月人壮士 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.20
  • (11)
  • (31)
  • (58)
  • (20)
  • (4)
本棚登録 : 377
感想 : 48
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051975

作品紹介・あらすじ

気鋭の歴史作家が描き出す、聖武天皇の真実!


'756年、大仏建立など熱心に仏教政策を推進した首(聖武)太上天皇が崩御する。道祖王を皇太子にとの遺詔が残されるも、その言に疑いを持った前左大臣・橘諸兄の命を受け、中臣継麻呂と道鏡は、密かに亡き先帝の真意を探る。しかし、ゆかりの人々が語るのは、母君との尋常ならざる関係や隔たった夫婦のありよう、御仏への傾倒、迷走する政……と、死してなお謎多き先帝のふるまいや孤独に沈む横顔ばかりで――。


伊坂幸太郎、朝井リョウをはじめとする人気8作家による競作企画【螺旋プロジェクト】の1冊としても話題!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 序章からして難解であった。
    聖武天皇である首(おびと)さまの崩御ではじまる。名前の読みからして難しい。人物関係も天皇家・藤原家略図とにらめっこ。この時代の歴史はごちゃごちゃしていて苦手なんだよなと思いながら読み進めていきました。
    首さまが、死の間際に残した遺詔(いしょう)つまりは最後のみことのりを探せと命じられて、看病禅師の道鏡が関係者に話を聞くというスタイルです。関係者が一方的に話す形式ですが。
    国を治めてきた天皇の血統が山なら、藤原氏は海ということで、螺旋プロジェクトの話につながつていきます。
    半ばぐらいからは、人物関係が頭に入ってきて俄然面白くなってきました。
    藤原氏と天皇家の関係性の解釈としても、面白いですし、この本を読んでいたなら、この時代の日本史の学習も楽しくなると思います。長屋王の変もよくわかりました。
    天皇の即位順がごちゃごちゃしていたり、何度も遷都を繰り返したりとなんでなんだろうと思っていましたが、この本を読んで、こういう理由だったのかもしれないと理解できました。
    澤田さんに感謝!澤田さんの他の本も読んでみたくなりました。

  • 聖武天皇の話って言えるのかな~
    ちょっと難しかった。

    螺旋プロジェクトはあんまり関係ないような…

  • 初めて生れながらにして天皇を約束され、絶対的な富と権力を有し奈良の大仏を建てた聖武帝ですが、その治世は謎に満ちています。多くの歴史学者が謎に挑んでいます。澤田さんは、外堀からのアプローチで聖武像を際立たせようと試みました。ただ、物語は盛り上がりに欠け、残念ながら謎の核心に迫れたとも思えません。血を問題とされていますが、それは蘇我氏の時も同様です。先ずは、取り憑かれたように都を転々とした理由が知りたいですね。

  • 螺旋シリーズ最後。
    聖武天皇の死後、さまざまな人からの回想という形で聖武天皇を描いた作品。
    螺旋シリーズらしさは全くなく、交わらないはずの海と山かね子供が聖武天皇⁉️螺旋シリーズの前提が覆されている。
    螺旋シリーズとしてみたら、星1か2。
    聖武天皇の人柄のようなものはよく描かれていたが、そこは螺旋シリーズの影響か、苦悩が前面に出過ぎてた。残念。

  • 月人壮士
    澤田瞳子

    ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

    ★螺旋プロジェクト作品---古代

    初めのうちは漢字は読めないわ、言葉の意味もよく分かんないわで、もう雰囲気で読んでやれ!と半分諦めながら読んでたら知らないうちに惹き込まれてた。

    文章が語り口調だったのが面白い。そう思って振り返ると、序章は難しかったけど、その一の橘諸兄さんのところからはちゃんと理解しながら読めてたし、この本を読み終えられたことで、自分にちょっと自信が持てた。

    道鏡と中臣継麻呂の聖武天皇の遺言探し。そう言えば道鏡って、天皇の座を狙ってた僧侶じゃなかったっけ?

    聖武天皇の色んな「顔」を知れた気がする。気がするだけだけど。天皇は神ではなく悩める人間だった。いや、天皇(神)と藤原(人間)の混血だからこそ悩むのか。

    「螺旋プロジェクト作品」だけど、あまり海山要素(皇族が山で藤原が海)いらないかも?山が海に切り崩されていくっていう意味では分かりやすくもあるけど。
    とは言え、螺旋じゃなかったら、この美しい装飾の本でもきっと手に取っていなかっただろう。そして澤田瞳子さんを知らないまま、こういう作品に触れることも無かったかもしれないと思うと、良いプロジェクトだと思う。

    2022/09/26 読了 (図書館)

  • ちょっと興味の対象から外れる。

  • この時代は好きなんですが、
    何故かなかなか読み進められなかった。

    「螺旋プロジェクト」はあんまり…

  • 「螺旋プロジェクト」の一作。中世・近世編の「もののふの国」が割と面白かったので、古代編の本書も読んでみた。

    聖武上皇(首:おびと)は、孝謙天皇(阿倍)の皇太子として道祖王(ふなどおう)を指名する詔を残して崩御したが、異なる遺詔があるはず、と橘諸兄から探索を命じられた中臣清麻呂と道鏡が、関係者にヒアリングして首上皇の真意を探り当てる、というのが本書のストーリー。

    本書では、大王(おおきみ:天照大神に連なる天孫)の皇統の山に対して、藤原氏の血筋が海として対立している。とはいえ、皇室は藤原氏にすっかり取り込まれてしまっており、勝負はほぼ着いているが、唯一、首天皇/上皇の心の中に、(藤原氏の後押しで皇位に就いた一方、自らに流れる藤原氏の血が皇統を汚している、という)葛藤の形で残っている。

    光明子の「首さまは皇統一の裔にして、この国を照らす日嗣の王。されど磐石なること山の如きその御身は、とうの昔に藤原氏に蝕まれ、その血と肉はこの国をひたひたと侵した海の如き藤原氏の女より受けたものじゃった。それだけに首さまは帝の責務と自らの血と肉の乖離に苦しまれ――そして末期に及び、ご自身に比ぶれば藤原氏からはるかに縁遠い道祖王を、後嗣として選ばれたのではなかろうか」という語り、藤原仲麻呂の「首さまはかつての大王の如く、天日嗣に連なる非の打ちどころのなき統治者ではない。山の形を借りた海、日輪の真似をした哀れなる月人荘士じゃ」という語りが二人がたどり着いた真相。

    この時代では、藤原仲麻呂が恵美押勝として権勢を振るい、次いで孝謙上皇(阿倍)の寵愛を受けた道鏡が皇位に近づき、更に天武系から天智系へ皇統がチェンジする一連の政変が断然面白いと思うのだが…。本書は、これらの政変に直接触れていないので、(著者は敢えて描かなかったのだろうけれど)何だか物足りない。また、遷都を繰り返したり仏教に深く帰依したり、といった聖武天皇の特異な行動を、単純に藤原氏の血を引く聖武天皇の心の葛藤のせいにしているのもやや強引だと思った。というわけで星三つ。

  • 期待の割にはいまひとつな螺旋プロジェクトの一冊
    月人壮士=聖武天皇
    山海対立がわかりづらい 消化できていない感じがする

  • 図書館で借りた本。天皇は天照大神なのに仏に救いを求める聖武天皇。この月人壮士は聖武天皇の事である。彼は天皇一族の純血ではない出生からくる苦悩に生涯悩まされ、自分を産んだ藤原家出身の母を恨み、これからも天皇一族として続いていく藤原家の血筋をどこかで止めたかった。その反面、藤原家繁栄の為にライバルを抹殺したりもしている。鑑真や道鏡も登場し、ストーリーは聖武天皇について10人からインタビューをする形式で書いてあるので読みやすかった。

全48件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1977年京都府生まれ。2011年デビュー作『孤鷹の天』で中山義秀文学賞、’13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞、’16年『若冲』で親鸞賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、’20年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、’21年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。近著に『漆花ひとつ』『恋ふらむ鳥は』『吼えろ道真 大宰府の詩』がある。

澤田瞳子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×