- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120054587
作品紹介・あらすじ
森林太郎は明治14年(1881)7月、満19歳で東大医学部を卒業。同年12月に陸軍に出仕するまで、千住で開業医をしていた父の診療を手伝っていた。卒業時の席次が8番と不本意なものだったため、文部省派遣留学生としてドイツに行く希望はかなわなかった。幼少時から抜群の秀才として周囲の期待を集め、それに応えつづけた林太郎にとって、わずか半年足らずとはいえ、例外的に足踏みの時代だったといえる。本作は、自分の将来について迷い煩悶しつつも、父とともに市井で庶民の診療に当たっていた林太郎が、さまざまな患者に接しながら経験を積み、人間的にも成長してゆく姿を虚実皮膜の間に描く連作小説集である。
感想・レビュー・書評
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9つの短編からなる、東大卒業から陸軍に勤務するまでの数ヶ月間、父親の診療所を手伝う19歳の鴎外の青春物語。
西洋医学と漢方を取り混ぜた医療の様子や市井の人たちの生活ぶりがイキイキ描かれていて、道場の花が一番読み応えがあった。国事があの人を必要とした、というさなの言葉に動乱の幕末を経た明治の時代を生きる人々の思いを感じた。
続きもぜひ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
林太郎のバイタリティ。お医者さんでも、大成したのかも知れない。
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父親の手伝いをしながらドイツの留学をどうにか行けないか模索。体調不良で上位に入れず留学枠から外れたから父親の仕事ぶりを間近でみて患者に対する態度や接し方を学んだと思うし頭がいいのにそう感じさせない、高飛車ではないのが好感がもてる。ドイツ留学を念頭において周りの意見に振り回される事なく自分で解決しようとしていて意外な一面も知れた。森鴎外は眼中に全くなかったけど作品を読んでみようと思う
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森林太郎(鷗外)が、不本意な成績で留学がかなわず、父静雄の診療所で患者と接し、成長していく物語。
この本を読んでまず思ったことは、登場人物の言葉遣いがきれいなこと、落ち着いていること。父親は市井の人を診察するときも、患者の立場にたっていること。今と比べて技術ではかなわないかもしれないが、人をきちんとみる心の余裕がある。
林太郎は、父の元で働く期間があり医者としての心構えを学べて、とてもよかったのではと思った。この先、どう繋がっていくのか楽しみだ。 -
鴎外の「カズイスチカ」が好きな人は本書をオススメしたい。
大学を卒業し、留学のツテが決まらず悩み奔走し、一方で町医者である父の診療所を手伝っていた頃の鴎外が生き生きと描かれています。当時の20才の青年の青春譚としても面白い。
大塚製薬の医家向け情報誌でこんな面白いもの連載してるんですね。連載はまだ続いているみたいで二冊目がそのうち出るんでしょうかね? 楽しみです。 -
若き日の森鷗外の物語。文豪になる前の、将来に悩んで燻っている鷗外の姿が新鮮だった。続きを読みたい。
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成績が思ったより振るわず、言い訳を言っているところが人間っぽい。
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森鴎外が東京大学医学部を卒業し、留学するまでの数ヶ月、ただし在学中から父親の医院を手伝っていたのでもう少し長いかもしれないが。
森鴎外が鴎外となっていない進路を決めかねている林太郎としての青春もの。
ここに描かれている森鴎外の父親は医療に誠実で、常に同じスタンスで患者に向き合うそんな尊敬できる男としての目標になる人物。
母親は跡取り娘で森家に父親は婿入り。
大きな農家の息子であった。
そして、息子たちの可能性を伸ばしてやろうと家族で津和野から家を売り上京したのであった。
そんな時期の色々なエピソードが描かれている。 -
「大塚製薬」の関連誌に連載というのも納得。
若き日の森鷗外が、父の診療所を手伝い、町医者をしていた頃を舞台にした
短編集。
後に歌舞伎研究者となる三木竹二、女性文学者の小金井貴美子や
明治の著名人などが、続々登場。
西周とのすれ違いなども、納得の描きぶり。
千葉さなが登場のエピソードに一番感激!
日常にひそむ、ささやかなミステリーを若先生が解決していくのだが、
父・静男の静かな姿勢が、小説全体に、穏やかな安らかさを与えてくれている。
一方・・・
いつも裁縫中の穏やかな母・峰子が
いずれ嫁姑問題の渦中の人となるのだろうか、と
不思議な気分で読んでいたw
今から次の巻が楽しみ♫ -
父とともに市井で庶民の診療に当たっていた青年・森林太郎が、さまざまな患者に接しながら人間的にも成長してゆく姿を描く連作小説集