葬式同窓会 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120056970

感想・レビュー・書評

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  • 乾ルカさんは、思春期の子供たちの心理描写の描き方が本当に上手い。
    読んでいると、“青春って素晴らしい!”と簡単には言えない、あの時代特有のドロドロとした世界に嫌でも引き摺り込まれてしまう。

    特に北別府華のような、保身のために自分より下だと思う人間を瞬時に見極め孤立させていく…
    いるよね、こういう女子!!
    幸い、わたしの学校生活の中ではこういう女子はいなかったけれど、でも女子あるあるなんだよな、と。

    『とっても仲良しの3年6組』
    でも蓋を開けてみれば……

    あの日の水野先生は本当にただのやつ当たりだったのか。
    娘の前ではずっとこのクラスを褒めていたらしいが、きっと船守に対しての後ろめたさがあるから、必要以上に褒めていたんじゃないかと感じる。

    最後、優菜は勇気を出せて良かった。
    “人のことを悪く言ってはいけません”なんて言葉があるけれど、合わない人、嫌な人の事は嫌ってもいいと思う。
    でも華みたいなのは論外。

    一木と船守のやりとりもよかった。
    この2人はきっとこれから友情を育むんだろうな。
    でも、あの2回目の同窓会で集まったメンバーはきっともう二度と会う事はないだろうな。

    学生時代って、なんでちょっとヒリヒリするんだろう。
    楽しかったけど、戻りたくはないような、
    みんなと仲良しだったけど、またあの中に放り込まれたら少し緊張するような、不思議な世界だった。

    船守の気持ちの変化で締めくくられた内容が、冒頭と繋がっていたのには感動した。
    そうか、勇気を出したんだね。
    たしかに色んなことの“葬式”だったな。

  • 「色々あったかもしれないけど今となってはいい思い出だよね」
    いじめ加害者が放ったこの一言には怒りを通り越し呆れ果てた。

    高校時代の担任・水野が亡くなり葬儀に参列した元クラスメート達。
    その後、斎場近くの居酒屋へ流れ学生時代の思い出を語り始める。

    温厚だった水野が起こした衝撃的な行動、それが原因で不登校になった男子生徒。
    それだけでも不穏だが、過去のいじめ、承認欲求と物語は刺々しさを増していく。

    自己顕示欲の塊のような望月と華の動画配信は最悪。
    他人を貶める事で得られる成功など意味がない。

    道徳的想像力の大切さを痛感する。

  • なんで自分がこの小説を読んでいるんだろうと思うくらい、読んでいて嫌な気持ちになる本だった。ほぼほぼ最後まで。登場人物の誰もが、どこか独善的に描かれていて、容易に感情移入を許さない。それぞれがみな自分の嫌なところを自覚しているか、あるいは逆にそれを自分で押し隠そうとして、かえって自分の薄っぺらさを周りにさらしているかどちらか。
    だけれど、本当に最後の最後になって、主要登場人物たちがもう一度一緒に会い、相手に対する嫌悪の気持ちをさらけ出し、とにもかくにも自分の気持ちに一区切りをつける段になって、なんとか折り合いをつけられる。そういう小説だった。

  • 元クラス担任の葬式を機会に7年振り集まった同級生たち。
    話題になったのは
    ある日、担任が授業中に突然激怒一人の生徒を追い詰め、
    追い詰められた生徒はその後登校拒否になるが
    担任の豹変した態度がインパクトが大きく
    思い出されるのは担任の事ばかりで
    その後登校拒否になった生徒は忘れられた存在に…。
    この時の集まりがきっかけで
    再会したメンバーの過去と
    現在の状況が描かれる群像劇。

    面白かったし良かった。(*ᵕᴗᵕ)⁾⁾ゥンゥン

    高校の思い出は楽しいだけじゃない、
    色々あって今があるし
    生き直しは出来ると信じてる。

    あと華の性格の悪さが目立った(笑)

  • 高校生って、色々あるよなぁと
    なんだか懐かしくなった

    水野先生はホントに離婚が原因で
    船守くんに、あんなことしたわけ?
    そこ、すごいモヤモヤしたわ
    いくらやつあたりしたかったとしても
    普段そんなキャラじゃない人が
    そこまで激変するかなぁ?

    後悔されても、死なれても
    そっから船守くんの人生が
    変わっていったわけやん?
    どうにも水野先生が私は許せんかったわ

    華みたいな女子おるよなぁ
    望月みたいな男子おるよなぁ
    両方、私は好きになれんタイプやったなぁ
    熱すぎて、逆に馬鹿にしてしまうかも…
    自分大好き、自分が一番
    自意識過剰な人たち、ヒクわぁ

    ラストが良かった
    逆光で見えないとこや
    ピザの美味しいカフェとか
    卒業式でてない共通点や
    山歩き一緒に行くんやろなぁとか
    なんだか良かった

    「葬式」って言葉はちょっと違う気はしたけど…

  • 結構好きな感じの終わり方だったんですけど、タイトルこれじゃないほうが、もっと手に取ってもらえそうな気がするのは、私だけ?

    とは言っても作者の方も、編集の方もOKで出版されてる訳ですから、単なる読者の感想ですけど笑

    白麗高校3部作らしいので、他のも読んでみたいです(*^^*)

  • 葬式同窓会
    乾ルカ

    ∞----------------------∞

    恩師の葬儀で会った元クラスメイト達。そのまま同窓会をするように飲みに行き、それをきっかけに当時のことを思い出す。

    ミラノオリンピック?って思ったら令和9年の未来設定だった。事件?が起きた高校3年生が実に今現在。

    彩海は検査で病気と言える病状も無いのに、病院側は怪しいと言って彩海の心を落ち込ませて病気にさせてるとしか思えなくて辛かった。この話だけちょっと要らなかった気がする。「生きろ」のためかな。

    華と望月のライブ配信は酷すぎた。関係者が結構聴いててそれぞれに色んなこと感じてたけど、この2人は高校生時代から自分のことしか考えず全然成長していなかった。
    大人って何?っていうことが、この2人と他の同級生を比べて少し分かってくる。

    好きなのは山中での2人のシーン。この後もこの2人の付き合いは続いていって欲しい。

    2023/12/09 読了(図書館)

  • 山に登っている2人、水野の葬式で再会した白麗高校3年6組の同級生がその後飲み会に行ったメンバーの2つの構成。

    本文にいい意味で振り回され、胸を抉られながら読みました。
    青春群像劇というと、胸糞悪い登場人物が変わっていくものが多いけれど、根っこはそのままなのか…と生々しく思いました。
    苦しく思いながら読んでいたので、最後の船守と一木に少し光が見えました。

    これが3部作とコメントみて初めて知ったので読まねば。

  • 「オレ死ね」と書かれた横に同窓生3人が「生きろ」と書いた。船守くんは、奇跡的にそれを見ることができたんだな、きっと。読了した人しかわからない感想ですみません。

  • 白麗高校を卒業した8年後、当時の担任教師の訃報を知って集まった同級生たちはかつての事件を思い出す。突然豹変した担任と、それがきっかけで不登校になったクラスメイト。あの時何があったのか、そして自分たちはどうするべきだったのか。
    正しい意味ではこれぞ「青春小説!」かもしれません。苦いし痛いし、後悔だらけ。傷つけられ傷ついて、だけれどそれを若気の至りだったと笑い飛ばして終わりにはできなくて、終わりにしたいのにこだわってしまう。青春の大半はそんなもので、甘くて爽やかなのは一部の思い出を大事に美化したものでしかないのかも。だからこそ彼らの物語には、楽しくないのにぐっと引き込まれました。
    キャラクターとしては華が印象的だけれど、嫌でした。敵に回したくないし、友達にもしたくないし。配信のシーンなんて最悪。だけれど彼女の立場になって見れば可哀想な面もあるのかも。プライドにすがって生きるのってしんどいよなあ……と思えば、あまり嫌う気にもなれませんでした。これがきっかけで彼女も少しは変われると良いのですが。
    痛々しいばかりの物語に見えましたが、ラストは存外にすっきりとして救われます。不穏に思えたこのタイトルにも納得。

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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