食われる国 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120056116

作品紹介・あらすじ

この国にはもう、抵抗する力がない。
人種差別、AI裁判、民間刑務所、洗脳教育――
俺たちは、求められるようにしか生きられないのか。

2050年。日本の国力は低下し、海外資本が大量に流入。人口も減少し、かつて栄えた都市も今や廃墟と化していた。刑事である谷悠斗は池袋で発生した外国人拉致事件を追ううち、中国資本「未来集団」が経営するカジノに潜入することになる。これが地獄の始まりだった。
不当逮捕された悠斗は民間刑務所に収監される。洗脳とも言える教育の果てに「未来集団」の一員として、日本国土の買収を繰り返すことになる――。
悠斗に、この国に希望はあるのか? 荒廃が待つ未来の中に微かな光を示す傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • あまり気持ちの良い話ではなかった…

  • 30年後には本当にこんな未来が待っているような気がして、ただただ滅入ってしまう。

    リアリティに溢れ、筆力もあり、読み応えは充分なのに、☆を4つ・5つ付ける気にならないのは、主人公と同じ精一杯の悪あがきであり、結局は無駄な抵抗に過ぎないのかもしれない。

  • 2050年の日本。中国なしには成り立たなくなっている。
    大手の寿司チェーンもコンビニも、病院や介護施設にさえ中国資本が入り込んでいる。私立大学の多くは学生の減少で経営難に陥り、中国人留学生からの学費を頼りに運営されている。そこでは中国人講師が英語を教え、西欧の歴史を講義している。日本人はその下で働き、学ぶのが当たり前になっている。人口が減ったのだからどうしようもない。実際、中国人は教育水準が高く有能で、よく働く。日本が上位の先進国立ったのは半世紀も前のことことだ。
    本書の時代背景である。「今」-「現在」ではないことで、ふと安心感を覚える。それほどまでに、本書の内容はよく考えてみれば起こりうる恐ろしい現実をめぐる断面を提示するものである。
    物語は、刑事である「谷悠斗」は池袋で発生した外国人拉致事件を追ううち、中国資本「未来集団」が経営するカジノに潜入することになる。そこでの出来事で、谷は特別公務員暴行陵虐罪で起訴され、AIの裁判官に、懲役2年に処せられ、民間刑務所に収監される。
    中国によって巧妙に仕組まれた一種の拉致事件、その被害者が「谷悠斗」である。AIの裁判官が近未来の様相を見せるが、その設計に携わっているのが中国テック企業となれば、どうしようもなくなる。
    日本で外国政府による拉致事件は、主権国家ではあり得ないことではあるが、法律で動く警察ではどうしようもないという。議員に中国系が増え、立法府の国会があのざまではどうしようもない。人手不足が高じて、そこに中国人が入り込んだ結果である。
    ウィグル人への断種手術も出てくる。中国は本気でウィグル人を根絶しようとしている、という。
    以上が前半である。後半は、谷は、洗脳とも言える教育の果てに、「未来集団」の一員として日本国土の買収を繰り返す。未来集団は国土侵略をビジネスとして遂行しようとしている。イスラエルがパレスチナの土地を少しずつ買い増した後、建国を宣言。アメリカ大陸も、イギリスやフランスが侵略した後、合衆国政府が自前の法律を駆使してインディアンから土地を手に入れた。だから、未来集団の行為も、歴史の必然であり、発展であると言い切る。
    谷は、その仕事にのめり込むが、東日本大震災の津波被害者の墓地の購入などで、立ち止まることがある。谷なりの日本人としての正義感が見られるが、谷のもくろみが成功することはない。中国の組織だった動きに日本人の正義感が勝てるわけがないという現実を見せつける。
    絶望的な状況が、これでもか、これでもかと続くが、最終的に、我らが「谷悠斗」は、この国に希望はあるのか、と問いつつ、荒廃が待つ未来の中に微かな光を見る。

  • 2050年。国力が低下し、希望を失った日本で生きる刑事の堕落と再生。荒廃が待つ未来の中に微かな光を示す傑作長編。

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著者プロフィール

萩耿介
1962年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒。2008年『松林図屏風』で第2回日経小説大賞受賞。著書に『炎の帝』『イモータル』(中央公論新社刊)の他、『覚悟の眼』『極悪 五右衛門伝』などがある。

「2022年 『食われる国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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