二人目の私が夜歩く (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 865
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120057786

感想・レビュー・書評

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  • プロローグ
    第一部 昼のはなし
    第二部 夜のはなし
    エピローグ

    から成っています。
    第一部の最後がネタバレしていますので、これから読まれる方はお気をつけください。


    「第一部 昼のはなし」
    高校三年生、大学受験を控えた鈴木茜は、厚浦咲子という30歳の交通事故で身体が不自由でのどに呼吸器をつけて寝たきりの女性の「おはなしボランティア」を始めます。
    茜もまた両親を交通事故で失い祖母と暮らしていました。

    茜は夜、よく眠れないという体調不良がありましたが、「おはなしボランティア」を始めてから祖母に「夜、歩いている」と言われ「夢遊病ではないか」と疑われます。

    茜はもしかしたら夜歩いているのは咲子ではないかと思い当たります。
    茜は夜歩いている自分に手紙を書き「夜歩いているのは咲子さんではないか」と尋ねます。
    そして返ってきた返事は果たして咲子のようでした。
    茜は咲子に愛着を感じていたのでそれを嬉しく感じ、「自分の身体を使ってほしい」といいます。

    咲子は夜の時間に事故に遭う直前の高校時代の恋人と親友のことを調べようとしますがうまくいかず、茜がSNSなどを使って調べてしまいます。

    そして茜は受験勉強のために忙しく、咲子に身体は貸すけれど、「おはなしボランティア」をやめました。

    受験が終わった茜は、咲子が呼吸器がはずれる事故で、去年の夏に亡くなっていたことを知りショックを受けます。



    そして「第二部 夜のはなし」では、咲子の側から咲子の死の謎や、なぜ咲子が高校時代のことを調べようとしていたのかがわかります。
    そして、咲子と茜の本当の関係もわかります。



    解離性同一障害という病気を使ったとてもよくできたミステリーだと思いました。

    「おかしくなりそうだよ。何もできないって。何を頑張っても、何にもならないって」
    咲子のこの言葉は響きました。

  • 二重人格とかそういう特殊な設定は割と好きなほうなので、気になって本作を手に取りました。多くの方のレビューにあったように想像していた展開と違って、しっかりミステリーとして着地してるのがとても意外性がありました。

    物語のストーリーとしては、主人公である茜が、ボランティアである家に訪れるところから始まります。そのお家には、事故で麻痺が残り寝たきりの生活を送る咲子がおり、初対面であるはずなのに、どこか心通じる感覚があった。そんなある日、咲子は知る由もない、茜の服装や部屋事情を知っており、咲子が自分に乗り移ってるのではないかと訝しむようになり…というストーリー。

    結論からいうと、あらかじめ本作がミステリーであると知っていても、このオチはなかなか読めなかったのかなと思いました。茜と咲子が共に秘密を持ってるだけでなく、二重人格という少し特殊な設定でもあるので、どこに謎があるのか分かりにくくなってるように感じました。それでも、オチとしては芯が通ってて、こことここは繋がってるのだと納得感がありました。

    個人的には、咲子が障害を持った人への同情的な視線やアンコンシャスバイアスについて述べるシーンが自分にも思い当たる節があったので、1番印象的でした。

  • 作者で間違いない、と思って買いました。最初は、人工呼吸器についての本人の推定意思の困難さなど、私の仕事に関わることが出てきたため意識がそこにむかいました。しかし、やはり辻堂先生の作品だけあって何重にも何重にも重ねられた伏線などを読み進めることになりました。もう、生活や仕事の中で、側面ばかり考えさせられてしまいます。

  • 読み聞かせボランティアをするうちに、対象の女性に感情移入していく主人公の茜、やがて自分の体が夜、誰かに支配されているような感じを覚えるようになる。
    「王様のブランチ」では、ドラマ仕立てで紹介されていて、続きがきになっていたが、、、。
    前半と後半で話が180度変わる構成は、面白いが、動機にどんでん返しが多すぎてついていけなくなってしまった。意外に手強い物語だった。

  • 予想外のストーリーにビックリ!
    でも、輝く昼の世界が終わると、夜がくる。
    昼間見ていた景色にはもちろん闇がある。
    やっぱり人は、見たいものを見ようとするんだなと気付かされる。
    彼女が夜歩く理由、その目的がたったひとつのことに集約されていく。

    感想を書くべき部分はネタバレになってしまうので書けない…

    いろんな顔を知った今、
    押し付けであったとしても自分の描いた物語を信じるのも悪くないのかなと思った。
    誰もがそれぞれ、自分の物語を背負って生きているのだから。

  • 第一部 昼のはなしの所で、どこまでを読者に匂わせおくか。
    その匙加減が絶妙な一冊だった。

    どこを話すにしてもネタバレになってしまうので、以下、まだ未読の方は注意。






    昼のはなしで、咲子さんが茜と入れ替わっているとミスリードさせておいて、実はそうではないという展開はなかなか面白い。

    けれど、夜のはなしが進むにつれ、咲子と茜の、誠実さがしんどくなってくる。
    それこそ皆が、サキだけに重荷を背負わせて、軽やかに昼の世界を生きていくかのような感覚を覚えた。

    もう少し、エンディング後の話を読みながら、茜が事実を自分で整理していくような。
    そんな姿を見たかったな。

  • 想像していたストーリーと違って良い意味で予想を裏切られました
    障害者の全てが心優しい人間じゃないんだよなぁて改めて感じた一冊です
    ボランティアをしている心の優しい茜の事を裏で悪口言ってる障害者の咲子にはムカついてしまった
    でもみんな人間なんだよなぁ

  • Amazonの紹介より
    この物語には、二人の「私」と、二つの「真実」がある。
    昼と夜で、一つの身体を共有する茜と咲子。
    しかし「昼」が終わりを告げたとき、予想だにしなかった「夜」の真相が明かされる――。



    作品ができあがるたびに様々な伏線回収を提供してくれる辻堂さん。今回は記憶喪失や魂の入れ替わりといったファンタジーの要素がある作品なのかなと前半は思ったのですが、次第にこれは現実的かつ色んなもの全てを巻き込んだヒューマンミステリーになっていて楽しめました。今回ももちろん伏線回収が面白かったです。

    交通事故によって両親を失い、その時の記憶を失った少女とボランティア先で出会った女性。この女性は横断歩道を渡る途中で、車に追突されて、体が動けなくなってしまいました。
    この交流をきっかけに、女性の代わりになぜ入院したとき、お見舞いに来なかったのか?その人達を訪ねていきます。

    ただ、この少女には秘密があります。夜何も記憶がなく、夜を徘徊しているのです。夢遊病なのか?調べていくうちに女性の人格が少女に乗り移っているということで、少女が眠っている代わりに、体が動かない女性が夜楽しむといった展開になっています。

    ここまで見ると、お互い交通事故をきっかけに失った者同士、少女が女性の心を少しでも助けようと、奔走する姿が微笑ましく思えました。
    しかし、冒頭での女性の行く末がなんとなくこうなんじゃないかと頭の中でよぎるので、気になるばかりでした。

    この作品、前半と後半に分かれていて、どちらも主人公は少女なのですが、前半は昼間の「私」視点、後半は夜の「私」視点となっています。
    前半では、昼間の模様だけなので、その都度夜に何があったのかわからないまま、朝を迎えます。なんとなく女性の人格が夜を楽しんでいるのかと思ったのですが、そこは後半の夜のパートで明らかになります。

    昼から夜のパートに切り替えの際、衝撃の事実に明らかになるのですが、その辺りは冒頭の部分とリンクします。なぜそのようになったのか?また過去に戻って、今度は夜のパートに切り替わります。

    最初の部分から、さらなる驚きが待ち受けていきます。昼のパートが明るく奔走していた分、夜のパートは驚きだけでなく切なさがふんだんにちりばめられていました。
    辻堂さんお得意の伏線回収を楽しむことができます。
    お互いの交通事故や少女の人格、女性の秘密といったありとあらゆるものが線で繋がっていくので、予想を超えていました。本当に本の帯にあるとおり、期待は裏切らないなと思いました。

    全てがわかった瞬間は、やるせない気持ちになりました。一つでも欠けていたらどうなっていたんだろうと思うと、2人の人生にかける言葉もないなと思ってしまいました。

    ミステリーとしては面白かったですが、現実的に考えると、なんとも切ない作品だったなと思いました。

  • 「第一部 昼のはなし」を読んで「第二部 夜のはなし」 に読み進んだ時の空気が変わるというのか、世界がひっくり返される感じ。ぞわっとしました。
    私も何も知らない夢みる「茜ちゃん」だったのだと呆然としました。
    「夜って、いいよね」〜「人の本質が、見える時間。つい、隠すのを忘れちゃう。〜」という咲子の言葉がありましたが、人は知りたい欲求と知ってしまった後悔(話したい欲求と話してしまった後悔)とをうまく折り合いをつけながら人と付き合っていくしかないのだと思います。
    ただ、そこにしか人の成長はないのだと思える、悲しくも昼の陽の光を感じるラストでした。

    #プルーフ

  • そうなるのかぁ〜!と唸らされました。
    昼より夜の方が確かに本心を語れたり、もっと深いものが浮き彫りになる気がする…

    それにしても、綺麗で深い作品だなぁ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻堂ゆめの作品

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