛いです。

  • 落語好きにとって圓朝像はそれぞれにあり
    逢うことがかなわなかったからこそ 尊い存在になっている
    本書はそのイメージを壊すことなく
    新たな圓朝の姿を塗り重ねることができた
    芸と生活と
    芸に携わる者の永遠のテーマであり
    生きていてこその芸であり
    生きるための芸ではない
    圓朝の生涯の苦悩を思うと苦しくなる

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著者プロフィール

1966年愛知県生まれ。名古屋大学大学院国文学研究科博士課程修了。文学博士<br>2007年第87回オール讀物新人賞を受賞してデビュー<br>2018年『葵の残葉』(文藝春秋)が第37回新田次郎文学賞と第8回本屋が選ぶ時代小説大 賞を受賞

「2023年 『元の黙阿弥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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