わたしの良い子 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052309

感想・レビュー・書評

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  • 特に子育て中の人には共感を通り超える何かを得るものがあります。
    シングルマザーの妹、鈴菜が息子の朔を置いて沖縄に行ってしまった。姉の椿が朔の面倒を見る話だ。

     いつも椿と手をつないで、なかなか集団登校の輪に入れなかった朔も少しずつ成長しする。
    椿の手を離し、ひとりで輪の中へ行く。

    筆者から頂いた言葉。
    ①守るもの優先順位を間違えないこと。
    ②あなたの手を離さないのは、いつかこの手を離すため。
    ひとりで生きていけるその日まで、しっかり手を繋いでいよう。

    日常の在りがちな幸せに感謝し、しんみりと本を閉ざしました。
    いつか自分の子供が巣立つ時、この著書を渡そう。

  • 子育ては予想外なことの連続で、想い描いたように上手くなんかいかない。
    「良い子」の定義なんてわからないけれど、私は子どもたちに「良い子だね」って言いたい。
    親の願いや理想は色々あるけれど、笑顔で生きていてくれればそれでいい♪

  • 出来ないことが多過ぎた。何故自分だけが出来ないのか、考える隙も無い程に、それを当たり前の様に出来ない自分が悪いのだと塞ぎ込んで。たまに何か出来た時に「やれば出来る子だから」と言われ、やっても自分には出来ないこともあったのだと気付いたのは大きくなってからのこと。
    何故、もっと各々が自由じゃいけないのか。
    大人になるにつれ、出来る様になることも増えた。けれどそれは強くなったからでは無い。ではなんで。どうして弱いままなのだろう。なんで人は嘘をついてはいけないと教わってきたのに、大人は「大丈夫」と大丈夫じゃないのに言うのだろうか。
    誰よりも悩み、寄り添い、生きている。自分自身と。
    だから知らない誰かに判断されることではないのだ。良い悪いは。

  • 訳あって椿が一緒に生活している 妹 鈴菜の子供 朔(さく) 小学校入学と同時に勉強が始まり、周りの子と我が子を比べてしまい戸惑う椿。子の為と大人の考えを押し付けているのでは、マイペースな朔に不安から苛立つ椿「自分のやっていることが本当にただしいのかわからない」私も悩んだ事があったなと思い出す。

    目には見えない愛情 朔には伝わっていると思う。

  • あらすじ
    椿は31歳。会社の経理。5歳年下の妹がひとりで産んだ子供を育てている。妹鈴菜は昔から自由奔放、思いついたらすぐに行動する。ある日子供を産むと言って、産んですぐに別の男性と一緒に沖縄に移住した。残された朔は幼稚園児。椿はアパートで朔を育てることなった。朔は何をやるにしても遅い。 宿題のプリントをやるのも1時間かかるし。集団行動も苦手。何かに気を取られるとそちらにばかり気が向く。椿には5年間、遠距離で付き合っている彼がいるが、いまいち結婚に踏み切れない。

     この物語は解決を求めていない物語だなと思った。最後鈴菜は戻ってきたけれども、朔と一緒に暮らし続けていくかは分からない。また、椿だって何年間も朔を母親代わりで育ててきたけれども、結局はママが一番で、そ報われているような感じはあまりない。無理に育てている様子もなかったが。恋人とだって結婚に現実的に向かおうかといえばそうではなかった 。淡々と日々は過ぎていくんだなと感じる作品。 その中で心がさざめいたり、波打ったりする場面はある。 例えば、椿の同級生静原の妻のように。それをちょっとずつ調整していきながら、日々を過ごしていくんだ、ということを伝える物語だと思った。
     後は、やはり細かな描写が寺地はるなは上手いなぁと思う。丁寧で想像しやすいし、 ふふっと笑ってしまうところを切り取るのが上手い。好きな場面は大家さん・マダム登場。 キャンキャン吠える犬を飼っていてそれがプードルなのにパグ美という名前をつけられているっていうところ。そのセンス好きです。

  • 寺地はるなさんの本を続けて読んでみました。
    世間の『普通』を気持ちよく否定してくれて、読んでいる私も肩の荷がおります。
    『普通』や『理想』になれない人もいる。それでも大丈夫って。
    あれこれ周りに言われても、それで悩んだとしても、芯の強さが感じられる主人公の椿さんはとても魅力的な人でした。

  • シングルマザーで出て行った妹、の子供を育てながら、仕事に恋愛に生きる、お姉ちゃん、椿、の話。

    子育てを、生き方を、今までの妻、子供と過ごしてきた時間を、客観的に感じさせてくれる本だった。



    椿はしっかりした価値観、地に足のついた女性であり、周りの人を冷静に分析している。
    産んだわけではない子供を小一までしっかり育て、周りからの後ろ指にも気にしない体で強く生きる。

    同僚、上司、恋人、昔の同級生。
    それぞれの関わりから、いくつかの問題は出るものの、冷静に自分を客観視しつつ乗り越えていく。

    それも、子育ての大変さを乗り越えながら。
    母ではないけどシングルマザー。正面から子育てに戦うことで積み重ねた強さは、周りの独身者、妻帯者、それぞれの主張も冷静に我儘と分析する。その姿は、痛快であり、ドキリとするものだった。

    自分は3人の子の父であるが、「わかるわかる」であったり、「そ、そうだよね、ごめん」であったり、の繰り返し。

    実の母ではない。自分の幸せを恋人と望むには、妹の子の存在はどうなのか。
    周りは暗に妹に戻せと言う。しかし自身の子育ての責任感は、椿にそれを良しとはしない。

    それでも子供にとっては母と一緒の方がいいのではないか、と言う思いに揺れる。
    そこに自分を優先させる感情はなく、ただ子供の幸せを願う心だけがある。
    なんと立派な人だろう。

    最後はただただ、せつなかった。

  • 『生きてほしい。』『【良い子】じゃなくたっていい。ただこの世界を生き延びてほしい。ただ、それだけ。』朔と椿。向き合って願って寄り添って悩んでぶつかって許して許されて手を取り合う。朔と椿はもう紛れもなく親と子だ。朔のママ、鈴菜の気持ちは少しは理解できても行動は私にはちょっと理解できなかったな。朔を思う椿の思い。ママを思う、朔の気持ち。何度も涙が流れた。とてもすてきな本に出会えた。

  • 出奔した妹が置いていった息子・朔を引き取り、世話をする椿。「世間」側の人たちから「常識」を振りかざされるたびに、立ち止まって考える彼女の姿は好もしい。常識側にいる人たちも決して安住している人ばかりではなく、疑問を呈すれば己を省みるだけの良心がある。気づかないだけなら気づけば変わるかもしれず、そこに希望がみえる。面倒くさいことは大切なことだ。

  • 読んでいて あるある が多いので
    引き込まれてどんどん読み進められる。
    寺地さんの作品を読んでいるときは
    自然とイメージが浮かんできて
    いつも私の頭の中で勝手に映像化してしまう。
    これも素敵な作品だった。
    やっぱりこの著者の表現、言い回しが
    私の好きな感じなんだよなぁと思った。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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