イオカステの揺籃 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120055683

感想・レビュー・書評

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  • 出てくる親は全員「毒親」。

    青川英樹は若手建築家で将来有望と目される。
    その妻、美沙は妊娠が判ったばかりだ。
    英樹の母、恭子はバラの奴隷と自称するように、並々ならぬ愛をバラに注ぐ。
    美しくて、棘のある……。

    この三人を中心に物語は進む。
    段々と恭子の異常さがクローズアップされる。
    しかし、おかしいのは彼女だけではない。
    英樹の父、誠一は不倫に明け暮れ、英樹の妹の彼氏(唯一まとも)、羽田はネグレクトにあい、
    恭子の両親も、誠一の両親も、皆が皆、毒を持っている。
    そして皆が「予言」をする。
    この「予言」は何も物語だけではなく、現実世界でも多くの人が行い、あるいはされているはずだ。
    こうして物語にすると、不気味で、不快なのになぜ現実世界だとその印象が薄れてしまうのだろう。

    この「予言」が本作のタイトルとなっている「イオカステ」につながる。
    個人的な感想としては、イオカステの物語の悲劇は予言をされたこと、それが実現したことなのだが、我が子と交わってしまった、つまり禁忌を犯したというところにあるのではないかと思う。
    だから、ちょっと本作の内容と結び付けるには違和感がある。

    親からの抑圧、期待は大きな力を持つ。
    私も、この力を使ってはいまいか。
    私も毒親になってはいないか、振り返るのが怖くなった。

  • Amazonの紹介より
    バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。「バラ夫人」と呼ばれる美しい母。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。母に反発して自由に生きる妹。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、母が壊れはじめた……。



    家族とは?育児とは何か?深く深く考えさせられました。
    一見幸せそうな家族でしたが、読み進めるたびに本性が見えてくる「バラ夫人」の心の闇が、とても深かったです。

    お節介と優しさが、いかに紙一重なのか。自分も気をつけなければならないなと思いました。
    冷酷と優しさの間で激しく揺れ動く心理描写が、何とも胸を締め付けられ、いつの間にか涙が込み上げてきました。

    家族それぞれの視点で、物語は進行していくのですが、それぞれが思う相手に対する恨みが、まぁ根深く、その辺りの心理描写がうまく表現されている印象でした。
    「バラ夫人」がいかにして形成されていったのか?過去を振り返りながら、実態を知ることができるのですが、もう苦しいの連続でした。

    今では考えられない思想の盛り沢山であり、同じ人間とは思えない発想に唖然とするばかりでした。
    どこから歯車が狂ってしまったのか?
    一つが狂い出すと、もう直ることができないかのような展開に「あの時、あーしとけば・・・」と後悔の連続でした。

    どうやったら家族が再生していくのか?物語では、悲劇の連続からの再生になります。それがとてもやるせない気持ちになりました。
    幸せからの再生を期待していたのですが、なかなかハードな展開に言葉を失ってしまいました。

    小説のような形で再生はしたくないですが、自分の家族だったらどんなことをすれば良いのか?
    答えを出しにくいですが、お互いの話し合いに尽きると思いました。
    どんな家族にせよ、後悔のないよう、「良い」家族であり続けていきたいです。

  • こんなに繰り返し言われ続けたら、影響されるわ。呪いやな。影響されないように、と思うほどズブズブとはまっていきそう。あぁ、息が詰まる。

  • 老眼のせいか、遠田さんの本だからか、ずっと折檻って読んでた。てへんしか合ってないのに。恭子が同年代だって思いながら読んだ。死んじゃうのは、なし。

  • 遠田作品はとにかく主人公が不幸を背負いすぎてるのがウリ?なんだけど、本作はそうでもないかなーっと読み始めたら甘かった。。
    最初は美沙のお腹の子供に執着し過ぎる恭子、不倫相手に捨てられてストーカーする誠一、夫婦でヤバイしこわーって思ってたけど、もっともっとヤバかったのは恭子の母親だった。。
    恭子の母親の言動・行動がもう、、異常すぎて、、読んでて気持ち悪くてまじで吐きそうだった。。
    そりゃあんな母親とずっと一緒にいたらおかしくなるよな。。
    恭子の母親はなんであんな人間になってしまったんだろう、恭子の父親もなんであんな人と結婚したんだろう、そこはもう少し掘り下げて欲しかったな。
    最後まで読んで、美沙も子供をかわいいと思えないし、玲子も呪いにかかりそうだし、救いが無いから読後感も悪いしモヤモヤしてとても疲れた。。
    私の中では遠田潤子がイヤミスの女王だわ。

  • ドロドロとした世界観だ。ホラーでもミステリでもなく、ただどこか壊れた人々の日常を描いているだけなのにゾッとしたし、ズブズブと泥濘の中に沈み込んでいくのを感じた。今でこそ毒親や虐待がクローズアップされているが、それ以前はどうだったのか。不幸は連鎖する。それこそ呪いのように。読後感は爽やかの対極に位置しているが、文章などが上手く癖になりそうだ。

  • 狂気に満ちた「バラ夫人」青川恭子。恭子の痛ましい生い立ちが災いの火種となり、孫に執着心を燃やし始める。 彼女の言動に同情の余地無しだが、悲しい結末だった。羽田完の優しさに一息つけた。

  • めっちゃ怖。
    ミステリーっていうかもはやホラー。
    これから妊娠したり出産する人は
    読まない方がいいと思う。
    母娘って色々あると思う。
    エディプスコンプレックスとか。
    でもいいこともあると思う。
    ちょっと偏ってるかも

  • 美沙さん、玲子さんが無理。
    恭子さんの子ども時代が気の毒過ぎた…

  • こんな姑は嫌だ。こんな舅は嫌だ。こんなマザコン夫は嫌だ。そして姑の母親は悪魔だ!!かつて『ごきげんよう』の後に放送していた昼ドラも真っ青の愛憎劇。青川家の長男の嫁が初孫を妊娠した。美人で上品な姑は性別が男の子と知った瞬間豹変、孫への執着心から異常行動を繰り返すようになる。ドロドロウエルカムな私なので大変面白く読んだがちょっとチープな気が...。「2人目を妊娠したということは2回やったんか」のシーンでは不本意ながら笑ろてもうた。最後良い話みたいになってるのが普通に気持ち悪い。薔薇の香りで酔いそうな物語。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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